マーケティング

2019.04.24

試着アプリの登場がファッションECに与える影響

オンラインでのアパレル消費が増える中、スマホを使った周辺サービスも整備が進んでいる。宅配便を活用して家にいながら商品を試すことのできる試着サービスはその代表であるが、今開発が行われているのはスマホ上で試着体験ができる試着アプリだ。

スマホで着せ替えができる試着アプリの登場

まるで着せ替え人形のように、自分に似合う服を感覚的に試すことができるバーチャル試着アプリは、すでにいくつも開発が進んでいる。

アバターを用いたCOORDINATE+(コーディネートプラス)

例えば東芝の仮想試着サービス、COORDINATE+は大手企業がリリースした国内発のビジネスプラットフォームだ。

https://www.toshiba-sol.co.jp/industry/virtual_fitting/contents/coordinate.htm

COORDINATE+は衣類を購入する前に、仮想空間で商品を実際に試着することができるという機能を備えている。店舗設置型で実店舗を訪れた顧客が利用する筐体版と、スマートフォンで使用できるアプリ版の2種類を展開している。

筐体の場合は、鏡に見立てたディスプレイの前に試着者が立ち、商品データを用いてディスプレイ上で仮想的に試着を試すことができる。アプリ版はユーザーを模したアバターに商品データを着せ替えることが可能となっている。

アバターの場合では写真データから作成・保存を行うことができ、側面や背面なども立体的に再現することが可能で、筐体では試すことのできなかった角度からも商品の試着イメージを確認できる。

気に入ったコーディネートはアプリに保存することも可能で、自分に似合うカラー診断、コーディネートアドバイスなどもアプリで受けることができる。

ライクボタンで商品情報の保存や、新着アイテムの通知、カラー診断でユーザーに似合うとみなされた商品のリコメンド機能など、商品購入に必要な情報はあらかたこのアプリから得られるのが魅力の1つとなっている。

AR着せ替えサービスのPictofit(ピクトフィット)

3Dモデルではないものの、ARで使いやすいアプリとして開発が進められ、世界で12万ダウンロードを達成しているのがPictofitだ。

http://www.pictofit.com/

Pictofitもアプリに写真を取り込んで、仮想上の自分のアバターに商品写真の着せ替えを行う試着サービスを提供しているが、特に力を入れているのが使いやすいUIとソーシャル機能だ。

アバターを一度登録すれば、体型データを自動的に計測し、Pictofitに登録されている商品データは自分のアバターのサイズに合うように最適化される。ユーザーはアイテムを選び、数ある商品を次々とスワイプしていくだけで試着を行うことができるのだ。

手持ちのアイテムも画像を取り込むことで、アプリ上のコーディネートに組み込むことが可能で、商品を購入する際の手助けとなる。店舗試着だと家で保管しているアイテムとの兼ね合いを想像で間に合わせるしかないものだが、Pictfitを使えば好きなだけすでに持っているアイテムと新しい商品との相性を直接視覚的に確認することができる。

また、セレクトした商品やコーディネートは友人に気軽にシェアすることが可能だ。アプリ内に専用のメッセンジャー機能も内蔵されているので、Pictofitユーザー同士なら意見交換も気軽に行うことができる。

試着「シェア」アプリとして誕生したfitom(フィットム)

COORDINATE+やPictfitとは異なるアプローチで最近発表されたのが、試着シェアアプリのfitomだ。

https://ecnomikata.com/ecnews/21868/

fitomはシグマクシスとユナイテッドアローズ、博報堂DYメディアパートナーズの3社が共同で進めるプロジェクトだ。fitomはユーザーに直接商品の試着を体験してもらうのではなく、ユーザーの代わりとなる試着者が、その試着画像をリクエストしたユーザーに提供するプラットフォームとなっている。

試着者はスタッフではなくその他ユーザーと同様、一般客として店舗を来訪し、販売員のサポートを受けながら試着画像を撮影する。画像を提供した試着者にはインセンティブとしてポイントが付与され、店舗側もそのデータを収集することで消費者動向の把握に活用する、という仕組みだ。

等身大のリアルな試着感

fitomの魅力は、何と言っても等身大の試着感をスマホから確認できる点だ。これまでオンラインストアが提供していた試着画像は、モデルが着用していたり写りが良すぎるという点から、ユーザーが直接参考にするにはやや不便な側面もあった。

しかしながらfitomを使用すれば、店舗で撮ったリアルな試着画像を閲覧することができるようになるため、オンラインショッピングの大きな手助けとなってくれる。

試着画像の提供にはソーシャル機能も付与されており、試着をリクエストしたユーザー以外にも試着画像は公開される。fitom内で「いいね」を集め、インフルエンサーとして注目を集めるきっかけにもなるだろう。

COORDINATE+やPictfitは自宅で完全に試着を楽しむことができるアプリとしてリリースされているが、fitcomの試着画像サービスは特に店舗での試着に興味はあるが、店舗に行くのが煩わしい、と感じるユーザーに向けて提供されるサービスとなりそうだ。

試着のアプローチは違えど、いずれのアプリもオンライン上での購買を手助けするプラットフォームとしてこれからの活躍が期待されている。

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