事例にみる優秀サイトのポイント
2018.01.22
機能性を伝えるコツは「比喩」にあり、高い機能性のビジネスウェア「Ministry of Supply」
Ministry of Supplyはスポーツができるくらいの快適性、ストレッチ性を備えたビジネスウェアを販売するブランドだ。「Radically engineered dress clothes」(徹底的に設計した服)をスローガンに挙げている。2012年米国ボストンにて設立。
ビジネスウェアの機能性の高さもさることながら、その売り方も非常に「上手い」と思わせられる。これまで合計880万ドル以上の資金調達に成功しており、日本でも知名度が高まりつつあるブランドだ。
創業の軌跡
Ministry of Supplyの創業者Aman Advani、 Kit Hickey、 Kevin Rustagi、 Gihan AmarasiriwardenaらはMITで出会った。彼らはみなビジネスパーソンや研究者として多忙な生活を送っていた。またプライベートではランニング、スキー、自転車などアクティブスポーツ好きでもあった。
そんな彼らはあるギャップに気付いた。スポーツウェアでは速乾性の素材などイノベーションが取り入れられている。一方、ビジネスシーンで着るスーツやシャツなどのビジネスウェアはどうだろうか。数十年間進歩がない。
カッターシャツは汗でべとべとになるし、すぐにシミができる。そこで、スポーツウェアで採用されている機能性の高い素材をそのままビジネスシーンで着るカッターシャツに取り入れると良いのではと考えたのがMinistry Of Supplyの始まりである。
Kickstarterでキャンペーンを立てて支援金を募ったところ、目標額3万ドルを大きく上回る42万9276ドルを調達することに成功した。
一つの商品に磨きをかけて支持を集めた
Ministry Of SupplyはNASAの宇宙服と同様の素材「フェイズチェンジマテリアル」を取り入れた「Apollo」という名前のカッターシャツを開発。Apolloとはあの宇宙船アポロから取った名前だ。
「Apollo」は①体温調整②湿度調整③防臭④柔軟性の4つの機能性を備えている。Ministry Of Supplyはユーザーテストを繰り返して機能を改良し、磨きに磨きをかけた商品で勝負。
ただし、Ministry Of Supplyはただ単に「機能性の高さ」を売り出してもなかなか消費者の興味を引くことはできないことを熟知していた。カッターシャツの機能性の高さを直感的に伝えるような工夫をした。
Kickstarter Ministry Of Supply
上記はKickstarterのキャンペーンのキャッチイメージだ。将来のビジネスウェアというキャッチコピーと共にテクノロジー感がビンビン伝わってくる。
Kickstarter Ministry Of Supply
KickStarterの動画では宇宙服と同様の素材「フェイズチェンジマテリアル」を採用したことを伝えている。
商品の機能性の高さを伝えるコツは「比喩」と「動き」にあり
Ministry Of SupplyはECサイトでも服の機能性の高さを伝えることに注力している。そのコツは「比喩」と「動き」にあるだろう。実際の商品ページを見ていこう。
Ministry Of Supply創業当初の主力商品のカッターシャツApolloは現在バージョン3。価格は115ドルだ。普通のカッターシャツに比べると安くはない。しかし、その価格でも納得して購入する人が絶えない。その理由は機能性の高さに加え、その機能性の高さを「比喩」で上手く伝えられているからだ。
360度に伸びるピケ素材を使用することで自由に動き回れる。右にはわかりやすいようにピケ素材を並べている。
コットンの14倍通気性に優れた素材「フェイズチェンジマテリアル」を採用。右の「蒸気」でその通気性の高さを伝えている。
アイロンが不要なことをゴミ箱に入ったアイロンで伝えている。テキストに頼るのではなく比喩イメージを使うことでApolloの機能性を直感的に理解できるようにしているのだ。
Ministry Of Supplyはスーツも販売している。価格440ドル。
普通のスーツを販売しているECサイトでモデルがジャンプしているイメージはめったにお目にかかれない。しかし、Ministry Of Supplyは柔軟性の高さを訴求するためにジャンプしているイメージを採用。
スーツに皺がいかないことを伝えるために、スーツケースにスーツを出し入れするループ動画で伝えている。
洗濯機で選択可能なスーツ。洗濯機とスーツを並べることで直感的に理解できるようにしている。
高評価なレビューの数々もMinistry Of Supplyの武器となっている。
「真夏に撮影で黒のスーツをきなければならなかったんだ。普通なら汗でべたべたになるよね。でもMinistry Of Supplyのスーツは違ったんだ。汗でべたべたにならずにすごく快適だった」
Ministry Of SupplyのECサイトにはこのようなレビューが掲載されており、強力に購入の後押しをする。
Ministry Of Supplyは創業から2年間は話題性あるカッターシャツ「Apollo」一点を売り出して着実に支持を獲得していった。徐々にスーツやソックスなどにラインアップを拡大させていった。
しかし、過去から現在まで一貫して変わらないMinistry Of Supplyの強みとは高い機能性とその機能性を伝える売り方のコンビネーションだ。どちらが欠けてもMinistry Of Supplyは成功し得なかっただろう。