マーケティング

2018.05.18

アパレルECとサブスクリプションサービス – ZOZOTOWNの「おまかせ定期便」が切り開く新しい消費のカタチ

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画像引用元:ZOZOTOWN

ZOZOTOWNが「おまかせ定期便」を開始しておよそ3ヶ月が経過した。経験豊富なスタッフによってスタイリングされたコーディネートを定期的に提供するというもので、サブスクリプション型のサービスの形態をとっている。現状について観察しながら、アパレルECとサブスクリプションサービスの将来について展望する。

 

盛り上がりを見せるサブスクリプション型のサービス

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画像引用元:Spotify

このところ、商品やサービスを利用する期間に応じて対価を支払うという、いわゆるサブスクリプション型のサービスが流行している。代表的なのがNetflixやHuluといった映像ストリーミング配信事業で、月額料金を支払うことで、映画やテレビなどの高画質の映像コンテンツを好きなだけ視聴できる。また、音楽もストリーミング配信で聴く時代となった。とりわけ顕著なのがストックホルムに拠点を置くSpotifyで、2017年12月の時点でアクティブユーザ数が1億5,900万人、有料会員だけでも7,100万人を超え、4月3日にはニューヨーク証券取引所に株式の上場も果たしている。

かつては映像ソフトも、音楽ソフトともに所有する対象であった。それが、ここ10年くらいの間に、物やサービスなどを、その他大勢の人々と共有したり、交換したりしながら利用するという社会的な仕組みが浸透し、支持されるにつれ、所有するものではなくシェアするものとなった。

 

アパレルECにおける従来のサブスクリプションサービス

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画像引用元:Stitch Fix

こうした傾向は、アパレル業界においても顕著になりつつある。なかでもアメリカのアパレルECに革命を起こしたと言われるのがStitch Fixだ。サービス内容は、体の寸法、予算、好みのスタイルなどを登録すると、人工知能やスタイリストが選ぶ、体や好みに合った洋服が5点送られてくるというもの。そのうち、利用者は気に入ったものをだけを手元において、好みでないもの、サイズが合わないものは無料で返品することができる。ちなみに、利用料金は1回あたり20ドル。2011年に創業し、現在のアクティブユーザ数はおよそ220万人。2017年11月には世界最大のベンチャー向け株式市場であるNASDAQへの上場を果たした。

商品の購入にいたった理由や返品したいと思った理由などを利用者が運営側に伝えることで、回を重ねるごとに、より体型や好みに合致した商品が送られてくることになる。サブスクリプション型のサービスであると同時に、個別の利用者に似合うものを提供するという意味で、パーソナライゼーションにフォーカスしている点が大きな特徴といえるだろう。

国内のサブスクリプション型アパレルECとして目立っているのが、ファッションレンタルサービスだ。airClosetやSUSTINA、メチャカリなど、2014年ごろから台頭し始め、最近はサービスを提供する企業も大幅に増えてきた。やはり、Stitch Fixのように、顧客のためにスタイリングし、コーディネートを提案するものもが中心だ。ただ、日常的に身に着ける洋服をレンタルするという考えがなかなか定着しないなどの課題もあるが、利用者に対して定期的に洋服を届けるというサブスクリプション型サービスの存在を国内に広く認知させた功績は大きい。

 

ZOZOTOWNの「おまかせ定期便」の概要とインフルエンサーの動き

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画像引用元:ZOZOTOWN

そんななか、2018年2月15日にスタートしたのが、ZOZOTOWNによる「おまかせ定期便」だ。Stitch Fixなどと同様、洋服の好みや優先的に試したいアイテムなど、簡単なアンケートへの答えにもとづいて、自社内スタッフが利用者のためにスタイリング。5点から10点の新品の洋服を定期的に届けるというものだ。注文履歴なども解析され、それぞれの利用者に最適な商品が選ばれるという仕組みだ。もちろん、採寸ボディスーツ「ZOZOSUIT」の体型計測データも活用される。

定期的に届く商品にはスタイリストによるコメントやコーディネートの参考画像なども添付されていて、利用者は中から気に入った商品だけ購入し、いらないものは無料で返品することができる。商品が届く頻度も、1ヶ月に1度・2ヶ月に1度・3ヶ月に1度から選択可能だ。

これまで国内のアパレルECではあまり目立っていなかったパーソナライゼーションやサブスクリプション型のサービスが、「おまかせ定期便」をきっかけに本格的に浸透するきっかけとなるかもしれない。というのも、サービスの開始から数ヶ月ほど経過したころから、「おまかせ定期便」を実際に試したという人気ブロガーやYoutuberらが一斉にサービスを取り上げるようになってきたからだ。これがインフルエンサーマーケティングによるものなのかどうかは定かではないが、インフルエンサーの影響もあって、SNSでも関連した投稿が目立ってきている。

 

最後に

現状、アパレルECでは、多くの場合、欲しい商品を利用者が探し出したり、選んだりしやすいようにサイトを構築することを目指している。ところが、着用する洋服選びを人任せにしたり、定期的に届くことが当たり前になれば、アパレルECの役目は大きく様変わりすることになる。単純化していうなら、利用者が欲しがっている商品へと誘導するのではなく、利用者が欲しいであろうものを積極的に提示・提案することが求められるわけだ。そうなれば、アパレルECにとって、現在にまして、利用者との長期的で親密な関係性を築くことが重要になるだろう。

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