マーケティング

2017.11.13

画像で見つけて画像で選ぶ - アパレルECにおけるビジュアルコマースの魅力と限界

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コーデ写真などの画像とアパレルECとを直結させる「ビジュアルコマース」。商品画像を見比べながらお目当てのアイテムを直感的に探せるとあって人気を集めている。例えば、Instagaramで欲しいものを見つけて、同じものや似たものを探して買うなど、ビジュアルを起点とするショッピングのスタイルについて考える。

ファッションの分野におけるテキストによる商品探しの限界

ネット上には、魅力的な海外スナップや、SNS上の「おしゃれな」コーディネート画像が大量に出回っている。それを見て、誰かが着用しているアイテムが気になり、同じようなものを求めてECサイトを探し回ったことがある人も多いはずだ。

そんなとき、従来なら例えば「ニット」「七分袖」「黒」という具合に、キーワードで検索するのが普通であった。つまり、消費者は視覚的に得た情報を、いったん文字情報に置き換えて商品を探す必要があったわけだ。

ところが、ことにサイズや色だけでなく質感や素材など、実に多くの要素によって成り立つファッションアイテムに関しては、画像がテキストへ変換される過程において、かなりの量の情報がこぼれ落ちてしまうものだ。実際、デジタルデバイスの利用にたけた人であっても、写真で見つけた商品と同じものを見つけ出すのは容易なことではない。

AIの活用で“画像を画像で探す”ことが可能に

近年、写真共有アプリが普及したことに伴い、画像から消費を喚起されるケースは増える一方だ。Instagramでたまたま見つけたアイテムを探すために、ネット検索に多くの時間を費やしている消費者が少なくないようだ。

仮に欲しい商品がはっきりと決まっている場合、具体的なブランド名と商品名が分かっていれば、複合検索で特定の商品を探し当てることはそれほど難しくない。これに対して、欲しい商品を画像で見つけた場合は、お目当ての商品を見つけるためのハードルが格段に高くなってしまう。画像が契機となるような消費のあり方に適用した施策が、アパレルECには求められていると言えるだろう。

株式会社VASILY(代表取締役:金山裕樹)が提供する「SNAP by IQON」は、そうしたニーズに応えようとしたサービスの一つ。モデルを始めとする60人の女性人気インスタグラマーと契約し、彼女たちが投稿したInstagramのコーデ写真をサイト内に移植。画像内に登場するアイテムと似た商品を提案するというものだ。

「SNAP by IQON」では同社が開発したディープラーニングによる画像解析エンジンを採用。コーデ写真からアイテムを検出・抽出し、提携するアパレルECサイト(その数およそ200)が取り扱う約100万点にも及ぶ商品の中から最適なものを選び出して、消費者に提案する仕組みだ。

 

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各コーデ写真ごとに3から4つのアイテムを取り上げ、それぞれ3つを目安に商品を提案(さらに表示することもできる)。ブランド名や価格(セール情報も含めて)も一覧できるようになっている。それぞれの商品からは各ECサイトへとリンクが貼られているため、気に入ったアイテムがあればすぐに購入することが可能だ。

もちろん商品を選出する精度については評価が分かれるところだろうが、個人的にはまずまずとの印象を受ける。提案される商品はいずれもポイントを捉えていて、ピンとくる消費者も多いに違いない。また、提案商品数がさしあたって3つに絞られているというのも選びやすく、価格も数万円、1万円前後、プチプラという具合にバランスが考慮されているように見受けられる。サービスのプロモーションはあまり実施されていないにもかかわらず、2017年の3月のリリース以来、利用者数は順調に伸びてきているという。将来的にはアプリ化も検討されているようだ。

ビジュアルコマースは消費者を満足させることができるのか?

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スナップを使ってニットコーデを提案 - STYLEHAUS

商品画像を見比べながら気に入ったものを探す方法は、消費者にとってテキスト入力の手間を不要にするだけでなく、より直感的な商品選びを可能にする。アパレルの分野ではとりわけ視覚情報を偏重する傾向があり、アパレルECサイトがによるAIを利用してた画像による商品レコメンデーションがかなりの成果を上げている。SNSやスナップ写真を引用し、コーデに使用されているアイテムと外見上の類似商品を提案するキュレーションメディアが流行しているのも同じ理由だ。

ところが、こうしたビジュアルに傾倒した商品プロモーションのあり方には、不安が残るのも事実だ。なぜなら、画像とアパレルECとを直結させる「ビジュアルコマース」と呼ばれるビジネス形態では、従来のECが抱えてきた次のような弱点がそのまま継承されるからだ。ビジュアルコマースにおいて、消費者が直感的・衝動的に商品を選んだり購入したりできるのは、雰囲気や第一印象が重視されるからに他ならない。つまり、着心地や質感、素材はもちろん、色やサイズにいたるまで、アパレル商品にとって重要な要素がむしろより曖昧に取り扱われてしまう。とりわけ画像編集機能を備えるInstagramの場合、そうした傾向はとくに顕著だ。ビジュアルが美しく修正されていればいるほど、実際に商品を手にした消費者が幻滅してしまうリスクは必然的に高くなる。

インターネットというメディアの特質上、アパレルECにおいてビジュアルが重視されるのは必然的な流れだが、ビジュアルコマースは消費者に対し、サイズや着心地などを含む商品の情報を伝えきることはできない。アパレルECが抱える積年の課題を解決するには、さらに新たなテクノロジーの登場が待たれる。

 

VASILY

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STYLEHAUS

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