マーケティング

2017.08.02

アパレルECサイト 売上高ランキングとEC市場をめぐる新たな動き

pexels-photo-236907

アパレルECサイト  売上高ランキング

経済産業省発表の「平成28年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によれば、2016年の「衣類・服飾雑貨等」のEC市場規模は1兆5,297億円で、前年比10.5%の拡大となり、依然として物販系分野では最大。また、EC化率は10.93%と、初めて1割を超えた。

全国のアパレル企業のうち、2016年4月から2017年3月までのネット通販の売上高は、以下の表で示される通り。

1位ユニクロユニクロ
2位アダストリア29,100
3位TSIホールディングス25,463
4位ベイクルーズグループ21,600
5位丸井グループ21,331
6位ユナイテッドアローズ20,212
7位ワールド16,900
8位アーバンリサーチ15,000
9位オンワード樫山11,000
10位ジーユー9,000

出典:「日本ネット経済新聞」(2017年06月15日発売号)

なお、楽天市場やAmazon.co.jpなどの大手ECモールはもちろん、ZOZOTOWNやSHOPLIST.com、MAGASEEKのようなアパレル特化型のECモールや、アパレル商品を多く取り扱うものの、その他の商品も販売するベルメゾンネットやディノスオンラインショップ/セシールオンラインショップなどは対象外。ちなみに、ZOZOTOWN、SHOPLIST.com、MAGASEEKの流通額は、それぞれ2,120億円、190億円、150億円となっている。

前年度と比べておよそ30%増となったユニクロ(前年度 32,299)をはじめ、アダストリア(前年度 21,600)が35%、TSIホールディングス(前年度 19,684)が29%、ベイクルーズグループ(前年度 16,400)が31%の売り上げ増となっていて、概ね好調の様子だ。

アパレルEC市場自体は堅調を維持しているが、冒頭で触れた通り、アパレル企業のEC化率は伸び悩んでいる。例えば、同じ物販系分野の「雑貨、家具、インテリア」は、13,500億円の市場規模ながら、EC化率は18.66%。「生活家電、AV 機器、PC・周辺機器等」にいたっては、29.93%となっている。リアル店舗を展開する大手アパレルメーカーがこぞってEC市場での売り上げを伸ばしているというデータがある一方で、オムニチャネル事業をはじめとする店舗回帰の動きがあるのも事実だ。EC化率がほぼ横ばいということが、アパレル企業にとって将来的にどのような意味を持つのか、今後の市場動向を見守りたいところだ。

売上高ランキングからは見えてこないアパレルECの別の側面

cup-2218405_1280

2016年度の大きな動きとして注目したいのが、ネットリユース、とりわけフリマアプリが市場規模を拡大させたことだ。2012年度に誕生したばかりであるにもかかわらず、2016年度の推定市場規模は3,052億円と巨大だ。とりわけ若者世代において、フリマアプリを利用して衣服を購入する傾向が強く、従来からあるネットオークションと比べても、アパレル商品が取引される割合が高い。2017年度以降、フリマアプリ市場規模はさらに拡大すると見込まれている。

そうしたフリマアプリ市場を牽引するのがメルカリだ。4期目となる2016年6月期の売上高は、122億5,600万円。2017年度中には、東京証券取引所の株式上場も噂されている。動画をリアルタイムでストリーミングすることで、出品者が視聴者とコミュケーションを取りながら商品を売買するというライブコマースに早々と参入するなど、活発な動きを見せている。

また、中古アパレル市場の盛り上がりからも目が離せない。やはり目立っているのが、前年比60%以上の大きな伸びを見せたZOZOUSEDを運営するクラウンジュエルだ。売上高は128億7,500万円。アパレルECとして考えるなら、トップ10に入る数字だ。

中古市場の盛り上がりと平行する形で、ファッションレンタルサービスの成長も目覚ましい。例えば、2014年にサービスを開始したairClosetは、2017年の時点で会員数がおよそ10万人、在庫数も10万点を超え、流通総額も37億円に達している。シェアリングエコノミーの波はアパレル業界においても大きな潮流となりつつあり、アパレルECに与える影響は今後ますます大きくなることが予想される。

berlin-1429878_1280

他方、アパレルEC市場の活性化につながるものとして期待されるものの一つが、2016年以降、様々な試みがなされているVR技術だ。VR技術によって表現の幅が広がり、従来にはなかったブランドの世界観を表現することが可能になる。また、VRで店内の様子を忠実に再現したり、非現実的な空間を作り出すことで、リアル店舗とも従来のECとも異なる、新しいショッピング体験を創出することが期待される。

国内では、VR技術を活用した商品の閲覧やショッピングを試験的に導入している事例があるほか、ヘッドマウントディスプレイを装着したまま商品を選んだり、決済したりすることが可能なシステムの開発が進められているところだ。生地の質感や着用感をどう演出するかについても研究が重ねられている。いずれ、VR技術の進歩によって“試着”の精度が上がれば、アパレルECが抱える多くの問題が解決されるはずだ。1日も早いサービスの開始が待たれる。

今後のアパレルEC市場においては、ECモールや大手メーカーだけでなく、CtoCビジネスを含むリユース事業を担う企業も重要なプレーヤーとなってくるはずだ。VR技術の発展など既存のアパレルECにとって有利な話題も多いが、勢力地図が大きく塗り替えられないとも限らない。いずれにしても、今は市場の動きからひと時も目が離せない。

「平成28年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」経済産業省

「日本ネット経済新聞」(2017年06月15日発売号、日本流通産業新聞社)

TOPへ戻る