マーケティング
2019.05.17
ビジュアル検索機能がファッションECにもたらすメリット
インターネットを使って何かを調べる場合、現在最もポピュラーなのがテキスト入力による検索エンジンの利用だ。商品名やブランド名などを調べる前から知っているならそれで良いのだが、そもそもの商品名やブランド名を調べたいときにはこの方法では検索が難しい。
ネットや街中で見かけた商品の場合、なんとかその商品の特徴を検索にかけてみることで洗い出すという手法もとられてきたが、そんな検索ニーズを満たそうとしているのがビジュアル検索、あるいは画像検索と呼ばれるサービスだ。
ビジュアル検索機能の仕組みと代表的なサービス
画像検索機能はその名の通り、画像情報を検索エンジンに読み込ませることで画像のテキスト情報を出力するというものだ。画像の処理はAIが機械学習を用いて自動的に行なわれ、詳しいアルゴリズムこそ公開されていないものの、そのサービスを使うほどに精度と情報量が向上していくとされている。
Google Lens
例えばGoogleの提供する「Google Lens」は、ビジュアル検索の先駆けとも言えるサービスとなっている。これはスマートフォン向けのアプリだが、スマホの内蔵カメラで調べたい対象を撮影すると、それに関する情報をユーザーに提供してくれる。
https://lens.google.com/intl/ja/
例えば道端に生えている花をカメラで捉えると、その花の名前や特徴がテキストで出力される。服であればそれと同じ商品の詳細か、類似品の情報を教えてくれるという、非常に使い勝手の良い機能を備えているのだ。
Bingの画像検索サービス
米マイクロソフトの検索エンジン、「Bing」も画像による検索がWebから行えるようになった。こちらはPC上に保管している画像や、調べたい画像が掲載されているURLを入力することで、エンジン側が自動で画像を認識し、類似の画像をユーザーに提供してくれる。
https://www.bing.com/?FORM=Z9FD1
名前の知らない芸能人の識別や、類似の雰囲気を持った風景写真を集めるのに重宝する機能だ。
ビジュアル検索機能がECにもたらすメリット
このようなビジュアル検索機能がECに与えるメリットは、やはり円滑な買い物を実現する点にある。
ストレスフリーのウィンドウショッピングが実現
ECサイトは確かに便利なのだが、その欠点として消費者のニーズがある程度具体的である必要があった。
例えば実店舗へ買い物に行く場合、「なんとなくTシャツが欲しい」「初夏にぴったりな服を探したい」と言ったアバウトなニーズでも、いくつか店舗を巡回するうちに自分のお気に入りの一着を見つけ出すことができた。
しかしECの場合、「あのブランドのあの商品が欲しい」といったように、あらかじめ買うものが決まっていない場合だと、特定のキーワードで商品を検索して見つけ出すことは困難であるため、ネット上にアップされた膨大な商品群から最良のものを選び抜かなければならない。有名ブランドの新作か、SNSで話題になった商品に注文がばかり注目が集まる要因の一つになっていると言える。
しかしビジュアル検索が登場したことによって、たまたま見つけた商品のブランド名や商品名が分からなかったとしても、消費者はそれと同じ商品や類似の商品を瞬時に検索することが可能になる。売れ筋商品に偏らない、思わぬお気に入りとの出会いの場をビジュアル検索機能は提供してくれるというわけだ。
ビジュアル検索をサポートするツールも登場
最近ではこのようなビジュアル検索のニーズに応えるため、自社サイトの商品をビジュアル検索に最適化するツールも登場しつつある。
先ほど紹介したBingも独自のAPIを公開しており、これを活用することで、類似の製品として自社商品が検索結果に表示されやすくなる、あるいは潜在ニーズの高いユーザーへ、自社の商品を紹介できるようにしてくれる仕組みだ。
https://azure.microsoft.com/ja-jp/services/cognitive-services/bing-visual-search/
各サービスで提供されるEC向けビジュアル検索ツール
最近では大手検索エンジン以外にも、ECサイトが独自にビジュアル検索を導入しているケースが目立つ。
LINE「ショッピングレンズ」
若年層に大きな支持を集めるLINE独自のECサイト、「LINE ショッピング」では、ショッピングレンズと呼ばれるビジュアル検索機能を搭載している。
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2018/2241
その場で撮った写真や、スマホに保存していた写真をショッピングレンズに読み込ませることで、LINEショッピングに参加しているショップの類似商品が紹介される。SNS慣れしている若年層にとっては、InstagramやTwitterで撮影したスクリーンショットをショッピングレンズに読み込ませるという使い方も容易なため、強力なサービスとなっている。
デクワス.CAMERA
様々なITソリューションをリリースしてきたデクワスも、EC向けのビジュアル検索サービスを提供している。
https://www.deqwas.com/service/camera.html
すでに大手アパレルECサイトのSHOPLISTでも導入されており、スマホからサイトへアクセスすればその使い勝手を実感することができる。
https://shop-list.com/
ビジュアル検索機能は検索エンジンに採用されるだけでなく、各ECサイトでも独自に導入が始まっている。将来的にはテキスト検索と並行して、ECサイトの標準的な機能として確立されるかもしれない。