セミナーレポート

2016.07.08

ナノ・ユニバース: 最先端のEC事業者における最新事例  ~スマホアプリ・オウンドメディアの肝~

2016年2月23日、EC事業者によるEC事業者のための特別カンファレンス「ecbeing カンファレンス 2016」が開催された。講演した企業とテーマは下記の通り。

ecbing

 

■ロッテ: 大手メーカーのEC戦略は売上と顧客満足度の両立にアリ

■タカラトミー: もう一つのメーカーECの成功パターンをご紹介

■ココマイスター: ブランド立ち上げから4年で年商30億の実例 ~熱意と綿密な戦略がカギ~

■ナノ・ユニバース: 最先端のEC事業者における最新事例  ~スマホアプリ・オウンドメディアの肝~

 

ここでは、ナノ・ユニバース・藤田浩之社長(以下、藤田氏)の講演内容についてレビューする。

 

株式会社ナノ・ユニバース 代表取締役社長 藤田 浩之 氏

【講演テーマ】 メディアと化したスマホアプリが戦略の肝!小売の未来とは?

先進的な取り組みでアパレル業界でも注目を浴びる同社の戦略の肝となっているのがスマホアプリとECサイトのメディア化です。他社に先んじて新しい試みを実施している理由は何なのか?ナノ・ユニバースが考える小売の未来に迫ります。

 

まず基本情報として、ナノ・ユニバースのECの取り組み概況は下記になる。

・EC化率38% ECに強いセレクトショップ

・オムニチャネルに早期に取り組み、アパレル企業としてはITに対して先進的な取り組みを行っている。

・オムニチャネル化が既に進んでいるため、独自の考え方や方針に基づく新しい取り組みに着手している。

 

藤田氏が講演の冒頭で説明したのは、同社が考えるアパレルビジネスの全体像についてであるが、この全体像が同社独自のものとなっている。具体的には、“店舗”はもはやアパレルビジネスの要(根幹)ではなく、“PR”、“仕入”、“MD”といった様々なマーケティング活動の中の1要素でしかない、と明言しており、アパレルビジネスの要(根幹)になるのは“インターフェース(スマホ・タブレット)”と“物流システム”になりつつある、と説明している。つまり、従来、アパレル業界ではあらゆるものが“店舗”を中心に考えられていたが、“店舗至上主義”の時代とは打って変わり、顧客接点の中心は“インターフェース(スマホ・タブレット)”に取って代わりつつある、と言っている。売り場は店舗からECに完全に移行しつつある、というのだ。

また、「1役務であったかつての“倉庫”は“物流システム”として進化し、店舗とEC間の在庫連携を担う機能はもちろん、店舗で決済したユーザーに対しても商品を自宅に出荷する機能や商品の裾上げや修理メンテナンスに対応する機能にまで拡張している」と述べている。つまり、“倉庫”は“サービスをアウトプットするためのバックヤードシステム”と化している、と言っているのである。同氏の描くアパレルビジネスの全体像の中では、ビジネスの中心は完全に“インターフェース(スマホ・タブレット)”と“物流システム”であり、“店舗”はもはやサブ的な位置づけの“ショールーム”なのである。

 

藤田氏は上記の考え方を元に、同社の事業戦略を3つのフェーズに分けて戦略と戦術を説明している。

下記がフェーズごとの戦略と戦術である。

 


 

【フェーズⅠ】(現在)

■自社ECサイトのリッチコンテンツ化(メディア化)

自社ECサイトのターゲットを“上位顧客”として位置づけ、質の高いサービス、情報を提供している。

■大型物流センター

店舗とEC間の在庫連携を担う機能、店舗で決済したユーザーに対しても商品を自宅に出荷する機能、商品の裾上げや修理メンテナンスに対応する機能など。

■店舗

・ビーコン(来店者の会員情報・購買情報取得システム)導入によるレベルの高い接客サービス

・ハウスカード プラスチック版を廃止し、スマホアプリ化

■BIツールによるビッグデータ分析(顧客分析、MD分析)

 


 

【フェーズⅡ】

テーマ:ユーザーへの情報と体験の提供

 

■マガジンアプリ(文化・情報の提供)

■チャット接客

■スマレジ・免税システム

■動画コンテンツ

■デジタルサイネージ

 


 

【フェーズⅢ】

テーマ:小売の未来

 

■3Dスキャンによるサイズフィッティング

■越境EC

■新しいセレクトショップのインターフェース開発

 


 

恐らく、全業界を含めた小売り全体の中でも、ITの先進度が高い企業であると言える。将来的に同社はフェーズⅡ、フェーズⅢに進むにつれ、社員のITリテラシーは益々高度化し、全スタッフの中に占めるITスタッフの割合が高まっていくことが予想される。最近、IT先進国である米国のアパレル大手企業が、IT会社の経営幹部を自社の経営幹部に招致して話題になっていたが、まさしくそのような組織体制になっていくのかもしれない。

同社のITの先進性が特に強く感じられたのは、フェーズⅢの「3Dスキャンによるサイズフィッティング」と「新しいセレクトショップのインターフェース開発」である。3Dデータを活用することは業界全体の商品の生産にも大きく影響を与えるほどのインパクトを有している内容であり、とてもITレベルの高い話である。3Dプリンティングの専門家が考えているようなレベルのことを藤田氏は考えているのかもしれない。また、「新しいセレクトショップのインターフェース開発」は、セミナー会場ではイメージCGを投影していたが、顧客接点の根幹を“インターフェース(スマホ・タブレット)”に置いているだけあって、VR(バーチャルリアリティ)の中で情報や接客を提供していく模様が描き出されていたのは圧巻であった。

 

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