【保存版カリキュラム】ECノウハウ

2022.01.14

ECビジネスのモデルケースとECサイト立ち上げ方法

ECビジネス・ECサイトを初めて立ち上げるEC事業者、EC事業を見直して立て直しを図ろうと思っているEC事業者のために、ECに関する基本情報やECの市場規模、ECサイトのモデルケースの他、精度の高いECサイトやインフラ、ビジネススキームを効率的に構築するための方法、ノウハウについて詳しく説明していく。

 


第1章 EC基本情報


「EC」とは

「EC」とは「Electronic commerce(エレクトリックコマース)」の略で、「Eコマース」や「ネット通販」、「ネットショッピング」、「オンラインショッピング」とも言われ、商品をインターネットサイト上で売買することを意味し「ECビジネス」や「EC事業」と言い換えることもできる。また、対象のインターネットサイトを表す用語は「ECサイト」「Eコマースサイト」「通販サイト」「ネットショップ」「オンラインショップ」などと言われる。
10年前ほど前までECサイトは単なる自動販売機の様相が強かったが、最近ではECサイト上でのコンテンツが充実化されたり、自動接客エンジンによるマーケティングオートメーションや、ポイントが店頭とECサイトで共通化されるなど、利便性や体験性が大幅に増している。
コロナウィルス感染症拡大により、ECによる非対面での買い物習慣がコロナ以前より一層定着し、ECで商品が流通する規模が拡大した。市場規模の拡大に伴い、ECの新しい取り組みも活性化している。例えば、「スタッフスタート」というオンラインでの接客ツールがアパレルやコスメのECサイトに広がり、実店舗のスタッフがオンライン上で簡単にファッションコーディネートやメイクアップを動画や画像で投稿し、ユーザーとインタラクティブなコミュニケーションによって接客するという新しい接客の仕方が確立されつつある。

 

ECの市場規模(2020年度)

経産省が発表した「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、BtoCのEC市場規模は19兆2779億円で前年比0.43%減であった。BtoBのEC(企業間電子商取引)の市場規模は334兆9000億円で前年比5.1%減。
物販分野を対象としたBtoCのECの市場規模は前年比21.71%増の12兆2333億円で、EC化率は8.08%。前年比1.32ポイント増であった。
コロナウイルス対策・外出自粛の影響で、旅行サービスなどの縮小でサービス系分野の市場規模が大幅に減少したためBtoCのEC市場規模全体は縮小したが、物販系ECは大幅に市場規模が拡大した。
スマートフォン経由の物販EC市場規模も拡大した。2020年は6兆2269億円で前年比46.1%増。物販ECに占める割合は50.9%で、前年比で8.5ポイント拡大した。

 

ECビジネスで知っておくべき単語やトレンド

Shopify(ショッピファイ)

ECの市場規模拡大の一因を担っているのがカナダ発のショッピングカートシステム「Shopify」である。2018年頃に日本にも本格上陸し、「Shopify Japan」が設立された。システムのローカライズが日進月歩で勧められていて、Shopifyを専門にしたECサイト制作会社やエンジニアなども目立ってきており、Shopifyを核にしたエンジニアコニュニティーが盛り上がりを見せている。日経新聞の一面で「アマゾンキラー」と紹介され、世界中のシステムベンダーがShopify用のアプリケーションを開発している。
下記がShopifyの特徴である。
1.アプリを実装することで機能の拡張ができるため、機能開発のコストと時間を大幅に抑えることができる。
2.デザインのクオリティーが高いテンプレートが充実している。
3.月額利用料が低価格($29~)

 

越境EC

越境ECとは海外の消費マーケットに対してECを展開することを指す。越境ECを展開するには2通りの方法があり、1つは海外のモールに出品する方法、もう一つは自社ECサイトを越境対応する方法。自社ECサイトを越境対応するには下記を網羅する必要がある。
・外国語対応(翻訳)
・現地通貨表示
・決済方法の充実化(Paypal対応)
・海外向け物流の整備

 

D2C

D2CとはDirect to Consumerの略で、メーカーがECサイトによって商品を中間業者を通さずに直接エンドユーザーに販売することだが、特に下記の特徴があるECがD2Cの成功例で目立っている。
1.老舗の大手メーカーではなく、スタートアップ企業による新興ブランドでのEC展開
2.商材:コスメやアメニティー、アクセサリー
3.実店舗を持たない(創設初期)
4.SNSを巧みに活用(SNSをコミュニケーションツールとして活用)
5.ユーザーをコミュニティ化し、ユーザーとともにブランドを育てていくスタイル
6.ニッチな市場やユーザーニーズにフォーカス
7.ビジュアルやECサイトのデザインセンスに優れている
8.低コストで機能の拡張性があるShopify(カートシステム)を利用

特に、3~7は若いSNS世代がセンスを発揮できる領域のため、従来の大手メーカーではなかなか馴染みのないマーケティングのスタイルだと言える。
下記に具体的な成功例の一部を挙げる。
・Warby Parker/ワービーパーカー(商材:メガネ)
・BULK HOMME/バルクオム(商材:メンズスキンケア)
・FUJIMI/フジミ(商材:サプリメント)
・COHINA/コヒナ(商材:小柄な女性に特化したアパレル)

 

自社ECサイトとショッピングモール

ショッピングモールとは楽天やYahoo!ショッピングに代表されるようなショッピングモールに出店する形式のECであるのに対して、自社ECサイトは独立したECサイトを独自に立ち上げて展開するECの形である。ショッピングモールに出店するメリットは集客力を確保できる点にあるが、昨今では出店店舗数の増加にともない、ショッピングモール内でSEO対策や広告を出稿したりしないと十分な集客数を確保できない傾向にある。また、ショッピングモールのデメリットである売上に応じた手数料が生じること、顧客データを自社のものにできないことを考慮し、自社ECサイトを強化する動きが目立っている。ここ最近、ワークマンやディズニーは楽天から撤退することを決めた。顧客体験が重視するユーザーニーズの潮流から考えると、オリジナリティや顧客コミュニケーションを自由に強化できる自社ECのスタイルが支持を得ることになるのは自然の流れであろう。
ここ1年の間、自社ECサイトを立ち上げる際に使用するショッピングカートに「Shopify(ショッピファイ)」が選ばれることが格段に増えた。2021年4月日本経済新聞に「“アマゾンキラー”shopify」と題する記事が出て話題になったことも記憶に新しい。初期費用・月次費用が低価格でECサイトを展開することが可能な上に、運用開始後にECサイトの規模に応じてシステムを載せ代える必要なくシステムの拡張ができ、追加で必要になった機能をアプリで実装することが可能であること(=ヘッドレスコマース)がShopifyが支持されている要因である。
但し、自社ECサイトによるECビジネスは大海原への航海に出るようなもので、戦略策定からサイト設計・デザイン、広告の運用、SEO対策、ブランディング、マーケティング、分析まで、手をかけなければならない業務が広範囲に及ぶ。定期的にデータ分析をしながらユーザーの動きやECサイトの弱点を把握し、集客面とECサイト側の両面の改善施策を継続的に実施しながら目標とする売上に近づけていく緻密で地道なマーケティング活動が必要である。

 


第2章 成功事例に見るECサイト成功モデル


 

