マーケティング

2017.11.27

手軽さや効率の先にあるもの - 消費者の満足度を高めるためにアパレルECとテクノロジーができること

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テクノロジーによって情報を「最適化」し、買い物をより便利にスムーズにすることを目指すアパレルEC。簡単な端末操作で欲しいものが手軽に買えることで消費者は本当に満足できるのか?消費者がアパレルECに求めるものは、手軽さやスピードだけなのか?

アパレルECの効率性や便利さを向上させてきたテクノロジー

90年代に誕生したアパレルECが急成長を遂げたのは2000年代の終わり頃。以来、現在にいたるまでテクノロジーを活用したさまざまなサービスが世に送り出されてきた。そこでは、一貫して無駄を省き、情報を「最適化」することに主眼がおかれてきたことが指摘できるだろう。

例えば、アパレルECにとって最大の課題の一つと言われるサイズにまつわる諸問題に取り組んだのがオンラインフィッティングサービスだ。2013年8月にMAGASEEK(マガシーク)がスウェーデン発のバーチャル試着サービス「Virtusize(バーチャサイズ)」を国内で初めて導入。商品サイズを手持ちの洋服と比較・確認できることで話題となった。

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ボディースーツで採寸 - ZOZOSUIT

2017年11月にはスタートトゥデイが「ZOZOSUIT」の無料配布を発表。伸縮センサーを内蔵した採寸ボディースーツを着用した上でスマートフォンをかざすと身体の寸法を即座に採寸することが可能だという。おそらく同社が準備していると噂されるオーダーメイドのオリジナル商品販売に合わせてのものであると思われるが、アパレルECが抱えてきたサイズ問題を解決する糸口となることが期待されている。

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顧客対応を最適化 - Flipdesk

Web接客サービスもアパレルECの売り上げ向上に大きく貢献した技術の一つだ。例えば、2014年9月にサービスを開始したFlipdeskは、EC上でリアル店舗のような接客サービスを可能にする販促プラットフォームで、ECサイト訪問者の行動履歴や購買履歴、属性情報に応じて個別にクーポン発行やキャンペーン告知を実施するというもの。2016年の時点で、350社以上の導入実績を誇っている。

人工知能を活用したレコメンドサービスも目立っている。例えば、2014年11月にサービスを開始したアプリ「Sensy(センシー)」は、ユーザの嗜好を学習し、ニーズに合った商品をレコメンドする。過去の購買履歴などをもとに、将来的な需要の予測をすることも視野に入れているという。

支払い方法が多様化したこともアパレルECの利用に拍車をかけた。実に多様なサービスが相次いで登場したが、いまだ記憶に新しいのが2016年に国内でサービスを開始した「Apple Pay(アップルペイ)」だ。Apple(アップル)が提供する同社の端末向けの電子ウォレット機能のことで、2017年には「Yahoo!ショッピング」が導入。スムーズな決済を可能にすることで、アパレルECの売り上げに少なからず貢献している。

アパレルECが置き去りにしてきたもの

上述した諸サービスは、おしなべて手間や無駄を省くことや買い物を効率化することを目的としている。サイト利用者にとってのメリットも大きいため、インターネットを通じてファッションアイテムを購入することのハードルを大幅に引き下げ、アパレルEC利用者の更なる増加につながったことは明らかだ。

ところが、買い物にかかるスピードが速くなり効率化が進めば進むほど、置き去りにされるものがあることもまた事実だ。例えば、オンラインフィッティングサービスやWeb接客サービスがどれほど進化しても、生地感や着心地において消費者を完全に満足させることはできない。また、ブランドの世界観が体現された空間で実際に商品を手にしながら選んだり探し当てたりする喜びに代わる、ECならではのショッピング体験の創出もいまだ「発明」されてはいない。

アパレルECにおけるテクノロジーは、時間をかけず手軽に買い物をしたいというニーズを満たすことにはかなりの成果を上げている。その一方で、実際に商品を購入した消費者が商品をどう感じたか、不満があった場合の対応など、満足度についてはほとんどケアできていないのが現状だ(コスト面を考えれば当然のことだが)。

アパレルECの利用が手軽で便利になればなるほど、塾考する時間が省略されることで買い物に失敗する消費者が増えるに違いない。その対策として、例えば期限付きの無料返品サービスなどアフターサービスを充実させるのもいいかも知れないし、プロフェッショナルな視点からコーディネートの相談や商品選びについてのアドバイスをネット上で行うのもいいだろう。アパレルEC市場が成熟しつつある今こそ、「手軽さ」や「効率化」に盲進する手を少し緩め、消費者が特別な商品との出会い方を創出するためのテクノロジー活用について、考え始めるべきかもしれない。

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