マーケティング

2018.09.14

Uniqlo IQがEコマースにもたらす影響とは

もはや既存の小売店舗を時代錯誤としてしまうほどに進化したと言われるEコマースだが、実のところEC化の勢いは安定期に入りつつある。

それはもちろんECが時代にそぐわないという話ではなく、ECはむしろ実店舗との差別化という意味で存在感を大きくさせて来たということで、大手ECサイトの動きからもみられるように実店舗への注目を示すムーブメントもみられつつある。

例えばECサイトの代表格であるAmazon(アマゾン)は、Amazon Goという名前で無人コンビニをオープンしたり、Amazon booksに至っては有人の本屋である。ECと実店舗の相乗効果で、さらに大きな市場を獲得するのがアマゾンの戦略というわけだ。

日本においてECと実店舗が融合した例として、Amazonのように資本力を背景に大きな取り組みを行っているUniqlo(ユニクロ)があげられる。

 

独自AI搭載のUniqlo IQ

ユニクロは「Uniqlo IQ」と呼ばれるスマートフォン向けサービスを2018年7月より一般向けにリリースしたが、これは主に実店舗での買い物をサポートするためのチャットボットの一種だ。

https://www.uniqlo.com/jp/iq/

チャットボットといえばWebサイトに設置し、決められたテンプレートを配信したり、コールセンター代わりによくある質問に対して自動で回答を行う便利なシステムなのだが、Uniqlo IQの場合は独自に開発したAIを利用し、アプリケーションの中で新作の紹介やコーディネート例など、消費者のショッピングを全面的にサポートしてくれる対応力が最大の特徴だ。

 

また、商品検索機能をユニクロ公式アプリと併用することで、アバウトな検索でも商品をチェックすることができる。例えばトレンドワードをIQに伝えることで、そのワードから具体的なキーワードを提示。そこからニーズにあった商品を提案してくれるのである。

商品はもちろんそのままオンラインショッピングで購入することができ、自宅への配送と店舗受け取りを選ぶこともできる。商品購入までたどり着けば、あとは普段のECと同様である。

店舗内でのサポートも充実

Uniqlo IQ独自の機能として、もう一つ目玉となるものが搭載されている。それはユニクロ店舗内での買い物中、要望に応じて商品検索や手に取った商品のコーディネート例、在庫確認も行えてしまうという点だ。

これまで店舗のことは店舗スタッフに直接質問する必要があったが、Uniqlo IQの場合はバーコードをスマホでスキャンするだけであらゆる機能を呼び出して活用することができるため、もはや店舗においても人間のスタッフは必要がなくなるのである。

ユニクロの店舗はまだレジまでは無人化されていないものの、近いうちに完全無人の店舗が近くに誕生し、コンビニのように活用できる時代が来ることは想像に難くないだろう。

店舗のスマート化がECにもたらすメリット

Uniqlo IQのように店舗でもECでも活用できるサービスが普及すれば、店舗とEコマースの境界線はよりぼやけたものとなっていくだろう。どちらの購入方法においても人間がほとんど介在しないため、ユーザーにとってもその購入体験にも差が生まれにくくなるためだ。

逆を言えば、実店舗での購入体験がECに近づいたことで、よりECが消費者にとって身近になり、その普及率やニーズそのものにも大きな影響を与えることになるだろう。これまでECをあまり利用しなかった人であっても、EC的な買い物が時実店舗に普及することでその利便性の高さが気に入り、インターネット上での買い物も増えるようになる可能性があるためだ。

あるいはECに実店舗で体験できる立体的な購入体験が求められるようになるかもしれない。実店舗での購入体験の最大の特徴は、商品に実際に触れたりできるインタラクティブな体験の場が用意されていることだ。

あるいは店舗の雰囲気を感じ取ることで商品の販売促進につながったり、企業や商品への理解を深めるきっかけに繋がるため、リピーターや熱心なファンの獲得も期待できるのである。

また、視覚的に商品を認知する機会があるのも実店舗の特徴である。Uniqlo IQの場合は確かにアバウトなキーワードから魅力的な商品を見つけることができるが、「何か買いたい」という主体的な気持ちがなければ購入につなげることはできない。

実店舗の場合はフラッと立ち寄った時でも自動的に新商品やセール商品が鹿に飛び込んでくるため、本来買う予定ではなかった商品にも購入される機会を設けることができるのである。

兼ねてからECの弱点はそのような消費者の主体性への依存と言われているものが、実店舗の最大の強みでもあるのだ。

実店舗は無くならないし、ECも無くならない

テクノロジーの進歩により、実店舗にもEコマースにも新しいサービスが導入され、自然と二つの購入方法に違いがなくなってきているのが現在の状況である。Uniqlo IQのようなサービスは日本中・世界中に店舗を持つ大企業だからこそなせる技であるが、そこで提供されるシステムには中小規模でも参考となる要素がいくつも隠れていると考えられる

よりEコマースが身近になっていくこれからの時代、実際に商品を手に取れる場所や、店舗受け取りに見られるように商品受け取りの場所の多様化のように、売り手と買い手の中間地点を現実世界にいくつも設置できるようなサービスを提供できることが重要になってくると言えるのではないか。

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