マーケティング

2020.03.30

日本での急成長が期待されるライブコマースの運用方法

動画のライブ配信によって、販売促進をリアルタイムで行う「ライブコマース」は、中国では主要なEC施策として積極的な導入が進んでいる。

ライブコマースの魅力や実際の導入効果は、どれほどのものなのだろうか。

中国で運用が進むライブコマース

中国のライブコマース市場は非常に好調で、数年前に運用が始まったばかりでありながら、右肩上がりの成長を続けている。

市場規模400%拡大のケースも

中国のライブコマース市場を牽引するのは、同国最大手のECサイトである淘宝(タオバオ)が運営する、「淘宝直播(タオバオライブ)」だ。

テックニュースサイトのBRIDGEによると、タオバオライブは2018年にサービスを開始して、年間約1,000億元(約1.5兆円)の売上高を記録。年次ベースで約400%もの成長を達成したとして、大いに注目を集めた。

参考:BRIDGE「1秒で55台の車を完売、Alibaba(阿里巴巴)のライブコマース「Taobao Live(淘宝直播)」の力強さよ」
https://thebridge.jp/2019/11/livestreams-on-taobao-live-earn-rmb-20-billion-in-sales-on-singles-day

それゆえ、タオバオライブ内で公開されているチャンネルの数や紹介される商品の数も豊富である。
同サービス内では、1日あたり15万時間ものライブ配信が行われており、参加するライブ配信者は4,000人、紹介商品数は60万にものぼる。

公式サイト:https://taobaolive.taobao.com/

単一プラットフォームのみでこれだけの規模を形成していることから、中国市場の消費意欲の高さ、そしてライブコマースの影響力の強さがうかがえるだろう。

プラットフォームも増加

タオバオライブのみならず、中国では競合ECサイトも次々にライブコマースのプラットフォームを開設している。

一時期は中国国内のECシェアの5割を占めていた京東(JD.com)や、アクセサリー・アパレルを中心に展開する唯品会(Vipshop)など、大手ECサイトでライブコマースを展開していないサイトはない。

唯品会公式サイト:https://m.vip.com/service-download.html

またTikTokのように、最近ではショート動画サービスからライブコマースへと連携する施策も導入されつつある。
各アプリで人気のインフルエンサーから、商品ページへとスムーズに遷移するためのアプローチだ。
中国では、もはやECあるところにライブコマースありといっても過言ではないほど、ライブ配信とECの組み合わせが浸透しているのである。

ライブコマースの強み

ここで、改めてライブコマースが持つ強みを確認しておく。

⚫︎具体的な商品情報の提供

一つ目は、立体的で充実した商品情報の提供が可能な点である。

オンラインショップは実店舗と異なり、商品についての情報が写真とテキストに限られており、立体感がなく購買意欲を刺激しづらいと言われてきたが、ライブコマースではその点が大きく改善されている。

ライブ配信の中で、配信者が商品を着用してみたり、実際に使用した感想をその場で聞くことができるので、生の感覚に近い商品イメージを、視聴者も体験することが可能になる。

⚫︎リアルタイムで疑問を解決

また、ライブ配信者が一方的に商品の紹介をするだけでなく、視聴者がリアルタイムで配信者に質問ができるのも、ライブコマースの特徴だ。

商品に関する問い合わせは、通常のオンラインショップでは電話をしたりメールをしたりと、手間のかかる作業が必要であったが、ライブコマースではSNS感覚で相談ができるため、即時性が非常に高い。
オンラインでありながら実店舗に近い感覚で買い物ができるのは、ライブコマースの大きな特徴である。

⚫︎日本でも加速が期待できるライブコマース

中国では大きな市場を形成しているライブコマースだが、日本ではまだまだ普及率は高くない。

⚫︎鍵はインフルエンサーの増加にあり

ライブコマースが日本ではそれほど普及していない要因として、一つにライブ配信が得意なインフルエンサーの数が少ないという点が挙げられる。

中国でライブコマースが盛んなのは、そもそもライブ配信が得意なインフルエンサーの数が豊富で、あらゆる商品の紹介がライブストリーミングを通じて可能であることが大きい。

日本でも今後ライブ配信が得意なインフルエンサーの数が増え、彼らの認知度が向上していけば、ライブコマースも浸透していくことが期待できる。
徐々にではあるが、日本においてもライブコマースに特化したプラットフォームもも整いつつあり、デジタルマーケティングを手がけるCandeeがリリースした「Live Shop!」などはその代表的な例である。

Live Shop!公式サイト:https://liveshop.jp/

⚫︎コンバージョン率は非常に高い

日本ではライブコマースの普及がまだまだ進んでいないとはいえ、コンバージョン率は非常に高いことは注目しておくべきだろう。

ソフトウェア会社のジャストシステムが公表した調査結果によると、ライブコマースの視聴状況は16.6%にとどまっている一方、視聴者の半分は商品を購入したと回答している。

参考:ECのミカタ「ライブコマース視聴者の約5割が商品を購入 ジャストシステムが『Eコマース&アプリコマース月次定点調査(2019年9月度)』を公表」
https://ecnomikata.com/ecnews/23982/

商品の購入まではせずとも、配信者にコメントや質問を送った人も50%、配信者をフォローした人も44%にのぼっており、ライブ配信を閲覧した人の多くは、配信に対して何らかの興味関心を抱いている傾向が見て取れる。

ファンの心をつかむインフルエンサーの数が増え、彼らのライブ放送が盛んに行われるようになれば、日本でもライブコマースが大きく普及することになりそうだ。

おわりに

小売市場が冷え込むといわれる中、ライブコマースは消費者の購買意欲を刺激する、新しい販売形態として開拓が始まっている。

日本でも決して悪くない結果が期待できる以上、ライブコマース最先端を行く中国の動向を注視しつつ、導入を検討するのが良さそうだ。

 

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