【保存版カリキュラム】ECノウハウ

2017.06.23

最新データと取り組み事例から読み解く、アパレル業界のオムニチャネル最前線

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経産省の調べによると、2016年にはアパレル商品の売上全体に占めるEC化率は10.93%にまで上昇。デジタルデバイスの普及によって消費行動が複雑化し、多様化した販売チャネルを一元化するオムニチャネルの動きは、アパレルECにとっての重要な施策として、かつてほどの勢いはないにしても現在も積極的に進められている。最新の取り組みやデータを紹介しながら、アパレル業界におけるオムニチャネルの将来について展望する。

ショールーミングに関する最新の取り組み

あらかじめリアル店舗で商品を品定めし、後にECでとりわけ価格面で有利な条件の元で購入するショールーミングや、逆にネット上で商品をリサーチした上で、リアル店舗で試着し購入するWebルーミングなど、新たな消費行動が一般化してきている。そうした傾向に呼応する形で、これまでも様々な事業モデルが提案されてきた。

最新事例の一つとして挙げられるのが、2017年6月30日に初の路面店として、神宮前にショールーミングのためのフィッティングストアをオープンする「ザ・リラクス(THE RERACS)」だ。店舗内に在庫をストックせず、顧客が試着し気に入った商品は、店頭に設置されたタブレット、もしくは自らのスマートフォンを利用して発注するという、いわゆる米Bonobos型のシステムを採用している。

ショールーミングに特化した簡易的なスペースではなく、こだわりのある空間デザインによってブランドの世界観を体現。これまでのオムニチャネル政策にありがちだった、単にブランドやメーカーにとっての効率を優先した店舗づくりではなく、顧客のショッピング体験にも目配せした、ユーザメリットの高い施策と言えるだろう。

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- THE RERACS

全国の15歳から69歳までの男女を対象に独自に行ったアンケート調査によれば、23.5%がショールーミングの経験があると回答している。他方、Webルーミングを試したことがある人は、全体の26.5%となっている(株式会社ブティックスター調べ)。ショールーム型店舗の設置は、質・量ともにリアル店舗が充実している都市部に顕著な傾向だが、全国レベルでも浸透しつつある。

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カタログより最新、ネット商品試着 - 福井新聞ONLINE

例えば、女性向けカジュアルブランド「axes femme」を全国143店舗で展開する「アイジーエー」では、2016年に本社を置く福井県の自社ビル内に、スタジオを兼ねたフィッティングストアをオープンしている。

店舗に設置された端末で購入するスタイルが流行

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- マルイ「ラクチンきれいシューズ 体験ストア」

オムニチャネル政策として、リアル店舗に設置されたタブレットなどの端末を利用してのEC利用を促進しているショールーミング型の店舗も増えてきている。丸井では、シューズをロイヤルカスタマーのキーアイテムと位置づけ、トレンドと着用感とを兼ね備えたプライベートブランド婦人靴「ラクチンきれいシューズ」の販売を強化。スタッフに声かけすることなく、自由に試着が可能なフィッティングストアを全国に展開した。気に入った商品があれば、店頭に設置された専用タブレットを利用して注文する仕組みだ。

大手百貨店の高島屋でも、地方店舗においてショールーミングストア(ショールームストア)を設置。とくに商品の入手を急がない顧客に対して、店舗スタッフがタブレットを利用して公式オンラインストアでの買い物を勧めるというものだ。オンワードホールディングスと提携し、注文を受けた店舗スタッフはオンワードの在庫を確認。店舗側は在庫リスクを軽減し、顧客は都心の店舗と同様、これまで地方店では供給されにくかった幅広いラインナップから商品を選ぶことができるというメリットがある。

先の調査でも、「アパレルショップの実店舗で買い物をする際、店舗のタブレットを経由して商品を購入したことがありますか。」という問いに対して、5.2%が「ある」と回答している。全国を対象とした調査であることに鑑みれば、これは決して小さな数字ではない。ECとリアル店舗の垣根を取り払おうとする試みは、業界全体で見ると必ずしも成功しているとは言えなくもないが、大手のみならず、中小アパレル企業による地方を含めたオムニチャネル政策が少しずつ実を結び始めているとも言える。ユーザに熱い視線を向けた、さらなる取り組みの創出に期待したいところだ。

ザ・リラクス

http://thereracs.net/

IGA

http://www.iga-group.com/

マルイ

https://www.0101.co.jp/index.html

タカシマヤオンラインストア

http://www.takashimaya.co.jp/shopping/

平成 28 年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)

http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170424001/20170424001-2.pdf

Cover photo by -Pixabay

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