マーケティング
2019.09.12
ファッションECにおけるリセール販売
ファッション消費はここ数年で回復の兆しを見せはじめているが、ECの普及はその消費に大きく貢献してきた。そして同時にBtoCによる小売販売だけでなく、メルカリをはじめとするフリマアプリの登場によって、CtoCによる消費(消費者から消費者への流通)も大きく拡大した。
店で買った商品が再び市場に出回ることを、「二次流通」や「リセール」といった言葉で表現される。こういった中古衣料の売買を、メルカリのようなCtoCサービスではなくファーフェッチのようなセレクトECショップ(BtoC事業者)が直接EC上で行うケースも最近では見られる。
アパレル市場活性化の鍵を握るリセールサービス
経産省が以前に公表した「アパレル・サプライチェーン研究会報告書」によると、日本のアパレル業界の不振は、現金払いだと値引きされるといった、余剰在庫による経費圧迫が主な要因と報告されている。
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/apparel_supply/report_001.html
衣料品ビジネスは、いかにして在庫を値引き無しで消化していくことができるか、そして余剰在庫を生まないかが肝要になるとされてきた。
しかしフリマアプリの登場により、CtoCの二次流通が拡大し、新品在庫の消費が減退したことで、BtoCのファッション市場はさらに追い詰められることとなった。
リセールありきでファッションを楽しむ若者たち
消費者間での中古ファッション取引が進む中で、彼らにおける消費感覚も次第に移り変わっていくことにもなった。中日新聞の記事、「手軽に買って、すぐ売る 所有ワンシーズン われら 消費新世代」には、若年層がどのようにファッションを消費しているかについて書かれている。
https://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/popress/feature/CK2018031102000231.html
若者がフリマアプリを愛用する大きな理由は、やはりその価格の安さにある。リテール商品よりもはるかに安い価格、それもRAG TAGや2nd Streetといった買取業者を介するよりもさらに安い価格で満足のいく買い物ができる点は、出費を抑えたい若者にとっては魅力的である。
また、最近ではフリマ出品を前提とした新品の購入も行われるようになってきた。「新品を購入しても中古で売れば、結果的に出費は小さい」という意識が芽生え、回り回ってリテール購入が促進されるという傾向だ。
https://www.sankei.com/economy/news/180417/ecn1804170039-n1.html
トレンドアイテムなどは、シーズンを過ぎればその魅力も低下してしまう。シーズン前に商品を購入し、飽きたら出品、気に入ればクローゼットにといったように、フリマアプリは消費者に「買ってから考える」という選択肢を生み出しているのだ。
ブランドが直接リセールサービスを展開する例も
このようなリセールありきの消費者意識の影響を受け、ファッションブランドが直接リセールビジネスに参入する例も見かけるようになった。
FARFETCH(ファーフェッチ)によるリセールサービスの開始
まだ日本には未上陸だが、FARFETCHは「Second Life」と呼ばれるサービスを開始している。ユーザーが商品情報をサイトにアップロードし、査定額がFARFETCHで使えるポイントに還元されて送られてくる買取サービスだ。
https://secondlife.farfetch.com/
ファッションアイテムはトレンド性が高い商品であるため、買い替え需要が毎シーズンごとに少なからず存在する。FARFETCHのSecond Lifeはその需要に応えるべくサービス展開されている。
リセールサービスを導入するメリット
FARFETCH Second Lifeはエルメスやフェンディといった高級ブランドバッグの二次流通を取り扱っている。
中古のラグジュアリーアイテムは需要が大きく、「Laxus(ラクサス)」のようにレンタルバッグのサービスも展開されているほどだ。
またラグジュアリーブランドは偽物も多く出回っているため、CtoCではなく信頼できる仲介業者を通じた取引を望む声も大きい。FARFETCHのように名のある販売店がリセールサービスを展開する場合、フリマアプリにはない、ショップブプランドの信頼性を強みに変えていくことができる。
加えてFARFETCHでは、サイト内で使える専用のポイントを出品者に付与するため、サイト内の消費促進にも繋げることができる。
また、使わなくなったアイテムを手放すきっかけを探していたユーザーを、新品商品を購入してくれる新規ユーザーとしても取り込むことに繋がるため、リセールサービスがもたらしてくれる恩恵は大きい。
リセールサービスの参入を検討する際、もちろん競合サービスや既存のフリマアプリとの利便性やポイント還元率において、差別化になるユーザーメリットが必要になってくるが、上記のような利点を踏まえると、検討の余地はあるだろう。