ECサイトにもパレートの法則があり、8割のECサイトは失敗し、2割のECサイトしか収益を上げられていない。世の中の大半のECサイトは明確なECサイトとしてのビジネスモデルがなく、ただ単に商品を陳列しているだけである。逆に言うと、収益を上げているサイトは明確な”売れる理由”を必ず持っているものである。”売れる理由”がないサイトは必ず売れない。

売れないECサイトを運用しているオーナーには、「ネット上に商品をアップすれば勝手に売れていくだろう」という安易な考えでECサイトを開設した人たちがなんと多いことか。「うちの会社は大企業ではないので、大企業並みの充実したサイトは構築できない。」「大それた付加価値を付けることは無理だ。」という姿勢のオーナーが多くいるが、ネット上には大成功のサイト(十分な利益を確立しているサイト)と大失敗のサイト(赤字サイト)しか存在しない。”ある程度”の力を入れれさえすれば、”ある程度”の売上が上がるだろう、という考えは通用しない。リアル店舗と違い、立地上の物理的制約がないネット世界においては、全てがオープンでユーザーは全ての情報を簡単に比較検討できるため、大手企業にも負けない明確なメリットを打ち立てる必要がある。資本の多少はユーザーには全く関係のないことで、付加価値が打ち出せないECサイトは失敗するだけである。ECサイトのおいては十分な競合対策=独自価値・サービスを確実に打ち出していかない限り、十分な売上を樹立することはできない。

明確な”売れる理由”を掲げているECサイトの事例を下記に挙げる。

下記の数々のサイトで特徴的なのは、シンプルで明確、分かりやすいユーザーベネフィットが存在する。

 

【”自宅で試着”を打ち出したECモデル】

LOCONDO

www.locondo.jp/

約1000ブランドの靴とファッションの通販サイト。

「買ってから選ぶ。」をコンセプトに、全て自宅で楽ちん試着 30日間返品(返送料)無料。

locondo

 


 

 

【ビジュアル画像の多用とプチプライス展開によるECモデル】

fifth
www.5-fifth.com/‎

ハイビジュアルかつ低価格で洋服、靴、アクセを提供するfifth。吉川ひなのや藤井リナのコーデアイテムもプチプラで販売中。

fifth_top

 

 


 

 

[DHOLIC:ディーホリック]レディースファッション通販

www.dholic.co.jp/

dholic_top

 


【商品検索エンジン型ECモデル】

ZOZOTOWN
zozo.jp/

2599ブランドのアイテムが集結

zozo

 


【ハイブランド専門型ECモデル】

デザイナーズブランド正規通販 | mirabella(ミラベラ)
flagshop.jp/mirabella/shop/

ZOZOタウンでも取扱いが難しいラグジュアリーブランド、デザイナーズブランドを取り扱うECサイト。

mirabella

 

 

ELLE SHOP
elleshop.jp/

女性誌『エル(ELLE)』 公式ファッション通販

elle

 


 

 【ブランドオフィシャルECモデル】

各ブランドが運営する直営ECサイト

例)

vuitton

 


 

saturdays surf

 


bannerbarrett_top

 


 

 【ブランド複合型ECモデル】

多数のブランドを展開する会社が自社のブランドを中心に展開するポータル型ECサイト

ジャドール

JUNグループ 公式オンラインショップ
www.jadore-jun.jp/‎

jador-2

 

 

[.st](ドットエスティ)

グローバルワーク、ローリーズファーム、ニコアンドなどの18のブランドを展開する株式会社ポイント・株式会社トリニティアーツ(アダストリアホールディングス) のポータルECサイト

www.dot-st.com/

.st

 

 

USAGI ONLINE(ウサギオンライン)

snidel(スナイデル)、gelatopique(ジェラートピケ)、FRAY I.D(フレイアイディー)、Lily Brown(リリーブラウン)などを展開するマッシュグループのポータルECサイト

usagi-online.com/

usagi

 


 

【フラッシュセール型ECモデル】

商品ごとにセール期間を設定し(21時から、限定78時間)、常時セール価格で販売する会員制ファミリーセール・ECサイト

 

GILT

正規ブランドが最大70%Off‎
www.gilt.jp/‎

gilt

 

 

グラムール セールス‎

www.glamour-sales.com/

gromour

 

 

Brands for Friends
https://www.milleporte.com/

b4f

 


 

【WEBマガジン連動型ECモデル】

元々WEBマガジンの運営を主事業としている会社が展開するECサイト。WEBマガジンとの連動性があるため、集客力が強み。

 

JUST LIKE HONEYEE 「ジャストライクハニー」

WEBマガジン”honeyee.com(ハニカム)”、”.fatale(ファタール)”によるECサイト

 

 

 


第3章 EC事業の全体像と立ち上げ方・手順


ECビジネス・ECサイト立ち上げの準備項目

ECビジネス立ち上げにあたり、まず、理解しておくべきことは、「ECサイトの構築」はECビジネス構築全体の中のごく1部分でしかない、ということである。「まずはサイトを立ち上げよう!」「どんなデザインにしようか!?」と意気込む人が多いが、まったくもって主眼と手順が間違っている。ECビジネスにおいて、ブランドサイトやコーポレートサイト(ホームページ)を作るのとは主眼や手順がまったく異なるのである。何故ならば、ECサイトの目標・ミッションは”売上”であり、そのためには戦略や集客マーケティング、物流、決済などを立体的に連携させる必要があるからである。ECサイトならではの構築アプローチが必要になる。

下記がECビジネスに必要な業務の全体像を表した図である。「ECサイトの構築」はECビジネス構築全体の中のごく1部分でしかない、ということが分かるであろう。

※「ECサイトの構築」については「第4章 自社ECサイトの構築方法|費用・手順を比較」で詳しく解説する。

 

ECビジネスの全体像

 

上記の図を更に細かくブレイクダウンすると、ECビジネス全体の構築には、ざっと下記の準備項目が存在する。

・事業計画

・戦略企画

・サービス設計

・オムニチャネル設計

・カートシステム選定

・カートシステム仕様検討、要件定義

・ECサイト設計

・ECサイトデザイン

・システム開発/コーディング

・問合せ対応業務

・受注処理、出荷管理

・決済

・物流

・商品撮影

・画像加工

・商品説明ライティング

・商品登録

・集客プロモーション企画

・分析・ウェブ解析

・更新スキーム策定

 

 

 

ECビジネス・ECサイト立ち上げの準備手順

次に、これらの準備項目をどういった順序で、どのように準備していくべきなのかを具体的に説明していく。まずは順序についてである。

 

ECビジネス構築の順序

step

 

上記の順序に関して重要な点は、戦略やサービス設計、事業計画などを策定した上で初めて「サイトデザイン」などの制作に進むべきことである。事業としての規模感、競合を加味した上での差別化など、戦略の”方向性”をよく検討し明確になった上で、戦略、戦術をデザインに踏襲するのが理想なのである。上記チャートの「戦略企画」~「事業計画」はECのコンサルティング会社と相談しながら、1ヵ月~2ヶ月くらいかけてじっくりと詰めていく必要がある。サイトローンチ後に戦略がブレてしまうと、サイトの設計やデザインも見直すことになりかねないからだ。当然、「戦略企画」~「事業計画」がしっかりしていないEC事業はまず成功しない。

