マーケティング

2019.04.03

規模拡大と多様化が著しい中国のEC市場

世界でも頭ひとつ抜けた経済成長を続けてきた中国では、成長率そのものは落ち着きつつあるものの、成長の中で蓄えられてきた資本やノウハウを生かした新たなサービスが次々と誕生している。

特にEC市場の拡大はめざましい。流通総額の驚異的な伸びもさることながら、アリババやテンセントといった大手企業が新たなECサービスを展開していくことで覇権争いを激化させている。

巨大化した中国EC市場

中国のバブル経済崩壊が懸念され、EC分野においても成長が頭打ちになるのではという声も存在する中、実際の数字にはまだそのような兆候は現れていない。

ネットショップ担当者フォーラムに掲載されている「EC市場は2020年に約190兆円、EC化率は25%まで拡大する【中国EC市場の予測】」によると、2016年時点では中国のEC利用者は4億6000万人で、この人口は2020年までに2億人程度の増加が見込まれるという。

https://netshop.impress.co.jp/node/4097

経産省の統計によると日本のEC化率は5%で、別の調査でも国内のEC利用者はネットユーザーの6割弱となっており、人口にすると6000万人程度となっているため、それと比較すれば中国の25%のEC化率と6億人を超えるユーザー数は驚異的である。

https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180425001/20180425001-2.pdf

https://netshop.impress.co.jp/node/5950

市場規模は200兆円へ

また、Forbesに掲載されている「市場規模200兆円に向かう、中国EC分野の驚異的ポテンシャル」よると、中国ECの市場規模そのものも2018年時点では1.1兆ドルで、2022年には1.8兆ドル、つまり日本円にしておよそ204兆円もの巨大なマーケットになると試算されているという。経産省の調査によれば、日本のEC市場は1兆5000億円、アメリカのEC市場規模が78兆円であることを踏まえると、中国のEC市場がいかに巨大であるかがわかるだろう。

https://forbesjapan.com/articles/detail/24422/1/1/1?s=ns

また、電子決済やキャッシュレス化が進んでいる中国だが、ECを利用している消費者は未だ38%程度に収まっており、日本の58%、アメリカの79%(JETRO調べ)に比べるとそれほど浸透していないことがわかる。今後EC利用者が増えてくることになれば、市場規模は想定通りさらに大きなものとなっていく。

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/95e21f6518a9912d/20170136.pdf

ECプラットフォームも多様化の兆し

そしてEC利用者を増加させる鍵となるのが、細分化されたニーズに応える多様なECサービスの登場である。これまでは服が買えればある意味何でも良かったというファッションECも、同じ中国人の消費者でも経済成長によって多様化した個人の所得や趣味嗜好に沿った商品を提供できるかどうかが重要視されるようになってきている。

ファストファッション衣料に特化した「KoGi」

例えば2018年の8月よりサービスを開始している「KoGi(可及)」は、ファストファッションに特化した中古品ECを展開する新しいサービスだ。

https://www.xiaohongshu.com/user/profile/5b63f4554eacab42721a3cff?_at=1553219419292

ZARAもユニクロも!ファストファッションに特化した中古品EC「KoGi」

これまで中国における中古品ECの場合、ラグジュアリーブランドのように絶対的な知名度と質が保証された商品を取り扱っていることが多く、ユニクロやH&Mのようにリーズナブルなブランドのユーズド商品がオンラインで販売されることはなかった。KoGiはその点に目をつけ、ファストファッション衣料のユーズド商品に特化したECを展開することで競合サービスと差別化を図り、国内のニーズを一挙に引き受けている。

地方の若者に目をつけたKoGi

KoGiを利用する主なユーザーは、都市部ではなく地方に住む若者が大多数を占めている。地方と都市には大きな経済格差が生じている中国だが、インターネットはどの地域においても同じレベルで開かれているため、都市部でのファッショントレンドの変化には地方の若者も敏感になっている。

またファストファッション分野では店舗側の商品入れ替えサイクルと消費者の購入頻度が高く、中古商品が発生しやすい市場だ。KoGiはフリマアプリのメルカリに近いビジネスモデルを展開しており、出品者と購入者が直接売買できるマーケットプレイスを提供している。商品管理、物流業務などを担い、手数料を徴収することでビジネスを成立させているのである。

今後は取り扱い商品のカテゴリを拡充し、コスメやバッグ、靴なども充実させていくという。KoGi内でファッションに関する消費をすべてまかなうことができるようになるかもしれない。

ラグジュアリーブランド需要に応えるPinduoduoの新サービス

中国のEC市場がカバーしている商品カテゴリは多岐にわたっており、Amazonのように1つのECサイトが幅広い商品ラインナップを展開しているケースも見られる。日用品から家電製品、ファッションなどを一挙に取り扱う「Pinduoduo(拼多多)」は、上海を拠点にする巨大ECサイトの1つである。

低価格戦略からの脱却?

NASDAQ上場も果たしたPinduoduoだが、先日新たに公開された招待制の新サービス、「Pinduoduo International(拼多多国際)」は、ラグジュアリー需要に応える越境EエCプラットフォームとなっているようだ。

https://ims.pinduoduo.com/overSeahttp://urx.space/zeWr

Pinduoduoは元々リーズナブルなECを展開していることに定評があった。サイトに並ぶ商品はそのままでも安いのだが、共同購入によってさらに商品を安く買えるのがPinduoduoの魅力だ。SNSで欲しい商品の情報を共有し、他のユーザーとともにまとめ買いをすることで、さらなる値引きが受けられる。

一方で今回公開されたPinduoduo Internationalは、クローズドのサービスとなっており、選ばれた事業者とユーザーのみが売買を行えるという、従来とは真逆の新しい取り組みだ。

中国国内の中流階級がここ数年で拡大したことにより、ECにおいても高級志向の消費ニーズが強くなっているとも考えられる。Pinduoduoは自社ECサービスを多様化することで、ユーザーの所得に合わせた顧客の囲い込みを展開しつつあるのだ。

多様化する消費動向とECの関係

安いものを中心に売っていた中国ECは、国内の需要に合わせてラグジュアリー製品も販売するようになりつつある。中国人の中でも経済格差が広がってきていることを受け、ECに求められるサービスも低所得者と中高所得者のそれぞれに合わせた、より柔軟なECが必要とされてきている。

 

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