【保存版カリキュラム】ECノウハウ
2018.11.30
ECサイト制作・構築の手順
ECサイト制作(Eコマース構築)を初めて経験するファッション・アパレル業界のEC担当者向けに本記事を執筆します。
Eコマース構築にあたっては、ECサイト自体の制作はもちろんですが、付随するビジネスインフラ(物流や受注処理、問い合わせ対応の仕組みなど)も合わせて整備・構築する必要がありますので、その辺りの準備事項についても解説します。
【ECサイト構築の流れ】
ECサイト構築にかかる期間:全工程で3ヶ月~4ヶ月(企画・設計:約1ヶ月、デザイン:約1ヶ月、コーディング・データ登録・インフラ整備:約1.5ヶ月)
1. 戦略企画(競合調査、アセット整理、差別化戦略、集客戦略)
2. コンテンツ企画
3. ECサイト設計(構成企画)
4. クリエイティブプラン(デザインの方向性)策定
5. ECサイト制作の予算を検討
6. ビジュアル画像の準備、撮影
7. ECシステム選定
8. 商品撮影、商品説明文作成、商品データ登録
9. 受注処理業務の準備
10. 問い合わせ対応業務の準備
11. 物流業務の準備
12. 集客運用の準備
1.戦略企画
ECサイトを構築するにあたって、まず初めに取り掛かるべきことは戦略企画になります。戦略企画なしに初めからサイトデザインを考えようとする人が意外に多いですが、闇雲にサイトデザインから着手しても独自性があり、クオリティーが高いECサイトを作ることはできません。
サイト構築前の事前準備として、競合ブランドがどのようなECサイトの展開をしているかをしっかり調査(競合調査)する必要がありますし、自社ブランドの強みを整理・再設定(アセット整理)をする必要もあります。更に、どのようなコンテンツをサイトに組み込むかを企画し、サイトの設計・構成を作成します。その上でようやく初めてデザインに着手する、という進め方が正攻法になります。つまり、戦略に裏付けされたサイト設計とデザインが重要、ということです。
戦略を企画する際、競合調査、アセット整理に加え、集客についての企画もしておくと尚良いでしょう。集客プランによって制作すべきコンテンツやページが異なってくるからです。
但し、これらの戦略を企画するには、Eコマースやマーケティングの知見が必要になるため、自社内にそのような知見をもった人がいない場合、Eコマースのコンサルティング会社やECサイト制作会社に企画を依頼する、というのも手かと思います。
2.コンテンツ企画
従来、ブランドサイトとECサイトは別々になっていることがほとんどでしたが、最近ではブランドサイトとECサイトを統合化して構築することが主流になりつつあります。特に欧米のトップブランドのほとんどが統合型のサイトになっています。ユーザーとしては2つのサイトを使い分ける必要がなく、一つのサイト上でコンテンツも楽しめるし、ショッピングも同時にできたほうが断然に使い勝手が良い、というのがサイト統合化の理由です。
そのため、ECサイトと言ってもブランドサイトとしての役割を担うことになりますので、単純にショッピングコンテンツ(新着商品のコーナーやおすすめ商品のコーナーなど)だけでは不十分ということになり、例えば、ルックブックやコーディネイトコンテンツ、インスタグラム画像などのブランディング効果の高いコンテンツを組み込み、ショッピング機能と連動させる(各コンテンツから商品を購入できるようにする)必要があります。最近だとウェブマガジンさながらのクオリティーの高い記事コンテンツをECサイトに組み込む例も増えてきています。
ルックブックの例
インスタグラムの投稿画像を利用したコンテンツの例
ウェブマガジン(記事コンテンツ)の例
3.ECサイト設計(構成企画)
ECサイトに組み込むコンテンツが決まったらサイトの設計・構成企画に進みます。サイト設計とは必要なページを精査してページリストやサイトマップを作ることで、構成企画とは各ページに組み込む要素を精査し、ページレイアウトを作成することです。これらの作業はEコマースの知見がある人でないとなかなか精度の高いものができないため、社内にそのような知見がある人がいない場合はECサイト制作会社に依頼するのが妥当でしょう。
最近だとトップページだけでなく、商品一覧ページや商品詳細ページにも独自性を凝らしたECサイトも増えてきています。
独自性の高い商品一覧ページの例
4.クリエイティブプラン(デザインの方向性)策定
デザインの方個性をはっきりさせるには、参考サイトや他社のカタログなどを参照しながらイメージに近いデザインを固めていくのが良いでしょう。デザインの方向性がある程度固まってきたら、そのデザインの方向性が得意なデザイナーをアサインすることが重要です。何故ならば、デザイナーには各人が得意なデザインの方向性があるためです。
また、最近のECサイトではビジュアル画像を大きく配置した見せ方が主流になっているため、ビジュアル画像によってサイト全体のデザイン、見え方が左右されます。ビジュアル画像を新たに撮影するのか、既存のビジュアル画像をECサイトに使用するのかも検討する必要があります。
5.ECサイト制作の予算を検討
