マーケティング

2019.09.26

シューズ専門のECが成長を続けている理由

“ファッションEC”と一言で言っても、取り扱うアイテムによって商品の販売方法やターゲットが異なってくる。特に靴は消費者の好みや身体へのフィット感が大きく問われる商品となっているが、最近はECサイトでの靴の消費が増加傾向にあるという。

増加傾向にあるEC市場の靴消費

WebマガジンのECzineが公開している記事、“「30代の約4割が靴を「ECサイト」で購入【ジャストシステム調査】”」によると、2013年から2018年の5年で、週に3日以上何らかのECサイトを利用しているユーザーは9.6%から21.6%に増加しているという。

これが若年層のみの数字であればそう驚くことではないかもしれないが、調査対象となっているのは15歳~69歳の男女1,100名だ。

https://eczine.jp/news/detail/6224

オンラインで靴を購入する場合、Amazonや楽天といった生活用品を軸に揃えるショッピングモール型ECの利用が最も多く、靴をECで購入した人のうちの49.5%を占める。一方トレンド性の強いファッションアイテムを扱うZOZOTOWNなどのサイトでは、シューズ消費は14.4%にとどまっているという。

このことからもシューズECは、トレンド消費よりも消耗品・生活必需品消費に需要がある分野と言えるだろう。

近い将来に1700億円を超える市場を形成する可能性も

ファッション業界紙のフットウェア・プレス(FW)に掲載されている記事「靴EC市場のこれから」では、シューズEC市場が近いうちに急激に拡大していく可能性について言及されている。

http://www.f-works.com/fwp/fwpbn/17-10/pick2.html

この記事によれば、日本のシューズ販売最大手のABCマートは、2017年2月期においてEC売上のみで70億円を記録している。

そしてABCマートは自社サイトだけでなく、楽天やアマゾンへのモール出品やZOZOTOWNへの出品も行い、オムニチャネル化を進めてさらなるシェアの拡大に取り組んでいる。自社ECサイト以外の外部モールのユーザーにアプローチするのが狙いだ。

2022年には、日本の靴市場のうち16%はECがシェアを占めることになり、日本円にして1740億円の市場規模となる、という試算も立てられている。

経産省の調査によると、2018年時点でファッションECの市場規模は1.7兆円を超えており、毎年1000億円以上の増加が見られている。この推移が2022年まで続けば市場規模は2.1兆円を超えるが、この額と比較してもシューズECの市場規模は決して小さくはない。

参考:平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査(経産省)

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/H30_hokokusho_new.pdf

シューズ専門ECの「ロコンド」

そういったシューズECのニーズに早くから目をつけ、専門的なサービスと商品で顧客にアプローチする例も見かけるようになってきた。

シューズ専門ECサイトの「ロコンド」は、2011年にスタートした人気オンラインショップである。

https://www.locondo.jp/

ショップの常時取り扱い商品数は数千にものぼり、配送サービスも、ポスト投函便や5,400円以上の購入で送料分がポイント還元になるなど、大手ECモールに負けない充実したサービス内容となっている。最短で当日夜に到着する配送スピードや、自宅で試着し、サイズ交換や返品が無料で行えるのも根強い人気を支えるサービスの1つだ。

また、ビジネスシューズやシューケア用品の取り扱いがあるのもロコンドの特徴である。大抵のファッションECでは、需要の大きいレディース商品に重点が置かれることが多いのだが、ここでは商品ラインナップにレディース・メンズで偏りがない。

 

男性ユーザーからも支持を集めているのは、ロコンドの大きな強みと言えるだろう。

Amazonが買収した「Zappos(ザッポス)」

海外の例では、ラスベガスに本拠地を置くZapposが挙げられる。

1999年にサンフランシスコで誕生し、2009年にAmazonによって約1000億円で買収されたこの企業は、今日でも顧客の高いリピート率を誇るシューズECとして、アメリカでは大きな支持を獲得している。

ポートの即応性の高さなどから、口コミによる新規顧客の獲得が効率的に行われてきた経緯について紹介されている。

全米注目のザッポスに行ってみたら予想以上だった|顧客・社員に愛されるネット靴店の「企業文化」への徹底したこだわり

顧客の感動体験を、靴の販売を通じて提供しているというZapposのポリシーは、今の日本で耳にすれば、それほど特別な付加価値であるとは一見思えない。

ただ、アメリカという広大な大陸で送料無料、翌日配送を実現している点は、日本よりも高い価値を持つ。置き引きや紛失が相次ぎ、決して優れているとは言い難いアメリカの流通事情を考慮すると、これだけのサービスを全ての顧客に提供し、カスタマーサポートの質も最高レベルであるとなれば、リピーターが定着するのも頷ける。

そしてZapposもまた、トレンド商品ではなく普段使いに合いそうな、ライフスタイルを意識した商品ラインナップを展開している。

消耗品としてのシューズを求めているユーザーにとって、いつでも自分にピッタリのサイズを揃え、なおかつ迅速に届けてくれるZapposのようなECサイトは重宝されるのだ。

オンラインショッピングが生活に定着していく中、ユーザーニーズも多様化を遂げている。特に生活必需品や消耗品を販売したい業者へ追い風が吹いていることが、シューズEC消費の拡大から伺えそうだ。

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