また、商品撮影や問合せ対応業務の準備、物流の準備、集客企画など、ECサイト構築と同時進行で並行して進めなければならない準備項目が多く存在する。これらの準備をECビジネスの運営代行会社やプロデュース会社などに委託する場合は社内の担当スタッフは1人で間に合うことが多いが、これらを社内スタッフで進める場合は最低でも2人~3人の人員が必要になるであろう。ECビジネスの運営代行会社やプロデュース会社などに業務を委託する場合、できれば、戦略策定~サイト構築~集客企画・運用~インフラ構築のすべてを一貫して担ってくれる業者のほうが効率がよく、全体としての精度も高まるであろう。

 

 

 

各準備項目の内容について

 

続いて、各準備項目ごとに内容やポイントを解説していく。

 

1.戦略企画

step1

 

ECの戦略を考える上で競合サイトの分析をすると、自社ブランドや商品の弱み、強みが把握しやすく、ECサイトとしての攻め方を企画しやすい。

競合の分析をする際に気をつけるべきことは、実店舗での競合”ブランド”を意識するよりも、ネット上での競合”サイト”を重点的に分析をすべき点である。実店舗での競合ブランドだけを意識することは危険であり、実店舗では展開していないECサイトも十分競合になり得るからである。例えば、ファストファッションのようなブランドの場合、ネットが主戦場になると、普段意識しているH&MやGUだけが競合なのではなく、ベルーナやベルメゾンのような通販ブランドや、DHOLICやfifthなどのネット専業のブランドが強力な競合になる。ハイクオリティーで高単価なブランドの場合、ELLE SHOPやミラベラのようなネット専業のセレクトECサイトが強力な競合になる。

競合を分析し自社ブランドの強みを考える上での具体的な手順としては、まず、自社ブランドの強みを書き出してみよう。書き出したら、次はネット上での競合”サイト”を重点的にチェックし、それらのサイトやサービスの特徴を書き出してみよう。そして、競合サイトと自社ブランドの特徴の強弱を視覚的に見るための、縦・横2つの軸を考え、マトリクスを作ろう。

 

競合マトリクスの例

競合マトリックス

 

例では縦軸が「価格・クオリティー」、横軸が「トレンド性」になっているが、この軸の設定の仕方は競合や自社ブランドの特徴によって変わってくる。例えば、「カジュアル」や「トラッド」「モード」などの軸が適切な場合も考えられるし、「ターゲット年齢層」や「商品数」といった軸が適切だと考えられる場合もある。ここでポイントなのは、「自社ブランドがEC展開した際、どの領域で展開すれば競合と被らずに差別化できるか」という自社ECサイトの”ポジション”を探りながら軸を考え、競合をマッピングしてみることである。マトリクスを作る目的は自社ECサイトの勝ち領域を探し出すことなのである。そして競合と被らない勝ち領域で自社ブランドの強みが浮き彫りになるようにマトリクスを練ってみよう。

上記マトリクスの例の場合、自社ブランド(自社ECサイト)の元々の強みである「価格とトレンド性のバランス」「ほど良い価格で程よくトレンドが取り入れられたブランド」という点を考慮したマトリクス設定である。このポジションに近いブランドが競合A「mystic」になる。「mystic」のサイトをくまなくチェックし、「mystic」がやっていないサービスやコンテンツ、商品展開をすることで「mystic」と差別化が図れ、「mystic」に勝てることになる。特に、自社よりも価格が安いECサイトに対しては、”価格以外の付加価値をどう付けるか”が重要である。例えば、靴などの試着をしないとなかなか購入しづらい商品が主力商品の場合、「初回購入限定・返品無料サービス」を強み・差別化ポイントにして展開するのも手であろう。はたまた、カラーバリエーションが強みのブランドであれば、様々な色味から商品を細かく検索できる独自の機能をサイトに実装することも有効であろう。差別化はアナログベースのサービスで実現できる場合もあるし、テクノロジーで実現できる場合もある。

次に、戦略を戦術レベルに落とし込む必要がある。つまり、自社ブランドの強みに沿った攻め方、仕掛けをECサイトにうまく落とし込む工夫・企画が必要なのである。逆に言うと、競合に対して明確な強みや特徴がないECサイトは、よっぽど強いブランド力を持っている場合を除いて、思うように売上を作ることが難しい。特にネット販売の場合、”商圏”や”店舗立地”という概念がないため、競合のECサイトのメリット・デメリットをユーザーはスマホの画面一つで簡単に比較検討して見抜くことができてしまう。そのために、競合分析に基づいた強みの打ち出し、というものがとても重要になる。

 


 

2.サービス設計

step2

 

サービス設計とは、差別化のための戦略・戦術を、実際の現場のオペレーションレベルで業務設計することである。

例えば、 「初回購入限定・返品無料サービス」の試着サービスを戦略として展開する場合、下記について詳細を詰める必要がある。

・初回購入者にのみ返品無料のサービスを付与するにはどのようなやり方があるか?

⇒初回購入者にのみオンラインクーポンを発行し、返品の場合は事前にサイト上で返品申し込みをしてもらう。

・返品先はどこにするか?物流センター?運営本部?

・物流センターを返品先にする場合、物流センターと事前返品申し込みの情報を常に共有しておく必要があるが、どのように共有するか?

・返品の際の送料はどう扱うか?

・ユーザーへの返金はどのような手順で行うか?返金のルールはどうするか?

etc…

 

上記のように、システムと現場オペレーションの両領域に渡って、様々な決め事、ルールづくり、システム仕様の検討が必要になることがよくある。この例のように、さほどシステム投資は必要ないが、物流センターとの連携が必要、という場合もあるし、現場オペレーションとの連携は不要だが何か特別な機能を実装して差別化を図る場合は大規模なシステム投資が必要になる場合もある。どこにどれだけのコストがかかるかは戦略・戦術次第なので、戦略・戦術を組み立てる際に、投資コストやオペレーションコストの現実性についてある程度加味して企画を練り上げておくのが望ましい。

 


 

3.オムニチャネル設計

step3

 

今やオムニチャネルを無視してECビジネスを組み立てることはできない。オムニチャネルとは、分かりやすく言うとネット(ECサイト)とリアル(実店舗)の融合であり、ネットサービスとリアルサービスを包括して1つのサービスとして展開することである。具体的にはECサイトと実店舗での「ポイントの共通化」、「在庫の共通化」、「相互送客」などが挙げられる。

オムニチャネル

別名:オムニチャンネル,オムニチャネルリテイリング
【英】omni channel
オムニチャネルとは、実店舗やオンラインストアをはじめとするあらゆる販売チャネルや流通チャネルを統合すること、および、そうした統合販売チャネルの構築によってどのような販売チャネルからも同じように商品を購入できる環境を実現することである。

オムニチャネルでは、実店舗、オンラインモールなどの通販サイト、自社サイト、テレビ通販、カタログ通販、ダイレクトメール、ソーシャルメディアなど、あらゆる顧客接点から同質の利便性で商品を注文・購入できるという点、および、ウェブ上で注文して店舗で受け取ったり店舗で在庫がなかった商品を即座にオンラインでの問い合わせで補ったりできるよう販路を融合する点、といった要素が含まれる。

インターネットやモバイル端末の普及により、消費者はいつでも、どこからでも買い物することが可能になった。そうした時代背景における新たな小売のあり方としてオムニチャネルの考え方が注目されているといえる。

オムニチャネルの「オムニ」とは「すべての」「あらゆる」という意味をもつ。いくつかの販路を組み合わせて提供する取り組みはマルチチャネルとも呼ばれるが、オムニチャネルはあり得る全ての販路を統合することに焦点が置かれている。

(IT用語辞典より)

