【保存版カリキュラム】ECノウハウ
2022.01.05
ECサイトの集客方法と新規顧客獲得における重要指標
ECビジネスを展開する限り、常に集客を図り、新規顧客を獲得し続ける必要がある。もちろん、一度購入したユーザーがリピート購入をしてくれることは期待できるが、そもそもリピート購入しないユーザーが一定の割合でいること、長期に渡ってリピート購入し続けてくれるユーザーは時の経過とともに減少していくことを考えると常に新規訪問ユーザーを集め続ける必要があるのである。ECサイトでは全訪問ユーザーに対して新規訪問ユーザーの割合を常に60%~70%以上に保つ必要があると言われている。
また、自社サイト集客で有効な方法は、単に認知度を広げるためのテレビや雑誌広告などの一過性の認知度アップを狙う広告手法ではなく、様々な指標を元に緻密な広告調整を継続的に実施して費用対効果の最大化を進めていく「運用型広告」がメインの集客方法になる。
以下に、具体的な集客方法と新規顧客獲得における重要指標について解説する。
ECサイト集客方法
ECサイトの集客方法は下記の3つに分けることができる。
1.ネット広告
2.SEOによる自然流入
3.インスタグラマーを活用したインフルエンサーマーケティング
1.ネット広告
ネット広告には下記の広告メニューがある。
・リスティング広告(検索連動型広告)
・Googleショッピング広告(検索連動型広告)
・ディスプレイ広告(コンテンツ連動型広告)
・SNS広告
・リマーケティング広告(リターゲティング広告)
・アフィリエイト広告
リスティング広告(検索連動型広告)
GoogleやYahoo!の検索エンジンの広告枠にテキスト(文字情報)の広告を出稿する広告メニューがリスティング広告(検索連動型広告)である。ユーザーが検索したキーワードと連動して自社ECサイトの広告テキストが検索結果ページの広告枠に表示される。
リスティング広告の特徴1
費用対効果が分かりやすく、「どの広告に、いくら広告費を使って、何件の注文を獲得したのか」を把握できる。
リスティング広告の特徴2
広告配途中の数値データを見ながら入札単価や広告文、予算などを調整できる「運用型広告」である。
リスティング広告の特徴3
リスティング広告の弱点になるが、競合サイトと広告枠を争うという点も特徴である。広告費はオークション制となるため、競合によってクリック単価が大きく変わってくる。競合がいないキーワードであれば1クリック1円から広告を出稿できるが、競合が多ければ1クリック数千円かかる場合もある。
リスティング広告の特徴4
購入モチベーションが高い検索ユーザーをプル型で自社ECサイトに誘引することができるため、ネット広告の中では費用対効果が最も高い広告メニューである。しかし、アパレルやアクセサリーなどのファッションアイテムは、商品やブランド世界観の魅力をテキストで訴求することが難しいため、認知度が高いブランドや、認知度が高いブランドを複数取り扱っているECサイト、商品数が多く、カテゴリーごとに多数の商品を展示するECサイトに有効な広告メニューである。
コスメブランドの場合はアパレルとは異なり、成分や効能、香り、商品カテゴリ(例. 「化粧水」や「ファンデーション」)などの特徴をテキストで訴求できるため、リスティング広告での集客に向いていると言える。
このリスティング広告の運用で重要になるポイントが下記になる。
・キーワード設計・調整
・入札調整
・広告文の調整
広告費用はクリックに応じたクリック課金制である。
リスティング広告は競合サイトとの入札(オークション)でクリック単価が決定され、クリック単価は広告文やキーワードとランディングページの関連性によって決まる品質スコアによっても影響される。
リスティング広告をうまく運用するには、ある程度知識と経験がある人が毎日時間を割かないとなかなかうまく最適化して費用対効果を高めることができない。そのため、そのようなスタッフが社内にいない場合はリスティング広告運用の専門会社に運用を委託するのも一つの手である。ただし、専門会社に委託する場合でも、委託先をコントロールし、運用クオリティーを高く維持するために、最低限の知識を社内で持っておく必要がある。
Googleショッピング広告(検索連動型広告)
Googleの検索エンジンと連動した広告メニューで、ユーザーが検索したキーワードに応じて、自社ECサイトで販売している商品の画像を検索結果の広告枠に表示させることができる広告メニューである。
