ECニュース解説

2016.08.01

アーバンリサーチの戦略にみるアパレルECのこれから

「何を買うか」ではなく「誰から買うか」: アーバンリサーチの戦略にみるアパレルECのこれから

 

繊研新聞 2016.01.07 (協力:繊研plus

繊研新聞 20160107

 

多店舗化とEC拡大を進める「アーバンリサーチ」

「アーバンリサーチ(URBAN RESEARCH)」の売り上げが堅調な足取りだ。アパレル業界全体が不況にあえぐなか、積極的な2ケタ出店で増収を維持している。今期は出店数こそ減らすものの、手頃な価格帯の商品を取り扱う「センス・オブ・プレイス・バイ・アーバンリサーチ(SENSE OF PLACE by URBAN RESEARCH)」を中心に、海外も視野に入れた出店計画を進めている。また、EC売り上げも好調で、今期は前年比20%強となる見込み。今後はさらに自社サイトを拡大・充実させる一方、ECモールへの出店も継続しながら、自社サイトとの在庫の一元化などを強化。従来の売り逃がしを減らし、よりスムーズなデリバリーを目指す構えだ。

 

urbanresearch

 

加速するセレクトショップのSPA化とECに期待される役割

「アーバンリサーチ」だけでなく、このところの大型セレクトショップには、総じて拡大路線を敷き、SPA業態を進める動きがある。トレンドの変化やバイヤーの手腕次第で在庫を抱えるリスクが高い国内外ブランドのバイイングを控え、より利益率が高く、しかも移り気な消費者の動向にも対応しやすい自社製品の展開に一斉に注力していると言い換えてもいいだろう。セレクトショップがこぞってEC拡大に力を入れている理由の一つもそこにあって、実店舗とECの連携を強化することで人気商品の売り逃がしをなくし、消費者の動向に敏感に反応しながら短いスパンで商品展開し、ドレンド商品の消化率を上げたいという狙いがある。

また「低価格」というのも近年のセレクトショップの動向を説明する上で重要なキーワードの一つ。ファストファション流行後のアパレル業界でセレクトショップがSPA化を加速させるためには、寿命が短いトレンド商品は低価格化が不可欠となっている。「アーバンリサーチ」が今期の出店計画の軸に据えている「センス・オブ・プレイス」が、手頃な価格帯で自社製のトレンド商品を取り扱う、「アーバンリサーチ」によって最初に立ち上げられたSPA業態の店舗であるというのは、セレクトショップの「今」を象徴する出来事といえるだろう。

 

EC時代の「真正な」セレクトショップ「アーバンリサーチバイヤーズセレクト」

 

URBS

こうした動きをこのまま徹底的に推し進めるなら、セレクトショップが同質化することは避けられない。様々な意味でロスの少ないトレンド商品に注力することで、どの店舗も取り扱う商品が似通ってくるだけでなく、「セレクトショップ」という名前が有名無実化するばかりか、ブランドや店舗自体が没個性化し、結果としてロイヤルカスタマーの喪失につながるのは自明のことだ。

そうした流れに一石を投じたのが、「アーバンリサーチ」がこの3月に立ち上げた、仕入れ商品のみでラインナップを構成するEC「アーバンリサーチバイヤーズセレクト(URBAN RESEARCH BUYERS SELECT – http://www.ur-buyersselect.com/)」だ。近年のセレクトショップが距離をおいてきた、クリエーター系を含む高価格帯商品を中心に、いわゆる「高感度ブランド」のみを取り扱い、表参道店と在庫を一元化するほか、スタッフとのチャット機能を備えるなど、実店舗との連動を強く意識した内容となっている。「真正な」セレクトショップとしての面目躍如というだけでなく、EC上でどこまで実店舗に近い接客を行い、それをコンバージョンに結びつけうるか、EC時代のアパレル業界の今後を展望する上で実に興味深い。

 

「何を買うか」ではなく「誰から買うか」

若年層にフォーカスし、変化の激しいトレンド商品を主に取り扱う現行の戦略は、高齢化だけでなく若者のファッション離れが進む今後の市場にはそぐわない。セレクトショップは、やはり独自のセレクトや編集技術の高さに基づくブランドロイヤルティによって生き残っていくことになるだろう。そしてそれは、「何を買うか」ではなく「誰から買うか」という本来のセレクトショップの姿に立ち返ることに他ならない。それぞれのセレクトショップが、実店舗とECとを連動させつつ、独自のコンセプトを明確に持った専門店としての存在感をどう発揮していくのか、興味が尽きないところだ。

当然、これはセレクトショップだけの問題ではない。大手ECモールはじめ、数十万と言われる中小のECがひしめく中で、各店舗がどのように存在感をアピールしていくか、アパレルEC全体が抱える問題の縮図とも言える現象だ。「アーバンリサーチ」はじめ、大型セレクトショップの今後の動きからますます目が離せない。

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