「ポイントの共通化」、「在庫の共通化」、「相互送客」と言葉にすると簡単なようだが、実際には検討事項や準備事項が多く、難易度が高い施策である。

ここでは、「ポイントの共通化」、「在庫の共通化」、「相互送客」のそれぞれについて、メリットやよくある課題について説明する。

 

■ポイントの共通化

【メリット】

ECサイトと実店舗のポイントを共通化することで、ブランドにとっては下記のメリットが生まれる。

・ユーザーの利便性、ロイヤリティーが上がる。

・ユーザーに対して積極的なメールコミュニケーションを仕掛けられるため、ユーザーとの接触が増え、ユーザーの購入機会が増える。

・ECサイトと実店舗の併用を促進することができ、その結果、ユーザーの購買金額=LTV(生涯価値)が上がる。

・ECサイトと実店舗の購買データを統合できるため、より深い顧客分析が可能になる。

 

【課題】

・既存のポイントシステム、基幹システム、POSシステムとどう連携させるか。

・実店舗での会員登録時、スタッフの現場オペレーションをどううまくコントロールするか。

・効果検証や購買データの分析をどのように行うか。

 

■在庫の共通化

【メリット】

・ECサイト上で実店舗の在庫数を表示させることができ、商品の購入を検討しているユーザーを店舗に誘導することができる。

・ECサイトで購入したユーザーは実店舗で商品の受け取りを選択できるため、ユーザーの利便性が上がる。来店時に追加購入の機会が生まれる。

・ECサイト⇔実店舗間の適切な在庫移動を判断できるようになり、販売機会の損失を減らすことができる。

 

【課題】

・既存の在庫管理システム、基幹システムなどとどう連携させるか。

・比較的大規模なシステム投資が必要

 

■相互送客

【メリット】

・店舗ブログなどを活用して、店舗のユーザーをECサイトに送客することができ、販売機会を創出することができる。

・ECサイトと実店舗の購買データを活用し、ECサイト、実店舗それぞれへの集客、購買につながるクーポンなどを発行できる。

 

【課題】

・店舗スタッフ、ECスタッフそれぞれのモチベーションをどうキープするか。社内の評価制度の整備が必要。

 

この様に、オムニチャネルの推進には多くの検討時間、社内調整、システム投資が必要なことが多い。まずは、ECビジネス単独で構築し、フェーズを分けて、後追いでオムニチャネルを進めることが現実的であることが多い。ECビジネス単独でも準備事項や検討事項が多いのに加え、オムニチャネルの準備や調整を同時進行で進めるには人員コストや失敗のリスクが高まるからである。但し、オムニチャネルを推進することがECビジネス構築の最大の目的である場合はこの限りではない。社内スタッフのリソースをしっかり確保し、社外の専門パートナーと綿密な計画を立てた上で慎重に企画や準備を進める必要がある。

 


 

4.事業計画

step4

 

ECビジネスの事業計画(売上と利益のシュミレーション)としては、通常の一般的な事業計画のシュミレーション表に下記の数値項目を追加するのが良い。

・注文単価

・アクセス数

・購入率

・広告費

・CPA(1顧客獲得単価)

 

目標売上の達成に、どれくらいのアクセス数が必要で、どれくらいの広告費が必要かが明確になるからである。また、目指すべき購入率や注文単価、CPA(1顧客獲得単価)と言ったECで重要なKPI(重要指標)も明確になる。

さらに、このシュミレーション表にユーザーの流入経路(集客メニュー)を追加し、1ヵ月単位のシュミレーションにすることで、運用開始後、流入経路ごとのKPIを予算と実績の両方で月次管理していくことができる。

 

サンプルイメージ

事業計画

 

例えば、運用開始後、「リスティング広告の流入数と購入率は目標を達成しているが、自然検索(SEO)の流入数や購入率は目標を下回っているため、全体としては注文件数、売上が20%予算を下回っている。」などのように事業計画を全体とポイントの両方で検証でき、今後どの数値を伸ばすべきかを事業全体から見渡すことができる。

各KPIの目標値(予算値)は下記を目安に設定するのが良い。

・注文単価:店舗の注文単価×70%~80%

・アクセス数:目標注文件数÷購入率

・購入率:1%

・CPA(1顧客獲得単価):≒商品原価+最低限確保したい利益額

・広告費:CPA×注文件数

 

 


 

5.カートシステム機能・仕様検討、カートシステム選定

※「ECサイトの構築」については「第4章 自社ECサイトの構築方法|費用・手順を比較」で詳しく解説する。

 

step5

 

上述の1~4までの作業で、ECビジネスの戦略やサービス、規模感、成長イメージを具体的にすることができたはずである。ドキュメント化しておけば、社内外の関係者と事業に対しての共通認識を持つことができる。

次のステップとしては、ECビジネスの戦略やサービス、規模感、成長イメージを元に、ECのシステムにはどのような機能、動きが必要になるかを検討し、システムを選定する必要がある。選定にあたり、各システムが有する機能やサイトの動き方、仕様を確認するにはシステムに関する資料をチェックする以外に、デモアカウント(テストアカウント)を発行してもらうことで、表には見えない管理画面の仕様についても細かくチェックすることができる。これらの確認作業を十分に行っておくことが大切で、機能に不足はないか、仕様は問題ないかをよく検証しておこう。システムの作業が始まった後で不足が判明すると致命的になる。

また、注意しておきたいのが、ECのシステムについて相談する相手に関してである。相談する相手はシステムベンダー(システムを開発・提供している会社)ではなく、ECのコンサルティング会社かECサイト構築・制作会社が望ましい。何故ならば、システムベンダーは自社が開発しているECシステムを販売することが目的になるため、自分の会社のシステムしか提案できないからである。戦略やサービスに最適な仕様の摺り合わせや、システム選定ができる中立的な立場のパートナーに相談する必要がある。

 

ECのシステムの種類は大きく分けて下記の2つ。

■ASP(レンタルカート)

例)Makeshop、FutureShop、カラーミーなど。

初期導入コスト、システムにかかる月次費用を安く抑えることができるシステムパターン。多数の企業が共用で仕様する形式をとっており、基本的にサーバーも一体となっている(共用サーバー)。デザイン性は高いが、機能や仕様は決められており、機能追加や仕様変更など、個別のカスタマイズは不可となっている。但し、追加の費用無しで、システムのバージョンアップや機能追加がシステム会社主導で行われるというメリットもある。

■パッケージ

例)EC-CUBE、えびすマート、EC-Orange、EC Being、Commerce21など。

ライセンス購入型の買い切り型システムパターン。機能追加や仕様変更などのカスタマイズが可能。

初期ライセンス費用が無料の EC-CUBE、中大規模サイト向けのえびすマート、大規模サイト向けのEC-Orange、EC Being、Commerce21などがある。それぞれのシステムに特徴や強みがある。保守・メンテナンスにはランニング費用がかかる場合が多い。

 


 

6.ECサイト設計

step6

 

サイト設計とは、サイトの各画面(トップページや商品一覧ページ、商品詳細ページなど)のレイアウトやコンテンツ、要素、ギミックを考え、画面設計図に落とし込む作業である。また、各画面間の遷移を表したサイトマップを作ることも含まれる。当然、戦略やサービス、それとシステム仕様に沿った形で設計をすることが重要になってくる。ECシステムの仕様にも明るく、経験や実績が豊富な人でないと精度が高い設計ができないため、制作会社のディレクターやプランナーに依頼することになる。