商品のデザインをダイレクトに訴求できるため、アパレルやアクセサリー、シューズなどのファッションアイテムに向いている広告メニューである。
ただし、Google Merchant Centerに商品のデータを新商品が出る度にアップロードする必要があったり、在庫切れになりそうな商品を広告から削除するなどの運用負荷がかかるため、運用リソースを確保した上で出稿を開始する必要がある。
広告費用はクリックに応じたクリック課金制である。
ディスプレイ広告(コンテンツ連動型広告)
GoogleやYahoo!が広告ネットワーク化しているウェブサイトにバナーや動画の広告を表示させる広告メニューである。ECサイトや商品と相性の良いウェブサイトの広告枠に広告を表示させることができ、リーチさせるユーザーの属性を絞り込んだターゲティングの設定も可能なため、効率的にユーザーにリーチすることができる。
ユーザーに対してビジュアル(画像や動画)で訴求できるため、アパレルやアクセサリーといったファッションアイテムのECサイトにとっては特に有効である。ただし、リスティング広告がユーザーがキーワード検索をした結果に広告を表示させる仕組み(=ユーザーが主体的に情報を探している)に対して、ディスプレイ広告は、広告とは直接的に関係がないウェブサイトをユーザーが閲覧している時に、そのユーザーが気になってクリックする可能性がある画像や動画を表示させる、という興味を誘発させる広告手法である。そのため、ディスプレイ広告でのユーザーの購入モチベーションは高くはなく、ユーザーとの将来的なコミュニケーションによって購入モチベーションが高くなる可能性のあるユーザーにリーチする広告手法ということになる。そのため、クリック時点でのコンバージョン率はキーワード連動広告と比べる低くなる傾向がある。そのため、リマーケティング広告(サイトにアクセスしたユーザーを追跡して広告を再表示させる広告手法)と組み合わせることで効果を高めることができる。
広告費用はクリックに応じたクリック課金制である。
SNS広告
インスタグラムやフェイスブックのタイムライン上に一般の投稿に紛れて表示させる広告である。属性や趣味趣向にあったユーザーに絞ってターゲティング配信できる。ディスプレイ広告同様、ユーザーに対してビジュアルで訴求できるため、アパレルやアクセサリーといったファッションアイテムには有効な広告メニューである。
また、複数の画像をカルーセルで表示させたり、縦長で面積の大きいストーリーズ上に動画で広告出稿できるため、ブランドの商品や世界観を魅力的に表現・訴求できるメリットもある。リマーケティング広告(サイトにアクセスしたユーザーを追跡して広告を再表示させる広告手法)や後述するインフルエンサーマーケティングと併用すると効果的である。
広告費用はクリックに応じたクリック課金制である。
リマーケティング広告(リターゲティング広告)
サイトにアクセスしたユーザーを追跡して広告を再表示させる広告手法である。商品に興味があり、購買意欲がある見込度の高いユーザーへ再アプローチすることで、購入につなげる効果がある。
アフィリエイト広告
上述の広告メニューがクリックに応じたクリック課金制であるのに対し、アフィリエイト広告は購入や会員登録が発生した時点で課金される成果報酬型の広告メニューである。広告の表示形式はバナー画像やテキスト、動画でウェブサイトの広告枠に表示される。広告枠を持つ多数のウェブサイトを取りまとめている仲介業者(バリューコマースやA8netなど)が存在しいて、この仲介業者が提供する管理画面でバナーやテキストなどの広告素材を登録し、報酬額の設定などを行う。基本的な仕組みは成果報酬型ではあるが、仲介業者によって固定費がかかる場合とかからない場合がある。
このアフィリエイト広告も運用が必要で、媒体(ウェブサイト)との関係性をよくしていくための工夫が重要でる。例えば、媒体に対して期間限定で成果報酬額を引き上げるキャンペーンを行ったり、特定の媒体に限定してのユーザーにメリットを提供するキャンペーンを実施したりして、お互いの協力関係を強めていく取り組みが大切である。それによって媒体での露出拡大(バナーエリアの拡大や表示回数の向上)を狙うことができる。
2.SEOによる自然流入
