ファッションコーディネートアプリの可能性

ネット上で洋服を購入する際、かつてのように検索エンジンを使って商品を探す人の数が少なくなってきていると言われている。実際、気になるキーワードをいくつかピックアップして検索をかけたところで、巧みにSEO対策された情報が優先的に表示されるばかりで、リアルな情報はむしろSNSの方にある、なんていう風に言われることもしばしば。

そんな、よりリアルで新鮮な情報を欲する消費者のニーズに応えるかたちで発展して来たサービスの一つが、ファッションコーディネートアプリ。そのファッションECとの関係や将来的な可能性について考える。

“おしゃれさ”や“世界観”を演出するコーディネートアプリ

画像引用：Polyvore

ユーザ数の多い人気アプリは、軒並みファッションECとの連携を強化し、気に入ったコーディネートが見つかれば、その場ですぐにアイテムを購入できるような仕組みを構築している。

それら国内のファッションコーディネートアプリの原型とも言えるサービスが、2007年にカリフォルニアで創業したPolyvore。さまざまなアイテムの中から、ユーザが気に入ったものを選び、セットと呼ばれるコーディネートページ上で組み合わせ、公開できるというサービスだ。

こうしたファッションコーディネートアプリは、それぞれに“おしゃれさ”や“世界観”を演出するものとして幅広い支持を集めているが、課題がないわけではない。例えば、コーディネートに掲載されているアイテムは、必ずしも入手しやすいわけではないことが挙げられる。

毎日おびただしい数のスナップが投稿され、タイムライン上に乗せられていくわけだが、たまたま目にとまったコーディネートが最近のものであるとは限らないし、投稿者が実際に購入した私物を着用している以上、使用されているアイテムがすでに販売していないものであることも少なくない。

そこで、各アプリでは、人工知能を利用した画像解析エンジンを活用して、コーディネートに使用されるアイテムに“似ている”商品を紹介するというスタイルが定着してきた。

画像引用：SNAP by IQON

そんな中、株式会社VASILY（代表取締役：金山裕樹）は、2017年3月に、人気インスタグラマーのコーディネート画像を取り上げ、コーディネートに使われているアイテムと似た商品を購入できる「SNAP by IQON」をリリース。

いわゆる“置き撮り”スタイルでコーディネートを提案する既存アプリ「IQON」とは対照的なモデルのいるコーディネート画像を提供することで、より“おしゃれさ”や“世界観”をより直感的なかたちで提案。その上、Instagramの画像をそのまま流用することで、既存のファッションコーディネートアプリよりはるかに知名度の高いインフルエンサーの影響力と、フォトジェニックな、惹きのある画像とを活かした効果的なマーケティングの可能性を示唆している。

“出会い”を提供するサービスへ

現在は、インフルエンサーが着用しているアイテムに“できるだけ”似ているものを、人工知能を利用して提供することに関心を向けているサービスやECがほとんどだ。消費者の要望に応じて次々に商品を紹介するといった実店舗における接客サービスの延長線上にあると言えるかもしれない。

ところがそこでは、消費者の欲求をアバウトなものとしてとらえているところがあり、「なんとなくそれっぽい感じ」的に、消費者が妥協して選ぶ“代替品”として提供されている感が否めない。現時点で考え得るもっとも進んだソリューションであるには違いないが、必ずしもすべての消費者からの満足を得られているわけではないはずだ。

「for You」－ IQON

むしろ、これから期待されるのは、レコメンデーションによる商品との出会いを、消費者がよりポジティブなものとして歓迎できるような提案の仕方だ。例えば、やはりIQONが提供しているコンテンツ「for you」では、閲覧・購入さらに「LIKE」の履歴からユーザの好みを学習し、レコメンデーションに反映。

今後、人工知能の精度がさらに高まれば、消費者のライフスタイル全体を精査対象として含みこむことができるようになるはずだ。そうなれば、消費者それぞれの趣向やテイストに合わせてアイテムを提案する現在のサービスは、“ECならでは”の消費者と商品との出会いを提供することができる、唯一無二の魅力的なサービスに発展する可能性があると言えるであろう。

Polyvore
http://www.polyvore.com/

IQON
https://www.iqon.jp/

SNAP by IQON
https://snap.ne.jp/