マーケティング
2017.12.18
アリババのファッションAIはリアル店舗を救うのか、それともアパレルECを救うのか?
「独身の日」 – instagram
中国EC最大手のアリババが250億ドルという驚異的な売上記録を叩き出した2017年11月11日。今や中国はもちろん、世界最大のショッピングイベントとなった「独身の日」は、いずれファッションAIにとって重要な日としても記憶されるかもしれない。
「独身の日」、アリババのファッションAIが本格始動
「独身の日」 – instagram
14万ものブランドが参加し、アリババにとって最重要な商戦日となった「独身の日」セールが始まったのは2009年のこと。当時1億元にも満たなかった売上は、それから8年後の2017年にはそのおよそ1,500倍、1,500億元にものぼった。
当日は、世界を代表するトップブランドが「See Now, Buy Now」を展開。ファッションショーはアリババが主宰するメディアでリアルタイム配信され、その模様をスマートフォンで鑑賞する消費者は、気に入ったアイテムがあればその場ですぐに購入できる画期的な仕組みが導入された。
アパレルECにとってそれ以上に重要だったのが、同日、アリババがファッションAIを本格的にデビューさせたことだった。中国国内にあるいくつかのリアル店舗の試着室に大きな液晶スクリーンを設置。試着するために持ち込まれた商品は、備え付けられたセンサーによって認識され、その商品とコーディネートするのに適したアイテムをAIが提案。液晶スクリーン上に表示してくれるというものだ。
AIは、店舗に在庫がある商品の中からより最適なものを提案するようにプログラムされている。消費者が液晶スクリーンに表示されたアイテムをタップすると、ほどなくして店舗スタッフがその商品を手に持ってあらわれるという仕組みだ。
ブランドの垣根を越えるアリババの破壊力
杭州市にあるアリババの「ニューリテール」コンセプトストア - instagram
こうしたファッションAIの活用は、2016年の末に発表されたオンラインとオフラインとを融合させる試み、「ニューリテール」というコンセプトの一環として位置付けられる。売り上げが伸び悩むリアル店舗に客足を呼び戻すと同時に、店舗を訪れる消費者を対象として属性分析を実施。さらにオンラインでの消費傾向を解析し、当該エリアの市場動向をつかむことで、より効率的な施策に打って出る構えだ。
Tmall
他方、アリババはこのファッションAIをECに導入する準備を進めており、近くアプリを配布する予定だ。アリババが運営する中国最大のBtoC-ECモール「Tmall」でこれが実現すれば、リアル店舗をはるかに上回る膨大な商品が対象となるだけでなく、消費者に対してブランドの垣根を越えた商品の提案が可能になる。日本国内のアパレルECでもファッションAIの導入は進んでいるが、提案可能なアイテムは企業やブランドの壁を越えられていないのが現状だ。どれほどAIの学習機能が高度に進化したとしても。
ファッションAIの抱えるジレンマを解消するかもしれないアリババ
アリババのファッションAIは、リアル店舗にとって、業務を効率化し売り上げを向上させる救世主となるかもしれない。同時に、アパレルECが従来抱えてきたAIにまつわるジレンマを解消する画期的な存在となる可能性を秘めているのだ。