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2017.12.27

季節に合わせた服はリリースしない、製造原価は公開する、非常識なファッションブランド『Everlane』のすごさ

ファッションブランド『Everlane』。日本でも知名度が出てきており、ご存知の方もいるかもしれない。

EverlaneはECサイトに商品の服の製造原価を表示していることで有名な米国のファッションブランドだ。
2010年設立以降、消費者の圧倒的な支持を得て2013年1200万ドル(約14億4000万円)、2015年は5000万ドル(約60億円)、2016年は1億ドル(120億円)の売上をあげたと言われている。

現在、Web上に出回っているEverlaneに関する記事は前述の透明性ある製造原価表示(Transparent pricing)へ言及した記事がほとんど。

確かに製造原価表示はEverlaneの最大の特徴である。しかし、それだけではEverlaneの「持続的な」成長を説明しきれないだろう。

本稿ではEverlaneが消費者から継続的に支持を得ているその本質は何か見ていきたい。

製造原価を公開し、消費者からの信頼を得ている

前述のようにEverlaneのECサイトではすべての商品に製造原価とその内訳が表示されている。

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たとえば、カシミアのセーター販売価格150ドル(約1万8000円)の製造原価は50ドル(約6000円)内訳【素材30.54ドル、労働コスト15.85ドル、関税1.90ドル、輸送費0.49ドル】

セーターはEverlaneだと150ドル(約1万8000円)で販売、従来の小売だと250ドル(約3万円)で販売、両者の販売価格が比較表示されている。

また、セーターはどの工場で製造されているのか、その工場で製造することになった経緯が記載されている。

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Everlaneはこれら透明性ある製造原価表示、製造工場明記のインパクトが強く、多くの記事で取り上げられている。

しかし、他社が製造原価表示だけ真似したところで継続して顧客の支持を得ることはできないだろう。

Everlaneから参考にすべきは製造原価表示という表面的なことではないはずだ。

それよりも、消費者からEverlaneが支持されている本質的な理由を知るべきではないだろうか。そのためにも、Everlaneの創業から現在に至るまでの軌跡を知る必要があるだろう。

製造原価表示の原点は顧客視点から生まれた

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Business of fashion

Everlane創業者のMichael Preysman氏はカーネギーメロン大学でコンピューター工学と経済学を専攻。2007年に卒業後はプライベートエクイティで働き始めた。そこで、ファッション小売の企業支援に携わるうちに小売のビジネスモデルが破綻していると感じていた。

消費者はもはやブランド名だけで商品を購入しなくなっている。しかし、原価の何倍、時には10倍もの価格で商品を販売し続けるファッションブランドたち。Michael 氏は何か間違っていると感じていた。

Michael氏はこのような誠実でないやり方に嫌悪感を抱いていたのだ。そこで、ECサイトで消費者に良質な服を水増しなしの価格で販売するファッションブランド設立を思い立った。これがEverlaneの原点だ。しかし、消費者に対して良質な服であること、価格の水増しをしていないことをどのように説明すれば良いのか。

そこで思いついたのが服の製造原価表示と服が製造される製造工場の明記である。

Everlaneは製造の過程を包み隠さず公開することで透明性のある信頼できるブランドとして消費者から認知されるようになった。

インターネットの登場により消費者は商品の比較検討が容易となり、消費者はより賢くなっている。実質的な価値のないものに対してお金を払いたくない、そんな消費傾向は増している。Everlaneはそのような消費者の支持を集めることに成功したのだ。

一貫した透明性へのこだわりは強力なブランディングとなる

Everlaneの透明性へのこだわりは服の製造原価表示、そして服が製造される製造工場の明記だけではない。Everlaneのすべての行動は透明性という名のもとに一貫している。

Everlaneの透明性へのこだわりを示している例がある。Everlaneはセーターの原材料カシミアの価格が16%下がったので、124ドルから100ドルに販売価格を下げたのだ。

服の原材料の値段が下がった場合、通常のファッションブランドは服の販売価格を下げない。そもそも価格を下げようが下げまいが消費者は気づかないからだ。しかし、Everlaneは原材料が下がると服の販売価格も下げた。ここにEverlaneの徹底した透明性へのこだわりが垣間見られる。このような行動をとるEverlaneは短期的には「馬鹿正直」で損しているのだろう。

しかし、長期的に見ると、Everlaneは消費者からの信頼を得ることに成功しており、さらなる利益をEverlaneにもたらす。

一貫した透明性へのこだわりがEverlaneの強力なブランディングとなっているのだ。その証左ともいえるのがEverlaneの顧客の30%がリピーター顧客である事実だ。

一過性の興味本位な顧客ではなくEverlaneの服に対して確かな価値を感じている顧客が多いのである。そんな顧客は口コミでEverlaneの良さを拡散してくれるファン顧客だ。

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Everlane Facebook

EverlaneはECサイトにレビュー欄を設けており、服を購入した顧客の感想を見ることができるようにしてる。1120レビューというものすごいレビューの数だ。5つ星中5つ星のレビューはがほとんど。このようなレビューが顧客の購入の後押しになっていることは間違いない。

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口コミでの拡散を後押しするインセンティブ設計にも抜かりはない。友人知人にEverlaneを紹介した人には25ドル分のギフト券をプレゼントしている(※購入に至った場合)。

Everlaneのような透明性のあるブランドであれば友人知人に対しても後ろめたい気持ちなく紹介できるだろう。

シーズンごとに商品をリリースしない

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口コミでの拡散を後押しするインセンティブ設計にも抜かりはない。友人知人にEverlaneを紹介した人には25ドル分のギフト券をプレゼントしている(※購入に至った場合)。

Everlaneのような透明性のあるブランドであれば友人知人に対しても後ろめたい気持ちなく紹介できるだろう。

シーズンごとに商品をリリースしない

Everlaneのミッションの1つに「designed to last」がある。トレンドに乗るよりもずっと着続けられる服をデザインするということだ。

従来のファッションブランドではシーズンごとにデザインした服をリリースしてはシーズンが変わる前に在庫を売り切る。

一方でEverlaneはシーズンごとに服をリリースしていない。これもEverlaneの一般的なファッションブランドと一線を画する点だ。

Everlaneはその代わりに一品一品、服のラインナップを足していっている。また、既存の服に関しても顧客からの意見を取り入れて改良して続けている。このように、より良い服を作ることに注力しているのだ。

Everlaneは決して製造原価表示という一過性のインパクトある取り組みだけで成功したのでははない。

服の質の高さ、そして消費者への誠実さを示す透明性ある行動が一貫しているからこそ継続的に消費者に支持されるブランドとなり得ているのだ。評判が評判を呼ぶブランドの作り方のヒントがEverlaneにあるのではないだろうか。

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