マーケティング

2019.01.28

アジアブランドが注目を集めている理由

ラグジュアリーブランドの多くは、イタリアやフランスなどを中心とするヨーロッパを発祥の地としているが、現代ではその顧客の多くはアジア人、とりわけ中国人が大多数を占めている。ヨーロッパから最新のトレンドが発信され、消費はアジアで行われるという構図が今までの定説であった。

しかしながら、アジア人の消費するファッションは必ずしも欧米で生まれたものだけではない。今日ではアジア初のファッションブランドも数多く登場し、もはやアジア地域のみでファッション市場が成立している様子も伺うことができる。

アジアで活性化するファッション市場

世界人口は現在70億人とされているが、その6割はアジア人が占める。中でも中国やインドは世界最多の人口を誇る国であり、シンガポールやインドネシアといった東南アジア地域でも情勢が安定し、積極的な外国資本の投入によって大きな経済成長を遂げている。

そしてラグジュアリーブランドをはじめとする、嗜好品の消費がこれらの地域で急激に増加している。特に中国人による消費は地域を凌駕するものがあり、アメリカのコンサルティング会社であるベイン・アンド・カンパニーの調査によると、世界の高級ブランド品の3分の1は中国人が購入しているとされ、彼らほどではないものの、韓国や東南アジアの国々においても嗜好品としてのアパレル製品の需要は上昇傾向にある。

https://www.recordchina.co.jp/b222170-s0-c20-d0035.html

日本でも「爆買い」という言葉が流行したように、こういった地域の消費者は自国ではなく海外の店舗で購入するか、あるいはオンラインショップから入手することが一般的だ。流通インフラや決済方法の多様化が進んだことで、海外の製品も容易に手に入れることができるようになったためである。

また、高級ブランドやストリートブランド需要の高まりに触発され、アジア各地で自国発のブランドの立ち上げも盛んになっている。自国やアジア地域での販売だけでなく、欧米地域にも進出するブランドは少なくない。韓国のATAR(アタル)やベトナムのDVRKなどは代表的な気鋭のアジアブランドである。http://atar.kr/

https://dvrk.vn/blogs/media

 

アジア発のアパレルに特化する「シックスティーパーセント」

そんなアジアのファッション市場に目をつけて誕生したのが、ECサイトの「SIXTYPERCENT(シックスティーパーセント)」だ。世界人口の60%がアジア人であることに由来するこのサイトでは、アジア各国のハイブランドのみを取り扱い、アジア地域だけでなく欧米地域にブランドを発信していくためのプラットフォームとしても機能している。

 

https://www.sixty-percent.com/

基本的にはオンラインショップを中心とする運営だが、シックスティーパーセント主催のポップアップショップなどの店舗企画もLAをはじめとする各地で予定している。現在は韓国やシンガポール、タイなどからハイストリート系のブランドが数多く集まり、40前後のブランドを常に取り扱っているという。取扱ブランドも依然として増加しており、毎日新商品が商品サイクルも早く、毎日新しいブランドが(削除)サイトにアップされているのは集客の面でも大きな役割を果たしているようだ。

 

アジアブランドの強み

ヨーロッパではなく、アジアからファッションブランドを展開していくことの強みにも注目したい。

一つは、アジアはかねてより欧米ブランドの生産拠点であったため、生産・流通インフラが成熟していることがあげられる。

二つ目に、実店舗拡大によるブランド価値の向上を推し進めていることだ。店舗に積極投資できるほど経済状況が好転していることがそれを可能にしているのだ。

三つ目にアパレルを生産するだけでなく、デザインする力も身につけたデザイナーが増えたことにある。ニューヨークのデザイン学校などではアジア人の卒業生も増加傾向にあり、マニュアル通りに生産するだけでなく自ら製品を創る力を身につけたことが、アジアブランド勃興の大きな要因といえるだろう。アジア地域における経済成長は消費を活性化させただけでなく、自ら発信する力も与えたのである。

また、欧米地域でのアジアブームも各ブランドにとって追い風になっている。BTSをはじめとするK-Popアイドルはアメリカに次世代のビートルズ旋風を巻き起こしていると評され、88 Risingのようなアジア人アーティストを多く輩出するレーベルも欧米圏で活躍していることから、エンタメ分野ではこれまでにないアジアンブームの高まりをみせているのだ。

コム・デ・ギャルソンやBapeなど、日本初のハイブランドにも従来同様あらゆる地域にファンを有している。今日のアジア地域の勃興に乗じて、今後は日本発の新規ブランドにも注目が集まっていくことも期待できる。

 

アジアブランドを受け入れるチャンネルを儲けることも重要に

日本の場合はファッションブランドだけでなく、ビームスやユナイテッドアローズのような大手セレクトショップのキュレーション能力を高く評価する声も大きい。海外のアジアブランドは日本にも進出したいと考えているが、誰に声をかけて良いのかわからないという理由から進出を諦めてしまうことも少なくないという。

アジアのハイブランドの認知度はまだ日本において高いとは言えないが、シックスティーパーセントのように日本からも各ブランドにチャンネルが開かれれば、日本国内で新しいブランドがトレンドとなっていく可能性は高いと言えるだろう。

 

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