また、サイトローンチ時に展開するプロモーションに合わせ、特集ページやキャンペーンページの企画・設計も進めておくのも忘れずに進めておくべきである。

 


 

7.ECサイトデザイン

 

ECサイト設計の段階を経て、ようやくデザインに着手することになる。まずはデザイナーを選定、起用することから始まるが、制作会社によっては起用するデザイナーが社内のデザイナーに限定される場合もあるため、どのようなデザイナーが在籍するかを事前に確認しておいたほうが良い。依頼する制作会社によっては、作ろうとしているECサイトのデザインテイストが得意なデザイナーがいる場合もあれば、まったくいない場合もあり得るからである。制作会社によっては、自社ではデザイナーは抱え込まずに、制作するデザインの方向性によって外部のデザイナーを使い分ける会社もある。その方がデザインの精度が高まる、という考え方からである。

作るECサイトのデザインテイスト、トーンをデザイナーとすり合わせする際に有用なのが、ベンチマークサイトをデザイナーに提示することである。ベンチマークサイトとは、デザイナーと共通認識を持つための参考サイトのことである。デザインテイスト、イメージが近しいベンチマークサイトを見つけておいて、デザイナーにそのサイトを見てもらうことで、デザインテイストのすり合わせをうまく進めるのに役立つ。例えば、「このサイトの色味はイメージに近い」「このサイトのパーツデザインは参考にしたい」「このサイトのようにイラストや写真を多く使いたい」など、できれば複数のベンチマークサイトを用意しておくと、希望のイメージを細かくデザイナーと共有できるため、デザイナーが希望のデザインを制作するのに役立つ。デザインテイストのすり合わせが済んだら、デザイナーに2~3のデザインパターン案を出してもらい、一番希望に近いものを選択する。一番近いパターンを選択したら、細かい修正指示と修正作業を繰り返し、デザインが仕上がっていくことになる。

 


 

8.システム開発/コーディング

システム開発やコーディングは制作会社側の作業になるため、ブランド側では特段の作業はないが、抑えておくべきポイントは、コーディング作業が始まった以降はデザイン、特にレイアウトの修正・変更が効かない、という点である。修正・変更する部分によってはコーディング作業に入った後も悪影響がない場合もあり得るが、修正・変更が効かない、と認識しておいたほうが無難である。どうしても修正・変更が必要な場合は、デザインの修正コストとコーディング修正コストが追加でかかり、制作スケジュールが遅れることになる。

システム開発、コーディングが完了すると、テストサイトでの動作確認、検証作業を経ていよいよサイトオープンとなる。

 

ここまでが、戦略企画~サイト構築までの流れである。次の段落からはサイトオープンの1ヵ月~1ヵ月半前から、サイト構築と並行して準備が必要な事項について説明していく。

 


 

9.プレスリリース

step7

 

ECサイト構築の準備に平行して、サイトオープンの1カ月~1カ月半にまでに準備しなければならない準備項目が以下のように8つある

1.プレスリリース

2.決済

3.商品撮影

4.商品画像加工

5.商品登録

6.集客マーケティング企画

7.更新設計

8.分析

 

最初に「プレスリリース」の準備内容について説明する。

ECサイトがオープンすることを見越して、世の中にECサイトがオープンしたことを知らしめるためのプレスリリースを準備しよう。サイトの認知を広げるのに有効であるとともに、ウェブメディアに掲載されれば、サイトへのリンクが設置されることでSEOの効果を押し上げることになる。

プレスリリース配信にあたっては、ファッション業界を専門にしたPR会社にプレスリリース業務をお願いすることで、特にアパレル専門媒体への露出の可能性が高まる。

下記は主なアパレル専門媒体のリストである。

【紙メディア(アパレル業界紙)】 例

WWD Japan
繊研新聞

 

【ウェブメディア】 例

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下記はプレスリリース原稿の例である。

pressrelease1 pressrelease2 pressrelease3 pressrelease4 pressrelease5 pressrelease6

 

原稿を作成する際のポイントは、単にECサイトをオープンしたことを訴求するのではなく、他にはない特徴や差別化を大きく打ち出すことである。ECサイトがオープンしたこと自体は珍しくも何ともないため、プレスリリースの主眼をサイトオープンではなく、独自のサービスや差別化の工夫などを切り口にした原稿を作成することで媒体に掲載される確度が高まる。

また、「@Press」や「ValuePress」といったプレスリリース配信サービスを活用するのも有効であろう。掲載を保証してくれる媒体も公開されているし、掲載確認・報告レポートのオプションもある。特に、多くのウェブメディアの掲載保障があるため、被リンクによるSEO効果も高い。

 


 

10.決済

step8

 

クレジットカード決済の申し込みには審査が必要で、審査には約1ヶ月かかることが多いため、サイトオープン前のテスト購入を考慮すると、約1ヶ月半前から準備しておくのが無難である。

まず先に決めなければならないのが、どの決済手段をユーザーに提供するか、である。
決済手段の種類は下記が挙げられる。

■クレジットカード

■代金引換

■銀行振込

■コンビニ決済

■後払い

■アマゾンID決済、楽天ID決済、ヤフーID決済

最近ではクレジットカード不要のPaidyと言った新しい決済も登場している。会員登録などが一切不要で、携帯電話番号とメールアドレスだけで利用できる。1ヶ月分の利用額をまとめて、翌月10日までにコンビニや銀行振込で支払うことができる。

また、初期費用・月額費用が不要で、月間売上が100万円まで完全に無料で使えるクレジットカード決済「SPIKE」と言った決済も出てきている。

但し、新しい決済サービスはECのシステムによっては対応していなかったり、システムに実装するのにカスタマイズが必要な場合があるので、申し込み前に確認しておく必要がある。

「後払い決済」はユーザーに請求書が発行され、商品が自宅に届いた後にコンビニや郵便局などで支払いをする決済である。代金未払いのリスクは決済代行会社が負担するので、EC運営会社にリスクはないが、その分決済手数料が割高である。後払い決済は様々な決済代行会社がサービスを提供していて、「NP後払い」や「後払い.com」などのサービスがあり、料金体系などの条件が異なる。自社のECサイトに適した条件のサービスを選択する必要がある。また、注意が必要なのが、後払い決済の受注処理にかかる手間である。後払い決済のサービスによっては、一部のECのシステムと自動連携していて、受注処理の手間が軽減される場合がある。自動連携に対応していないECシステムもあるので、自社のECシステムに自動連携されている後払い決済サービスを選択するのが効率的である。

「アマゾンID決済、楽天ID決済、ヤフーID決済」はアマゾンIDならアマゾン会員ID、楽天なら楽天の会員IDを使ってユーザーが決済できる決済サービスのことである。
ユーザーがアマゾンや楽天の会員であることが多いため、ECサイトの購入フローの中にアマゾンや楽天にログインするための画面を設け、アマゾンや楽天経由で支払いをしてもらうといった決済手段である。ユーザーとしては、新たにクレジットカード情報を入力する手間が省け、安心、といったメリットがあるため、購入フローにおける離脱防止に役立つ決済手段として最近注目されている。そのため、決済手段に対応したECシステムが増えてきている。