SEO=Serch Engine Marketingの略で検索エンジンの自然検索結果に自社ECサイトのページを表示させることでユーザー流入を狙う集客手法である。自然検索結果に表示できるのはECサイトのトップページに限らず、検索キーワードに応じてそのキーワードに合った内容のページを表示させることができる。
SEOで検索結果の上位に自社ECサイトを表示させる対策をSEO対策と言うが、このSEO対策の具体的な施策項目が下記になる。
・コンテンツ制作(ページ制作)
・外部リンクの獲得
・キーワードに合ったコンテンツの関連性をサイト全体に持たせる
上記の施策を講じることで検索エンジンからの自社ECサイトに対する評価が高まり、検索結果の上位に表示させることができる。
下記に各施策項目ごとの概要を説明する。
コンテンツ制作(ページ制作)
上位表示を狙うキーワードに合った内容のページを作りこむことである。作成したページに対して検索エンジンが評価するのは下記になる。
・テキスト文字数が競合よりも多いこと
・テキストの内容にオリジナリティがあること
・読みやすく、読了率が高い文章構造になっていること
SEOツール(TACT SEOやSEARCH WRIGHTなど)を利用することで、競合サイトのテキスト文字数や文章構造を簡単に調査・抽出することができる。
外部リンクの獲得
外部のサイトから自社ECサイトにリンクを貼られていることで検索エンジンからの評価が高まる。特に、下記の条件に当てはまる場合に評価をより高めることができる。
・外部リンクを売買している業者から購入したリンクではなく、自然なサイトからの自然リンクであること
・発リンク数が少ないサイトからのリンク
・コンテンツ部分からのリンク
・検索エンジンからの評価が高いサイトからのリンク
・上記の条件に当てはまるリンクが競合よりも多いこと
キーワードに合ったコンテンツの関連性をサイト全体に持たせる
例えば、「ダイヤモンド」のキーワードで上位表示を狙う場合、ダイヤモンドに関連した内容のページがサイト内に一つだけあるのではなく、サイト全体の他のページに渡ってダイヤモンドについて関連性があるページが多いことで検索エンジンからの評価が高まる。
以上がSEO対策における施策項目と概要になるが、より具体的で詳細な内容を把握するには、SEOのコンサルティング会社と契約するか、SEOツール(TACT SEOやSEARCH WRIGHTなど)を利用してSEOを内製化することができる。これらのツールを使うと、下記の調査・抽出が可能である。
・キーワードの検索ボリューム
・上位表示を狙うキーワードの関連キーワード
・自社ECサイトに存在するページごとの検索順位、表示回数
・競合サイトの検索順位調査
・競合サイトのページ文字数や文章構造
・上位表示を狙うキーワードに対応したページを作成する際のコンテンツ項目や競合の文字数、タグなど。
3.インスタグラマーを活用したインフルエンサーマーケティング
インスタグラムでフォロワーの多いインスタグラマー(インフルエンサー)を起用し、彼らのインスタグラムアカウントで自社ECサイトやブランドの商品を投稿してもらうプロモーション手法である。「集客手法」と言うには直接的なサイトアクセスを期待できるものではないが、インスタグラム広告と併用することで相乗効果が見込める。つまり、インスタグラム広告だけだとユーザーは敬遠しがちであるが、予めユーザー自身が敬愛してフォローしているインフルエンサーの投稿に出てくるブランドや商品であれば信用する傾向が強い。そのインフルエンサーによる投稿で一旦信用を得た状態でインスタグラム広告を出稿する、という併用の仕方が効果的なのである。しかも、ユーザーはインフルエンサーの投稿から直接ECサイトに遷移することができないが、広告からであれば直接ECサイトに遷移することができるため、実質的なアクセスを稼ぐことができる。ユーザーが敬愛するインフルエンサーによって信頼を得たうえでのサイトアクセスとなるため、購入率が高くなる傾向にあることは想像できるであろう。
更に、リスティング広告やディスプレイ広告などと同様、リマーケティング広告を併用することもできる。それによって一度ECサイトにアクセスしたが即買いしなかったユーザーを後追いでECサイトに再訪問を促すため、再訪問での購入率は飛躍的に高まるケースが多い。
