マーケティング
2017.08.07
会話型コマースはアパレルECを活性化する
膨大な商品数の中から、自らのリテラシーを駆使してお目当ての商品を見つけて手早く購入するというのが、インターネットを経由した現代のショッピングの特徴だ。そうした誰とも言葉を交わすことなく全てが完結するスタイルが主流になる一方、海外ではメッセンジャーアプリと連携した対話型のEコマースももてはやされているようだ。メッセンジャーアプリと関連した国内外のアパレルECの動きに着目する。
メッセンジャーアプリを活用した海外のアパレルECの事例
メッセンジャーアプリとは、インターネット経由での即時的なコミュニケーションを可能にするアプリケーションのこと。短文テキストや画像・動画の手軽な送受信ができて、音声通話機能を備えるものもある。いま、スマートフォンにおいて最も起動頻度が高いアプリだ。
メッセンジャーアプリ - WhatsApp
海外のアパレルECでは、メッセンジャーアプリを使った対話型のサービスが人気のようだ。
Reliance Brands Limited - Facebook
例えば、インドのアパレル小売店Relianceは、国内ユーザ数がおよそ1億6,000万人といわれるWhatsAppを利用し、スタッフとユーザとの直接対話による商品プロモーションを実施。とりわけ富裕層の支持を集め、2014年にはコンバージョン率が80%近くにも及んだという。
Tommy Hilfigerの成功事例 - facebook business
WhatsAppと同じく人気の高いメッセンジャーアプリ、Messengerでも同様の動きがある。例えばTommy Hilfigerは、2016年のコレクション発表に合わせて、Messenger上でbotをリリース。新しいコレクションについて、ファンらとそれぞれ個別に広がりのある会話を展開し、結果的に6万件以上のメッセージが交わされた。ランウェイの商品をその場で購入できる“See Now, Buy Now”を導入し、オンラインセールスの面でも成功を収めている。
国内のメッセンジャーアプリ周辺のアパレルECの動き
- LINE BUSINESS CONNECT
LINE(代表取締役社長 出澤剛)は、企業・消費者間の双方向コミュニケーションを可能にする法人向けサービス「LINEビジネスコネクト」を2016年にリリース。ショップ内で利用するIDとLINEアカウントとを連携させることで、異なるユーザそれぞれに対して個別のコミュニケーションができるようになった。
- トランスコスモスニュースリリース
さらに同年12月には、LINEのトーク画面上で商品を注文できる「メッセンジャーアプリECサービス」の提供を開始。レコメンデーション機能やbotによる自動応対機能を備えており、LINEユーザはアプリを離れることなく決済することができる。
また、2017年6月には「LINEショッピング」のサービスを開始。LINEショッピング経由で提携企業のECサイトを利用すると、購入金額に応じてポイントを獲得することができるというもの。立ち上げの時点で、ユニクロやベイクルーズなど国内の大手アパレルECなど100社を超える企業が参加している。外部アプリをインストールすることなく、LINE上での商品検索が簡単に行えて、決済は販売元のECサイトで行うという仕組み。アプリだけでなく、パソコンのブラウザからもアクセスすることができる。
一般的なポイントサイトと異なるのは、ショッピングによって付与されるのがLINEポイントであるという点で、貯まったポイントは「LINE Pay」を通じて1ポイント1円で現金として利用することも可能だ。LINEアカウントがショップ内のIDと連携されれば、EC側からLINEユーザに対して個別プロモーションすることもできる。月間アクティブユーザー数が7,000万人を超えるメッセンジャーアプリが玄関口となることは、アパレルECにとって大きな流入を見込むきっかけになるはずだ。
メッセンジャーアプリゆえのショッピングポータルサイトとしての可能性
リアル店舗で商品を購入する際、日本の消費者は、必ずしもショップ店員の助けを必要としないだけでなく、接客を嫌う傾向さえあるようだ。そうした状況下では、メッセンジャーアプリ本来の機能を活用したインタラクティブなサービスよりも、LINEショッピングのように、使い慣れたアプリ内で、気が向いたら手軽に一人で買い物を済ませられるサービスの方が適しているのかもしれない。
LINEショッピングは、いわばショッピングポータルとしての機能を持っているが、同じくポータルサイトである楽天市場やYahoo!Japanなども参加しているのは、メッセンジャーアプリという出自ゆえのことだろう。また、膨大なユーザ数を抱え、チェックしたアイテムや購入履歴に応じて、ユーザ毎に個別の情報を提供できるというのも、メッセンジャーアプリの大きな利点だ。今後の展開に注目したいところだ。
https://www.whatsapp.com/
Facebook Messenger
https://ja-jp.messenger.com/
LINE
https://line.me/ja/
LINEビジネスコネクト
http://lbc.line.me/
LINE ショッピング
https://ec.line.me/
トランスコスモス
http://www.trans-cosmos.co.jp/
Reliance Industries Limited
http://www.ril.com/