主だった決済手段の内容と注意事項について解説したが、最終的にどの決済手段を選択するかは意見の分かれるところであるが、基本は「クレジットカード」「代金引換」「銀行振込」と考え、付随してその他の決済手段を検討するのが良いであろう。多くの決済手段を用意しておいたほうがユーザーの利便性が上がり、最終購入に至る確率が上がる反面、各決済サービスにかかる固定費がかさんでしまう。売上げとユーザー数の増加の仕方を見ながら、売上げとコストのバランスを考えて決済手段を追加していくスタンスが賢明と言える。

 


 

11.商品撮影

言うまでもなく商品の画像は購入率に大きく影響するため、綿密なプランを立てておくべきである。

商品詳細ページに表示させる商品画像の撮影方法は4つある。

 

1.モデル着用

2.置き撮り

3.トルソー

4.吊るし(ピン留め)
4.吊るし(ピン留め)

 

上記はコストが低い順=撮影時間が短い順に並べている。(※1のモデルのヘアメイク時間は除く)

どの撮影方法が最も購入率が高いかは一概には言えないが、アパレルの場合、「モデル着用」がユーザーが着用したときのシルエットやスタイルをイメージしやすく、購入に結び付きやすいと言われている。

但し、ブランドの世界観や商品のテイストなどによっては、「置き撮り」や「吊るし」も十分スタイリッシュな見せ方になるため、「モデル着用」が一番スタイリッシュな見せ方とは限らない。雑誌「ELLE」のECサイト「ELLE SHOP」は「吊るし」をメインの商品画像として採用している。

 

ELLE SHOP・吊るしの例

shoot1

 

 

立体的なシルエットを表現するのに適した手法である。

 

置き撮りの例

shoot2

 

 

敢えてラフな印象や自然な風合いを表現するのに適している。

 

サイトに登録する商品数が多い場合は、ECサイトの商品撮影専門の業者か、EC専門の運用会社に依頼するのが得策である。カタログやビジュアルの撮影がメインの業者に依頼するとコストが割高になる場合が多い。何故ならば、カタログやビジュアルを撮影するカメラマンは時間をかけてクオリティを重視するスタンスで撮影するのが基本スタンスであるからだ。それに対し、クオリティと効率のバランスを考えて短時間で大量の商品を撮影方法は特殊であり、ECサイトの商品撮影専門の業者か、EC専門の運用会社でないとコストを抑えた対応は難しい。ECサイト用の商品画像には、「1商品が生み出す利益」、つまり、「1商品あたりにかけられるコスト」を意識する必要がある。

とは言っても、コストだけを圧縮できればいいのかと言うとそうではない。ECサイト用の撮影の経験値が豊富で品質の良いカメラマンがいる業者を探すことはもちろんだが、購入率を高めて「1商品が生み出す利益」を上げるための工夫も大切である。

例えば、商品画像でよくあるパターンの基本カット以外に、下記のようなイメージカットや動画を基本カットの撮影時に同時に撮影し、商品詳細ページに表示させることで、余分なコストかけずに購入率を高めることができる。

イメージカットを連続して表示

01 02 03 04 05
 

動画を表示

 

movie


12.商品登録

 

商品撮影と紐付いた作業が商品登録であるが、ECサイトに商品名、商品番号、価格、商品説明、商品画像などの商品データを登録する作業になる。

商品データ登録後に、商品画像を再編集したり、そもそも商品登録作業用に商品画像データを加工、リネームしておく必要があり、商品登録作業と商品撮影は密接な関係がある。そのため、商品登録業者と商品撮影業者は同じ業者にしておくと作業の連携を取りやすくスムースである。

 

また、商品の採寸作業や商品説明の執筆を外部に依頼する場合は、それらの業務も請け負う商品登録・撮影業者もいる。但し、ライターの経歴や得意な執筆分野を確認する必要がある。商品説明の内容も購入率に影響してくるため、アパレル商品に関する知識が豊富なライターに執筆してもらったほうが精度、クオリティーが良いからである。

 


 

13.問合せ対応業務

ユーザーからの問合せ窓口(電話、メール)を用意しておく必要がある。問合せ件数に応じた従量課金で業務を代行する業者もあるため、一般的にはアウトソーシングすることが多い。

但し、業務を委託するにあたり、主に下記の準備作業が必要になる。

 

・ユーザー向けの利用規約や利用ガイドで規定する取決め(商品のお届け時期や返品受付条件、利用可能な決済方法、送料、ポイントの利用ルールなど)を問合せ対応業者と共有しておく。

・商品の配送状況に関する問合せに対応するため、物流業者と問合せ対応業者とで連携してもらうための調整を行う。

 


 

 

14.受注処理/出荷管理

受注処理とは日々、ECシステムにある管理機能の一つ「受注管理」機能を使い、ユーザーからの注文を処理する業務のことである。具体的には、銀行振込決済の注文の場合は振込入金を確認したり、後払い決済の注文の場合には後払い決済システムに注文データをインポートしたりすることである。また、物流会社と連携し、各注文が出荷されているかどうかの管理(出荷管理)を行う。一般的には毎朝数時間をかけてルーチンのオペレーション作業が必要な業務である。スキルが高くないとできない業務でないため、アルバイトをこの業務の担当にしたり、注文件数に応じた料金設定で代行する業者もいるので、アウトソーシングすることも検討しても良いであろう。


 

 

15.物流

ECの物流の具体的な業務を列挙すると下記になる。

受注データの確認

商品のピッキング

納品明細、納品書の同梱

在庫の管理、保管

商品入荷時の検品

商品返品時の検品 発送完了の報告(ブランド側への報告)

発送完了メールの配信(ユーザーに配信)

佐川急便やヤマト運輸などへの商品受け渡し 棚卸し

ECの物流スキームの組立て方には下記の2パターンがある。

1. 店舗や卸先への出荷業務を担っている既存の物流会社にECの物流業務をお願いする。
※既存の物流会社がBtoC・個配に対応している場合

2. 既存の物流会社がBtoC・個配に対応していない場合、アパレルECの物流が得意な物流会社に委託する。

物流会社を選ぶ基準は下記になる。

■アパレルのEC物流の実績が十分あるか
■固定費を低く押さえられるか
■ラッピング作業に対応できるか(ギフトや福袋などの対応)
■WMS(物流管理システム)を利用しているか
■保管スペースの坪単価は高くないか
■物流センターの所在地
■即日出荷に対応しているか

事前に物流会社とすり合わせしておくべき事項は下記の通り。

商品の到着に関するユーザーからの問い合わせが割合として多く発生することが多いため、コールセンターと物流センターとの連携の仕方について

■受注データの受け渡し方法、受け渡し時間について

■商品の検品基準について(商品入荷時とユーザーからの返品の際の検品基準)

■梱包資材のパッケージについて

 


 

16.集客プロモーション企画

ECサイトのローンチに合わせて集客施策も同時にスタートさせるのが賢明である。何故ならば、集客しないことには売上げが上がらないし、売上げが上がる、上がらないに関わらず、サイト運用の固定費がかかってくるため、いち早く売上げを上げて固定費を出来る限り早く回収する準備を進めておくべきであるからだ。

ECに有効な集客手法を分類すると下記のようになる。「ECに有効な集客手法」とは、売上げ(購入)に直接結びつく「ダイレクトマーケティング」を指す。

 

「ECに有効な集客手法」について具体的な説明に入る前に、雑誌や屋外広告について触れておくと、これらのオフラインの広告は売上げを重視するECには不向きである。何故ならば、ユーザーをオフラインからオンラインに誘導しようとしても誘導率が極端に低くなるためである。ECサイトにユーザーを効率的に誘導するにはオンライン(ウェブ媒体)to  オンライン(ECサイト)を基本として考えたほうが良い。

