事例にみる優秀サイトのポイント
2017.12.27
レディース通勤服を革新する「Argent」に見る支持されるブランドづくり
物が飽和している時代、ECサイトに商品を並べるだけでは売れなくなっている。素材や機能、共感されるブランドメッセージなどその商品が選ばれる理由が必要だ。そのお手本のようなファッションECを見つけた。
レディース向け通勤服を販売するECサイトArgentはスマホやペンをコートの内側に収納できるポケット付きのブレザーコートなど機能性の高い通勤服を販売。
ArgentはECサイトを通じて「働く女性の支援者、味方」「通勤服を通じて女性の活躍を支援する」というメッセージを発信しキャリアウーマンの女性たちから支持されている。2016年設立。
150万ドル(約1億8000万円)の資金調達にも成功しており、順調に成長していることがうかがえる。
レディース通勤服の販売に特化
Sali Christeson氏とEleanor Turner氏
Argent創業者のSali Christeson氏はクラウドサービスを提供するIT企業のマネージャーとして勤務。Sali氏はレディースの通勤服の選択肢があまりにも乏しく時代遅れなデザインの服ばかりであることに不満を持っていた。
そこで、Sali氏はTommy HilfingerやJ.Crewなどの有名ブランドで働いてきた有能なデザイナーEleanor Turner氏を誘いレディースの通勤服を開発することにしたのだ。
現代の働く女性が重宝する機能性の高い通勤服
Sali氏とEleanor氏は服のデザインに際し、オフィスで働いている女性がどのような行動を取っているか観察。
すると、多くの女性がミーティングから別のミーティングへと移動する際にクラッチバッグを持って移動していることが観察できた。彼女たちはクラッチバッグにスマホ、充電器、ペン、化粧直しのための簡単な化粧品用具などを入れていたのだ。しかし、クラッチバッグを持って歩くことに少し面倒を感じている様子もうかがえた。
2人は彼女たちが何も持つことなく社内を移動できればもっと楽になるだろうと考えた。そこで、スマホやペンなどを収納できる機能性の高い通勤服をデザインすることに。
Argentの価格はブレザーコート328ドル(約3万6000円)、ズボン228ドル(約2万5000円)、トップス118ドル(約1万4000円)。決して安くはないのだがArgent独自のスタイリッシュなデザインと機能性の高さがキャリアウーマンから支持されている。
Argentサイトのトップページ
ArgentはECサイトを通じて通勤服のスタイリッシュさと機能性の両立、「働く女性の支援者、味方」というブランドメッセージを一貫してアピールしている。
Argentのスタイリッシュなデザインの通勤服を着た女性の写真と共に「For the new work(新たな仕事のために)」というキャッチコピーを掲載。
シンプルなコンテンツではあるもののArgentは「通勤服を通じて女性の活躍を支援する」ブランドであることが伝わってくる。
「For once,Get exactly what you deserve.Finding workwear you love shouldn’t be revolutionary.But it is. Kind of like equal pay.
(一度、あなたにふさわしい服を手に入れてみませんか。あなたが大好きな通勤服を見つけるのは革新的なことであるべきではないです。しかし、実際はそうなんです。まるで同一賃金と同様に)」※男女同一賃金のことを指していると推測される。
上記のようなキャリアウーマンを意識したメッセージを含んでいる。
Argentのすべてのコートはスマホ、ペン、カードを収納するポケット付き。この写真だけでArgentの売りである機能性の高さは一目瞭然だ。
スタイリッシュな通勤服を着たキリっとした顔つきの女性たちの写真。ECサイトではテキストだけでなくビジュアルでも一貫したArgentらしさを伝えている。
創業者のSali氏とEleanor氏の写真を掲載。Argentが女性のための女性によるファッションブランドであることを伝えている。
着こなしガイド
Argentの服を交えたオフィスカジュアルの着こなしガイド。Pinterestと連携している。
他社ブランド紹介
他社レディースファッションブランドをECサイトで紹介している。競合よりも協調。Argentのブランドとしての感じの良さが伝わってくる。
1つ1つのコンテンツを丁寧に作ること、一貫性を持たせること
ArgentのECサイトのコンテンツである創業者の写真、着こなしガイド、スタイリッシュな通勤服を着たキリっとした顔つきの女性たちの写真。1つ1つのコンテンツは決して大がかりなものではない。
しかし、どれもが一貫して「働く女性の支援者、味方」「通勤服を通じて女性の活躍を支援する」ブランドイメージ形成に貢献している。
ECサイトでのみの販売においてブランドメッセージを発信できるのは当然ながらECサイトのみ。魅力的なブランドイメージを形成するためには1つ1つのコンテンツを丁寧に作ること、またブレのない一貫性を持たせることが求められるのではないだろうか。