独自のサイト設計、デザイン、コンテンツを展開し、ブランドの世界観をしっかり表現できるデザイナーをアサインしてECサイトを制作する場合の予算の目安は、デザイン費用、コーディング費用を含めて200万円~300万円、といったところが相場になってくるでしょう(在庫連携やポイント連携などの特殊な機能カスタマイズは含まれません)。※ページ数やコンテンツの種類・ボリューム、機能によって大きく変動します。
ビジュアル画像を新たに撮影する場合は別途、撮影費用がかかってきます。撮影費用は起用するモデルやフォトグラファー、スタイリストなどによって大きく金額が変動します。
6.ビジュアル画像の準備、撮影
ビジュアル画像を新たに撮影する場合、クリエイティブプランに沿った撮影スタッフのキャスティングをすることでクオリティーを高くすることができます。フォトグラファーにしてもスタイリストにしても得意なクリエイティブの方向性があるため、ECサイトのクリエイティブの方向性にマッチしたスタッフ体制で撮影するのがベストです。
クリエイティブプランがしっかり定まっていない場合は、事前にアートディレクターにプランを相談するのが良いでしょう。
7.ECシステム選定
ECシステムの選び方の基準が下記になります。
・店舗との在庫連携やポイント連携をする場合:機能カスタマイズ可能なECパッケージ(EC CUBEやecbeingなど)
・店舗との在庫連携やポイント連携がなく、初期費用・月額費用を抑える場合:ASP(機能カスタマイズが不可)
ASPには初期費用0円~数万円、月額費用が数千円~数万円程度のフューチャーショップやメイクショップ、カラーミーや、海外販売に対応したShopifyなどがあります。
BASEやSOTORESなどの無料システムもありますが、ブランド世界観を表現したり、ブランディング効果の高いコンテンツを組み込むことができないため、それらの無料システムはおすすめできません。
8.商品撮影、商品説明文作成、商品データ登録
商品ページに掲載する商品画像を撮影し、商品の魅力を伝えるための説明文を作成します。また、それらのデータをECシステムのフォーマットに合わせてECシステムに登録します。
商品画像はモデルに着用させて撮影する方法と、モデルには着用させずに撮影台に置いて撮影する「置き撮り」、壁に商品を吊るして撮影する「吊るし撮影」などがあります。最近では、モデル着用の撮影の際に、動画も撮影して静止画と動画の両方を商品ページに掲載するサイトが海外のブランドを中心に増えてきています。
商品の売上を左右する画像になるので、商品撮影が得意なプロカメラマンに、商品撮影に適したスタジオで撮影してもらうのがよいでしょう。また、モデル着用画像を撮影する場合は極力、事前にオーディションをし、実際のモデルの体型を確認しておくのが良いでしょう。コンポジット(サンプル撮影写真)の体型と実際の体型が随分異なる、ということが良くあるからです。
商品のディテールや魅力が十分に伝わる商品説明文を工夫して作成することも重要です。社内のスタッフが商品説明文を書くのも良いですが、プロのライターに依頼してクオリティーの高い説明文を掲載するのも得策です。
9.受注処理業務の準備
受注処理とは、毎日、ECシステムの管理画面から受注情報を確認し、注文ステータスの管理や物流会社への出荷指示をする業務のことを言います。ユーザーからの問い合わせに対して受注情報を確認する作業や物流会社への出荷ステータスを確認する作業も生じますので、問い合わせ対応業務と物流会社と連携した業務が必要になります。
10.問い合わせ対応業務の準備
電話の受電体制とメール対応の体制を用意する必要があります。また、専用電話番号や専用メールアドレス、問い合わせ管理ソフトを手配する必要があります。また、想定される問い合わせ内容を元に、回答マニュアルを作成し、対応スタッフと共有します。様々な問い合わせに備えて細かくルールを作る必要があります(例えば、返金リクエストの場合の返金ポリシーを設定したり、長期不在の場合の送料規定など)。専門的なノウハウが必要になる業務ですので、外部の業者にアウトソーシングするのも得策です。
11.物流業務の準備
在庫の保管や注文データに沿った商品のピッキング作業、梱包作業、送付状の同梱などを行うのが物流業務になります。外部の物流会社にアウトソーシングするのが一般的です。
12.集客運用の準備
Eコマースに適したデジタルの集客施策としては、「リスティング広告」や「リマーケティング広告」、「ディスプレイ広告」、「インスタグラム広告」などがありますが、これらは認知を広げるための広告ではなく、ECの売上を効率的に伸ばすための広告であるため、「運用型広告」と呼ばれています。最低6ヶ月~12ヶ月の運用プランを計画し、CTR(クリック率)やCPO(顧客獲得コスト)、CVR(購入率)などの指標を設定してきめ細かく運用していく必要があります。専門的な運用ノウハウが必要なため、外部の専門会社にアウトソーシングするのが一般的です。
以上がECサイト構築(=ECビジネス構築)における必要な準備事項になりますが、広範囲で多岐に渡る準備アクションが必要になりことがお分かりいただけたかと思います。うまく外注業者を使いながら、社内外の役割分担を明確にし、効率的な運用スキームを組み立てるのが得策です。