 

【広告】

■ダイレクトマーケティング(直接的な売上獲得を目的とした広告手法)

・リスティング広告
グーグルやヤフーのキーワード検索と連動したテキスト広告
費用形態: クリック課金型(クリックが発生して初めて費用が発生。例. 1クリックあたりの単価: 50円)

・リターゲティング広告

既にサイトを閲覧したことのあるユーザーに絞って、他のウェブサイト上でバナーやテキストの広告を表示する。

費用形態:クリック課金型

 

・商品リスト広告
グーグルやヤフーのキーワード検索と連動した商品画像広告(キーワードに対応して検索結果に商品画像を表示する広告)
費用形態: クリック課金型

・ディスプレイ広告
グーグルやヤフーなどの広告ネットワークを利用し、ターゲットユーザー属性に近いユーザーに絞ってテキストやバナーを表示する広告。
費用形態:クリック課金型

・アフィリエイト広告
ターゲット属性に近しい属性が集まるウェブメディア(情報サイトやブログ)にテキストやバナーを表示する広告

費用形態: 成果報酬型(例. 媒体経由の売上×10%)

 

・Facebook広告

広告を表示させるユーザーのセグメントをユーザーの属性で絞り込んだり、既存ユーザーの外部情報を元に、既存ユーザーと似たFacebook上のユーザーに広告配信をすることができる。広告の表示形式は画像。ECサイトにリンクさせるボタンを設置する以外に、Facebookアカウントの「いいね」を増やすためのボタンを設置することができる。

費用形態: クリック課金型

高い購入率が見込める(高い費用対効果が見込める)広告に出稿したほうがいい訳だが、高い購入率が見込める広告に配信できるユーザー母数が限られくることが多く、ユーザー母数を拡大させるには購入率が高くない広告にも出稿していく必要が出てくる。つまり、購入見込み度が高い「健在ユーザー」をしっかり押さえて確実に売上げを上げつつ、購入見込み度が高くないが母数が多い「潜在ユーザー」にアプローチしていく必要がある。この「潜在ユーザー」と「健在ユーザー」を軸に各広告手法の位置付けを表したのが下記の図になる。

ターゲットユーザーと広告メニューの相関図

ad

サイトローンチ前に準備すべき具体的な内容としては、自社ブランド名の検索ボリュームや商品の特徴などを元に、目指す売上げを達成するための広告手法の組み合わせ、広告予算、広告配信バランスを検討し、売上げと広告コストの予測シュミレーション(目標シュミレーション)を策定することである。

 

それと、広告バナーに使用する画像素材やキャッチコピー、キーワード広告で展開するキーワード、キャッチコピー、広告文なども具体的に企画しておく必要がある。

 

この辺りの企画業務は専門的な知識と経験が必要なため、広告代理店かECサイト運用業者にアウトソーシングすることが一般的である。特に、広告の出稿が開始されて運用が始まると、日々、出稿状況と予算消化額を確認しながら、バナーやキーワードなどのクリエイティブ、予算配分を最適化していく運用実務が継続的に発生するため、社内のスタッフで対応していくのは現実的ではない。


 

17.分析・ウェブ解析

 

運用開始後、定期的に分析を行うことを想定してそのための準備をしておく必要ある。主な準備事項は以下の通り。

 

・分析ツールの選定

分析ツールの例.    Google Analytics(無料)、SHOPNOTE、セールスアナライザー for BI、DECIDE

・分析担当者のアサイン

・分析ツールのECサイトへの実装

・分析指標の検討

・分析ツールの設定

 

どの分析ツールを使うかは、計画する売上規模や分析担当者のスキル、分析をどこまで重視するか、などによって変わってくるが、分析担当者のスキルが高くない場合、まずは無料のGoogle Analyticsを利用するのも手である。無料ツールと言っても、有料のツールと比べて機能が不足していたり分析レベルが低い、という訳ではない。

また、社内に分析に長けた適任者がいない場合、外部の分析プロフェッショナルに業務を委託するのも得策である。何故ならば、分析ツールを使いこなし、具体的な改善施策を導き出すための分析・企画をしていくには経験値と数字を読むセンスが必要になるからである。特に、効果の上がる具体的な改善施策をバリエーション豊富に企画していくには、様々なECサイトを分析し、施策を企画、実行してきた経験値がないとなかなかできない。

 


 

 

18.更新スキーム策定

運用開始直後、定期的にサイト(バナーやインフォメーション、特集ページ、メールマガジンの配信など)を更新していく必要があるため、下記を検討して事前に準備しておく必要がある。特に、サイトローンチ前後はローンチ業務に忙殺されて更新業務のことが手つかずの状態のことが多く、ローンチ後に慌てて更新作業に着手するといったことも多くなりがちである。

・どのコンテンツをどのタイミング、頻度で更新していくか。

・更新担当者のアサイン(または、外部にアウトソーシング)

・素材の受け渡しフロー

・更新作業のフロー

・更新のチェックフロー

 

下記のような更新管理表を使って更新を計画し、管理していくとスムーズである。

update update2

 


第4章 自社ECサイトの構築方法|費用・手順を比較


 

自社ECサイトの構築パターンと費用

自社ECサイトの構築方法には下記のカートシステムのタイプごとに6つのパターンがあるが、どのパターンを選定するのがよいかを決定するためには、「自社ECでの売上規模、売上目標」、「コスト予算(初期費用、月次費用)」、「必要な機能や要件」を考慮する必要がある。

【自社ECサイト構築方法(カートシステムの6タイプ)】
1.ASP(無料):レンタル方式のカートシステム
・事業者の規模:個人事業主
・年商規模:~1億円
・特徴➀:自動的にバージョンアップされる(陳腐化しない)。
・特徴②:カスタマイズができない(独自の機能の追加やシステム的なカスタマイズができない)。
・特徴③:個人でも簡単・スピーディーにECサイトを立ち上げることができる。
・特徴④:定型のデザインテンプレートを使用するため、独自のデザインは不可。
・特徴⑤:自社の業務をシステムにあわせて運用する必要がある。
・初期費用:無料
・月次費用:決済手数料のみ
・代表的な製品例:BASE、STORES

初期費用や月額費用も無料で、簡単・手軽でスピーディーにECサイトを立ち上げられますが、デザインのオリジナリティや機能の充実度は期待できない。

2.ASP(有料):レンタル方式のカートシステム
・事業者の規模:中小企業
・年商規模:~5億円
・特徴➀:自動的にバージョンアップされる(陳腐化しない)。
・特徴②:カスタマイズ不可。
・特徴③:オリジナルデザインでの制作が可能。
・特徴④:機能が充実している。
・特徴⑤:自社の業務をシステムにあわせて運用する必要がある。
・初期費用(カートシステム):数万円程度
・初期費用(オリジナルデザイン):200万円~300万円(デザイン費+コーディング費)
・月次費用(カートシステム):数千円~
・代表的な製品例:メイクショップ、フューチャーショップ

無料ASPと比べてサポート体制や機能が充実。外部ツールと連携した機能(自動接客エンジンやリコメンドエンジン、在庫管理システムとの連携など)も充実している。デザインテンプレートが充実していないため、オリジナルデザインで制作することが多い。

