マーケティング

2018.03.08

サイズ問題への取り組みとともに成熟するアパレルEC市場

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ZOZOSUITが登場したことで、アパレルEC業界はますますサイズや試着の問題に敏感になってきているようだ。近年注目を集めるオンライン試着サービスやファッションレンタルサービスなどを取り上げ、サイズや試着に関する問題の現状について解説する。

 

サイズ問題と格闘してきたアパレルECと、実はそれほど執着してこなかった利用者

アパレルECの歴史は、サイズの問題との格闘の歴史であったと言っていいだろう。商品の購入前に試着ができないことから、アパレルECは、消費者が思うようなサイズを手にできるよう腐心してきた。各社さまざまな方法を提案していて、相応に成果を得ているものの、いまだリアル店舗に代わる決定的な方法が考え出されるにはいたっていない。ただし、それにはアパレルECを利用する消費者の側が、実はそれほどサイズのことを重視してこなかったことが関係している。

神奈川県が実施したアンケートによると、インターネットで洋服を購入した人のうち、半数以上に当たる54.5%が「サイズが合わなかった」と回答している。にもかかわらず、そのうち購入した洋服を返品ないしは交換したことがあると答えたのはおよそ4割にとどまっている。サイズが合わないとわかっても、半数以上の人が返品・交換せずにそのまま着用している、ないしは収納・処分してしまっていることになる。「自宅で試着、気軽に返品」を謳い文句に、積極的に無料でのサイズ交換を実施しているロコンド(CEO:田中裕輔)でも返品率は30%前後だという。返品が面倒という人もかなりいると思うが、アパレルECの継続的かつ積極的な利用者の中には、多少のサイズ不一致を気にしていない、ないしは気にしなくてすむ商品を中心に購入しているという人の割合も多いはずだ。少なくとも、サイズにシビアな利用者は少数派と言っていいだろう。

 

オンライン試着サービスの成熟とZOZOSUITのインパクト

どちらかというとクールな消費者をよそに、テクノロジーによってサイズ問題を解消しようとする動きがますます活発になってきた。例えば、スウェーデンに拠点を置くオンライン試着サービスを展開する「Virtusize(バーチャサイズ)」は、2013年に「MAGASEEK(マガシーク)が導入したのを皮切りに、着実に普及してきている。商品サイズを手持ちの洋服と比較・確認することでより適切なサイズを選び出すというユニークなもので、現在ではマルイのファッション通販「マルイウェブチャネル」や大手リサイクルショップなどでも本格導入されている。

スタートトゥデイ(代表取締役社長:前澤友作)が2017年の11月に発表したZOZOSUITは、これまで試着できないことを理由にアパレルECを利用してこなかった人々の関心を少なからず引き寄せたに違いない。サイズがぴったり合うことが当たり前になってくれば、従来からのアパレルEC利用者にとってもサイズがより重要な事柄として認識されることになり、今後はサイズが合わないことを忌避する傾向も強まってくるだろう。そうなれば、消費者のボディサイズに合った商品を提供できないアパレルECは、抜本的な対策を迫られることになるかもしれない。

 

試着サービスとしてのファッションレンタルの将来性

試着という視点からもう一つ気になるのが、「AirCloset」「EDIST.CLOSET」「SUSTINA」などに代表されるファッションレンタルサービスの存在だ。2014年ごろから少しずつ目立ち始めるようになったサブスクリプション型モデルのビジネスで、このところサービスを提供する企業の数も増えてきている。レンタルであれば、サイズが合わなかった場合は交換すれば済むというメリットがある。

ところが、株式会社テスティーが若年層を対象に行った調査によると、男性では半数以上、女性では7割以上がファッションレンタルサービスの存在を知っているにもかかわらず、実際に利用したことがあると回答したのは男性・女性ともに1割にも満たないことがわかった。ファッションレンタルサービスは、認知度がかなり高い反面、利用率は周囲の想像よりも低いことが浮き彫りとなったかたちだ。

とはいえ、実際に試着してみて気に入れば購入するという、ロコンド型のサービスの延長として捉えるなら、上記のようなファッションレンタルサービスは、エコなシステムやミニマルライフスタイルを支えるサービスとしてよりも、試着サービスとしての将来性があるかもしれない。実際、ストライプインターナショナル(代表取締役社長:石川康晴)が手がける「メチャカリ」のように、新品のみを提供しているサービスもあり、レンタルした商品をそのまま購入するケースも少なくないという。

 

最後に

オンライン試着サービスやファッションレンタルサービスが定着してきた状況下でZOZOSUITが登場したことは、おそらく偶然ではないであろう。サイズに関心が集まってきたことは、アパレルEC市場がそれだけ成熟してきたことを意味し、必然的な流れだったと言える。今後、サイズ問題が解消へと向かうにつれて、アパレルECの周辺で大きな潮流の変化がありそうだ。

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