インフルエンサーの1投稿あたりの費用相場は1フォロワーあたり約3円程度、例えばフォロワー数1万人のインフルエンサーを起用するコストは1投稿あたり3万円となる。しかし、インフルエンサーと交渉して商品をインフルエンサーに無料進呈する代わりにギャランティを0円にしてもらう、というやり方もある。
インフルエンサーマーケティングの効果を高めるには、インフルエンサーを複数人テストしながら、効果の高いインフルエンサーを発掘し、効果の高いインフルエンサーと協力関係を築いていくことが重要である。
インフルエンサーの効果は下記を指標とすることで測定できる。
・自社インスタグラムアカウントのフォロワー数の増加数
・インフルエンサーの投稿前後でのサイトアクセス数や注文件数の推移
・インスタグラム広告のCPO(1顧客獲得単価)の推移
新規顧客獲得における重要指標
新規顧客獲得のための集客を実施する場合、1人の新規購入客を獲得するのに必要なコスト(=CPOまたはCPAという。)を重要指標として考える必要がある。
CPO(CPA):1顧客獲得コスト 【計算式】広告費 ÷ 新規購入ユーザー数
例えば、10万円かけて10人の新規購入ユーザーを獲得できた場合、CPOは[10万円÷10人=1万円]ということになる。10万円かけて20人の新規購入ユーザーを獲得できた場合、CPOは5,000円となる。平均注文単価が1万円、粗利率50%だとすると、前者の場合は1万円かけて5,000円の粗利を獲得できることになるので、1顧客獲得あたりの損益はマイナス5,000円、ということになる。後者の場合は5,000円かけて5,000円の粗利を獲得できることになるので、1顧客獲得あたりの損益はプラスマイナス0円、ということになる。つまり、前者は赤字で、後者はマイナスではないが利益も出ない、トントンの状態ということだ。実は、現実のネットマーケティングでは、このような、広告費をかけても赤字またはトントン、といったことが珍しくない。むしろ正常でよくある状況である。リスティング広告やディスプレイ広告の場合、広告単価(クリック単価)は競合サイトとの入札によって変動するため、広告費をかけても利益が出ないか、トントンくらいに収まるようにクリック単価が入札調整されることが多い。費用対効果が比較的高いと言われているリスティング広告においても儲かりずらいくらいなので、ディスプレイ広告やインスタグラム広告においては更に費用対効果が悪く、CPOが高騰することが多い。
では、ネットマーケティングでどのようにして利益を出すことができるのか?
ECのビジネスモデル(=通信販売のビジネスモデル)はリピート購入による利益を積み増していくことが基本になる。つまり、新規顧客を赤字でも獲得し、リピート購入で儲ける、ということが昔からある通販ビジネスの基本で、ECにおいても同じである。ここで重要な指標が“LTV(ライフタイムバリュー)”=顧客生涯価値であり、1人のユーザーが2年~3年の長期スパンで平均してどれだけの売上、利益を寄与してくれているかを図る指標である。
“LTV(ライフタイムバリュー)”=顧客生涯価値: 期間累計売上 ÷ ユニーク購入ユーザー数
例えば、過去3年間のトータル売上が4億円、ユニーク購入ユーザー数が5,000人だとすると、LTV(売上):80,000円、LTV(粗利):48,000円(粗利率40%の場合)となる。そうすると、前述のCPO:1顧客獲得コストが1万円かかったとしても3年間では1顧客から38,000円の粗利が出る計算になる。つまり、長期間でのLTVを分析し、利益が出る適正なCPOを設定することで、たとえ初回購入の時点では赤字でも、コストを回収して黒字転換するための戦略的な広告戦略の実施が可能になるのである。また、リピート購入を促進するための効果的なCRM(顧客コミュニケーション)戦略を計画・実施することも重要である。具体的なCRM(顧客コミュニケーション)施策には下記が挙げられる。
・メールマーケティング(メルマガ配信)
・LINEマーケティング
・SNSのフォロワー化による情報配信
また、初回購入客にノベルティーなどの販促物を付与する場合、そのノベルティーにいくらまで予算を割くべきか、といった適正な販促予算額もLTVによって算出できることになり、渋々ノベルティーを付けるといったことも必要なくなる。
更に、集客経路別、LP別にLTVを分析することで、より利益性が高い流入媒体、LPクリエイティブを特定することも可能になる。