マーケティング

2019.04.08

ファッションに特化したリユースECが持つ可能性

新品ではなく中古の商品をオンラインで販売するリユースECは、Eコマース市場において近年注目を集めている分野である。家電製品からアクセサリーまで広範な分野をおさえるリユースECだが、最近ではファッションに特化したリユースECサイトが登場するといった動きも見られる。

注目を集めるリユースEC

リユースECはその名の通り中古品をオンライン上で販売することを指すが、その背景にはメルカリをはじめとするCtoCサービスの浸透が大きい。

経産省の調査によると、日本のフリマアプリを介したCtoC市場規模は2017年時点で4,835億円となっており、2016年と比べて1800億円近い増加を見せている。ネットオークションによるCtoC取引は3,569億円で、この2つを合わせると8,000億円を超える取引額となる。

https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180425001/20180425001-2.pdf

2017年時点でBtoCのEC市場規模は8兆6,008億円であるため、この数字にはCtoCの取引額は及ばない。しかしながらBtoCの成長率が7.5%なのに対し、CtoC、特にフリマアプリの市場規模は前年比58%の成長を記録しているため、今後ますますその重要性が高まっていくことが予想される。

シニアユーザー増加で取引単価も上昇傾向に

フリマアプリ「ラクマ」の利用調査によると、シニア層とされる60代~90代のユーザーの新規登録者数が急増している。その数は2016年から2018年にかけて29.8倍、特に70代のユーザーは49.8倍にものぼる。

https://ecnomikata.com/ecnews/21173/

またリユース市場におけるシニア層の登場により、取引単価の上昇も見られるという。ラクマでの取引単価は10~20代に比べて60~70代の方が1.23倍高いということだが、これはシニアユーザーの出品に嗜好品や高価なファッション小物が多いことが関係しているとされている。

フリマアプリは一見すると若い世代にもてはやされているように思われるが、このようなユーザー数の変化や少子高齢化の進行を踏まえると、CtoCサービスは今後シニア層にとってスタンダードなものになっていく可能性もある。

BtoCのリユースECを展開する「ReRe」

リユースECはフリマアプリ以外にも、「ReRe」のようなBtoCのECで盛んに行われている。ReReは家電や楽器、PCにブランド品と取り扱い商品の幅が広く、中古品を求める人なら一度はたどり着くリユースECサイトである。

https://www.rere.jp/

中古品で探し物があるときは、とりあえずReReを覗くという使い方がこのサイトには適していそうだ。

ファッションレンタルもリユースの追い風を受ける

オンライン上で中古品を購入するのは抵抗があるという人にも利用されているのが、ブランド品のファッション小物などを貸し出すファッションレンタルサービスだ。サービス上で気になった商品をレンタルし、気に入ったらそのまま購入することができる形態もまた、中古品を消費者や業者から買い取ることで成立している。

例えばブランドバッグのレンタルサービスを展開するLaxus(ラクサス)は、貸し出されるバッグの一部はユーザーから提供されており、気に入ったものはそのまま購入できる商品も展開されている。

https://laxus.co/

自宅で眠っているラグジュアリーバッグは、Laxusに預けておくだけでメンテナンス・保管管理され、バッグの貸出があった場合、預けたユーザーはにはその料金の一部を受け取れる。レンタルサービスならではのメリットが充実しているのだ。

デザイナーズブランドに特化した「OR NOT」の登場

「古着はECでは売れない」と言われる時代もあったが、このようにフリマアプリやファッションレンタルサービスが多くのユーザーを獲得する中で、今やリユースECは新たなファッション市場のフロンティアとして生まれ変わりつつある。

株式会社LOOPが2019年1月にリリースした「OR NOT(オアノット)」は、ファッションに特化したBtoC形式のリユースECを提供するサービスだが、そこで扱われるのはデザイナーズブランドに特化したアイテムの数々だ。

https://or-not.com/

これまでのリユースECにおけるファッションと言えば、ReReやフリマアプリように1つのプラットフォームの中にカテゴリの1つとしてファッションが存在していることが一般的だった。

そのため何か特定のブランドの中古商品を探している場合には、煩雑に並べられた商品情報からお気に入りのものを見つけ出したり、CtoCの場合は出品者と直接やりとりして、商品の真贋や状態について確認を取る必要があった。

リユースECの煩雑さを取り払うOR NOT

OR NOTが提供するのは、厳選されたクオリティーの高い商品ラインナップである。日本で販売されるブランド古着はその品質の高さから国内外から注目を集めているが、OR NOTはそんなブランド古着需要を満たすリユースECだ。

https://ecnomikata.com/ecnews/21297/

単に真贋判定や品質の確認を行った商品を並べるだけでなく、ブランドやカラーなどファッションアイテムに特化した絞り込み検索機能の充実はもちろん、多言語・他通貨対応によって、ブランド古着需要の大きい中国や韓国などからのユーザーにも対応している。

またファッション誌編集者の定期的なコラムや、スタイリストによるスタイリング特集など、ショッピング以外のコンテンツも充実している。これまでの雑多なリユースECではなく、ファッションメディアのように洗練されたプラットフォームを形成することで、実店舗のセレクトショップに近い世界観をオンライン上に構築しているのだ。

買い求めやすいリユースECの先駆けとなるか

上記の記事内でも述べられているように、リユースECは「中古」というだけで商品がアバウトな分類にされていることも多く、その大雑把さが消費を鈍化させているという見方もある。

OR NOTはブランド古着に特化することで、ブランド古着を買い求めるユーザーが

良質な商品を入手する手間を省くサービスを提供しているとも言える。今後リユースECは、ユーザーが膨大な数のラインナップからお気に入りを探すのではなく、特定のカテゴリに特化したECによって消費者へアプローチされる形式を取っていく事になりそうだ。

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