マーケティング

2019.03.11

ECサイト関係者が注目すべき2019年のファッションテック~その1~

ファッションとテクノロジーが融合したサービス、通称ファッションテックは毎年様々なものが登場する。その傾向は年によって様々だが、2019年はD2C分野におけるファッションテックの活躍が目立つことになりそうだ。

D2CはDirect to Consumer、つまり製造から販売までを一貫して顧客に提供する仕組みだが、既製品ではなく一人一人の好みに合わせたデザインをテクノロジーによって気軽に生成することができるようになったことで、ファッションECサイトにおいても次々とオリジナルの一着を提供するものが増えている。

D2Cという言葉そのものは少し前から使われてきたが、2018年はD2Cのスタートアップが多額の出資を受けた年でもあった。

Unmadeの場合

例えばロンドンのUnmadeはブランド服のカスタマイズによるD2Cサービスを提供しているが、昨年の10月に400万ドルの資金調達に成功したとして注目を集めた。

http://qq4q.biz/av4a

Unmadeが提供するのは、ユーザーが購入した衣服をカスタマイズするサービスで、このテクノロジーを各ファッションブランドへ提供している。Unmadeの提供する共通規格の発注システムにより、製造するカスタム商品のデータが自動的に生成され、ブランドと製造過程における工業機械の連携が容易になる。これまでの既製品では採算に見合わなかった服のデザインのカスタマイズを可能としてくれるのだ。

https://www.unmade.com/

 

ユーザーによるカスタマイズもシンプルな操作で行うことができる。ファッションブランドのウェブサイトへタブレットかスマートフォンでアクセスし、指でドラッグしながら服の模様を微アレンジ調整する。あるいは襟の色やデフォルトの模様をいくつかのパターンから選んで自由にデザインを変更できるため、既製品では妥協せざるを得なかった細かな調整をこのシステムから行えるのが特徴だ。

従来のオーダーメイドと異なるのは、顧客の細かなカスタマイズであってもブランド会社や製造業者に個別の注文対応が発生しない点だ。Unmadeは独自の工場発注管理システムを採用することで、デザインのカスタマイズ微調整に大きなコストが発生しないよう管理することができる。

また商品のオーダーメイド化によって、既製品の大量生産を抑え、環境に配慮したサステイナブルなビジネスの実現にも役立っている。オーダーメイドの場合は実際に売れるものだけを生産することになるため、顧客のニーズに合わない製品が世に出回って廃棄されることもなく、供給が需要を上回ってしまう心配はない。

ラルフローレンとYR LIVEの場合

ラルフローレンの表参道にある旗艦店も、2018年の11月よりカスタマイズサービスの「THE CUSTOM SHOP AT OMOTESANDO」を展開している。このサービスではポロシャツやオックスフォードシャツに好みのパターンや文字、名前などを刺繍することが可能で、ベーシックなポロシャツであっても素材やロゴの色などのパターンを自在に組み替えることができる。

 

https://www.ralphlauren.co.jp/ja/news/the-custom-shop-jp

カスタマイズの自由度が高く、文字を刺繍する場合はフォントの形を選択することも可能になっている。あらかじめ決められたパターンから選択するという制約はあるものの、オリジナルの一枚としての価値を損なうことはない。購入者には自らが手がけたお気に入りの一着を末長く来てもらうことができるだろう。

ラルフローレンのカスタマイズサービスには「YR LIVE(ユアー・ライブ)」が提供するプリント技術が採用されている。このサービスは店舗でタッチパネルをユーザーが操作するだけで服やカバンにオリジナルデザインをプリントできるというもので、テクノロジーによってユーザーとブランドがともに商品を開発する場を設けている点が最大の特徴と言える。

 

https://www.thisisyr.com/jp/yrlive

ブランドが既成のデザインを提示するのではなく、ブランドがデザイン創出の場を提供するというケースは、これからのD2Cを考える上で重要な視点となっていきそうだ。

 

Warby Parkerの場合

ニューヨーク発の「Warby Parker」は、「最もイノベーティブな企業」とも評される気鋭のメガネブランドだ。2018年までに3億ドルもの資金調達に成功しているこのD2Cブランドは、メガネを自宅で試着できるサービスを整えたことが高く評価されている。

 

https://www.nelco.com/ja/warby-parker/

Warby Parkerのサイト上でいくつかの質問に答えると、回答者の嗜好にあったいくつかのメガネが提案され、最大5本まで試着することが可能。選び終えると数日以内に自宅まで届けられ、試着後は不要なものを送料無料で返送できる。

まさに実店舗の眼鏡売り場の試着と購入を自宅にいながらにして体験することができるのだ。

好きなように商品をカスタマイズして個性を発揮できる優位性はソーシャルネットワークに生きるミレニアル世代には高く評価される要素となっている。

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