3.オープンソース:一般公開されているプログラム(無料・フリーライセンス)をサーバーにダウンロードして利用。
・事業者の規模:中小~大企業
・年商規模:~5億円
・特徴➀:自動的にバージョンアップされないため、自社でバージョンアップ対応する必要がある。
・特徴②:カスタマイズが可能(デザイン、機能)。
・特徴③:オリジナルデザインでの制作が可能。
・特徴④:機能が充実している。
・特徴⑤:セキュリティ対策が必要。
・特徴⑥:自社の業務に合わせてシステムをカスタマイズすることが可能。
・初期費用(カートシステム):0円
・初期費用(オリジナルデザイン):200万円~300万円(デザイン費+コーディング費)
・月次費用(カートシステム):0円
・月次費用(サーバー、保守メンテナンス費):数万円~
・代表的な製品例:EC-CUBE

ECシステムの内部構造(プログラムコード)が公開されており、プログラムの知識があれば誰でもサイトの機能を追加したりカスタマイズが可能。自社で自由に開発できるメリットがある一方、セキュリティ面でのリスク対応(個人情報の漏洩防止やシステムデータ改ざんの防止)をする必要があります、

4.SaaS(クラウド):Shopifyが代表的な製品。アプリを実装することで機能を追加できる。
・事業者の規模:中小~大企業
・年商規模:~50億円
・特徴➀:自動的にバージョンアップされる(陳腐化しない)。
・特徴②:デザインカスタマイズが可能
・特徴③:アプリを実装することで機能を追加できる。
・特徴④:オリジナルデザインでの制作が可能。
・特徴⑤:デザインテンプレートが充実している。
・特徴⑥:自社の業務をシステムにあわせて運用する必要がある。
・初期費用(カートシステム):0円
・初期費用(デザインテンプレートをカスタマイズ):30万円~
・初期費用(オリジナルデザイン):200万円~300万円(デザイン費+コーディング費)
・月次費用(カートシステム):29ドル~
・月次費用(サーバー):カートシステム費用に含まれる。
・製品例:Shopify

システムが自動バージョンアップされるメリットがあり、さらに世界中の開発会社からリリースされるアプリを実装することで拡張性を発揮できる。アプリを実装することで越境ECにも対応可能。但し、買い物カゴ以降のカスタマイズと管理画面のカスタマイズは不可。

5.パッケージ:ECサイトに必要な機能がパッケージ化されたカートシステム
・事業者の規模:中小~大企業
・年商規模:1億~50億円
・特徴➀:自動的にバージョンアップされないため、自社でバージョンアップ対応する必要がある。
・特徴②:カスタマイズが可能(デザイン、機能)
・特徴③:システム連携するのに有利
・特徴④:コストが高い
・特徴⑤:自社の業務に合わせてシステムをカスタマイズすることが可能。
・初期費用(カートシステム):300万円~
・初期費用(オリジナルデザイン):300万円~500万円(デザイン費+コーディング費)
・月次費用(カートシステム):10万円~
・月次費用(サーバー、保守メンテナンス):15万円~
・製品例:ecbeing、コマース21

機能が充実していることに加え、カスタマイズ性が高いカートシステム。カスタマイズする際のカスタマイズ業者=システムベンダーとなるため、カスタマイズ費用が高額になる傾向があり、システムを開発会社1社にロックされやすいデメリットがある。

6.フルスクラッチ:既成のカートシステムを使わずに、独自でカートシステムを開発する方法
・事業者の規模:大企業
・年商規模:1億~50億円
・特徴➀:自動的にバージョンアップされないため、自社でバージョンアップ対応する必要がある。
・特徴②:カスタマイズが可能(デザイン、機能)
・特徴③:システム連携するのに有利
・特徴④:コストが高額
・特徴⑤:自社の業務に合わせてシステムをカスタマイズすることが可能。
・初期費用(開発費):数千万円~
・初期費用(オリジナルデザイン):300万円~500万円(デザイン費+コーディング費)
・月次費用(サーバー、保守メンテナンス):数十万円~
・製品例:ー

自社の運用や仕様、機能に合わせてシステムをゼロからオリジナルで開発して作り上げる方法。カスタマイズする際のカスタマイズ業者=システムベンダーとなるため、カスタマイズ費用が高額になる傾向があり、システムを開発会社1社にロックされやすいデメリットがある。

 

自社ECサイトの構築手順

1.戦略策定
一度カートシステムを選定してECサイトを構築し始めたら、前に戻ることはできない。戦略がないままカートシステムを選定し、ECサイトを構築してしまって、後からECサイトやシステムの見直しをするケースが後を絶たない。まずはECの戦略を策定した上でサイト構築をするのが重要である。
考察すべき戦略の項目は下記である。

・ポジショニングと差別化:自社ブランドの強み、弱み、競合サイトの特徴を把握した上で、どのような差別化を自社ECサイトで訴求するかを検討。
・コンテンツ、機能、サービスの企画:上記を元に具体的なコンテンツや機能、サービスを検討
・クリエイティブプラン:独自性を発揮するために、どのようなデザインに落とし込むかを企画
・売上計画
・集客プロモーション
・CRM設計:リピート購入を促進するためのアクションを計画

戦略策定をECサイトのコンサルティング会社に依頼するのも手である。

2.仕様概要・機能、必要なページ・要素を検討
トップページや商品詳細ページなどの基本的なページに加え、自社のECサイトではどのようなページがあるとより独自性を発揮できて魅力的なECサイトになるかを検討する。また、必要な機能やECサイトに求める要素についても具体的に検討する。それによって、どのようなカートシステムが自社ECサイトで適しているかが見極められるようになる。投資できるコストが最初から決まっている場合は、コストと将来的な売上目標と照らし合わせてどのカートシステムを選定しておくべきか、システムの乗り換えを想定しておくべきかの判断がつきやすくなる。

3.カートシステム選定
予算と上記2の仕様、機能、必要なページや要素を元にカートシステムを選定する。ECサイト制作会社に構築を依頼する場合は最適なカートシステムを提案してもうのが良いであろう。

4.制作スケジュール作成
スケジュール項目には下記がある。ECサイト制作会社に構築を依頼する場合はスケジュール表の作成を依頼する。

・構成書作成(PC版)
・構成書作成(スマホ版)
・デザイン(PC版)
・デザイン(スマホ版)
・ドメイン設定
・カートシステム契約
・カートシステム設定
・コーディング
・データ登録
・DNS切り替え(リニューアルの場合)
・テスト、検証

5.構成書作成(ワイヤーフレーム作成)
構成書はページごと、PC版、スマホ版ごとに作成し、各ページに挿入する要素(画像やコピー、ボタンなど)とレイアウトを定義する設計図である。この構成企画の段階で要素の漏れがないか、レイアウトは最適化どうかをよく検討して構成書を完成させる必要がある。
ECサイト制作会社に構築を依頼する場合は作成を依頼する。

6.デザイン制作
ステップ5の構成書をベースにして、デザイナーがデザインを制作する。

7.コーディング・プログラミング
デザインをブラウザ上で見える形にするためにソースコードを記述し、実際のウェブページを生成する。

8.撮影(キービジュアル、商品)
メインビジュアルに使用する写真や商品詳細ページに掲載する写真を撮影する。

9.商品データ登録
商品の価格、カテゴリ情報、商品説明文、SKUコード、品番、サイズ情報、展開カラー、商品画像などの商品データを品番ごとに作成し、カートシステムに登録する。それによって商品詳細ページが生成される。

10.サイトチェック・運用テスト

11.サイト公開


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