マーケティング
2020.03.04
ワークマンが楽天脱退。自社ECの強みを改めて考える
作業服専門店でありながら、広い世代から支持を集めるワークマン。楽天を通じて好調なネット販売を続けてきた同社だが、楽天脱退を決定した理由はどこにあったのだろうか。
ワークマンの売り上げとEC
ワークマンは日本国内に多くの直営実店舗を持つ、ワークウェアおよび関連製品を取り扱うブランドだが、その売り上げはうなぎのぼりだ。
店舗からECへのシフト
2018年の売上高は669億円、2019年の8月の売上高は前年比で約160%増加と好調な売れ行きを見せるワークマンだが、そんな成長を支える根幹となっているのは、今のところ実店舗だ。
今回、楽天からの脱退を発表して大きな注目を集めたワークマンだが、実はこの会社の売り上げにおけるECの割合は、わずか3%に止まっている。そのためECがなくても十分に運営が可能なはずだが、それでもなおECにおいて動きを見せているのはなぜだろうか。
以前からあった自社EC化計画
実のところ、ワークマン社内においても楽天脱退の前から自社ECの強化については話が進んでおり、今回の脱退は契約更新のタイミングでもあったことから決めたことであったとダイヤモンドオンラインでは紹介されている。
参考:ダイヤモンドオンライン「ワークマン楽天撤退の裏事情、目指すは『ZARA』『ユニクロ』流の自前EC」
https://diamond.jp/articles/-/227595?page=2
もともと楽天市場への依存度も低く、実店舗販売がメインとなると、楽天からの脱退もそこまで難しいことではない。ワークマンにとっては、世間が考えるほどの大事でもなかったと考えられる。
ワークマンがEC強化に踏み切った理由
では、楽天を脱退したワークマンが、ECを自社で強化していきたい理由はどこにあるのだろうか。
若年層の需要増加
一つは考えられるのは、ワークマンブランドの若年層における需要の増加である。
これまでは農業や漁業、そして製造業や建築業など、特定の業種に携わる人にしか需要のなかった、ヘビーデューティな作業着が、私服として一般的に着用する人が増えているのだ。
特に目立った新たな需要として、若年層の女性にワークマンのウェアが好評を博していることが挙げられる。
「ワークマン女子」という言葉が取り沙汰されるように、オシャレ需要から遠い存在と思われていたワークウェアが、ファッショナブルなアイテムとして扱われているのだ。
もちろん女性だけでなく、男性からもファッションとしてのワークウェアアイテムの人気は非常に高い。ワークマンは今や、一つのファッションブランドとして認知されているようになっているのである。
Amazonの脅威
そんな作業服人気の中、ワークマンが脅威として認識しているのがAmazonの存在だ。
世界最大のオンラインショッピングサイトであり、日本でも老若男女を問わず人気のAmazonに、ワークマンは自社ECの強化によって対抗しようとしているのだ。
東洋経済オンラインによると、目下ワークマンが取り組んでいるのは配送スピードの高速化だ。
参考:東洋経済オンライン「ワークマンが『新型ECサービス』を始めるわけ」
https://toyokeizai.net/articles/-/309898
現状のワークマンのシステムでは、オンラインの場合注文からお届けまで3~4日ほどかかっており、注文の当日、あるいは翌日にも届けてしまうAmazonのスピード感にはまるで対抗できていない。
そこでワークマンは自社の在庫管理や需要予測システムを刷新し、自社の配送便との連携強化によって、これまでにないスピードで注文者に商品を届ける仕組みづくりを実現しようとしているのだ。
ワークマンの商品が持つ強み
もともと、ワークマンの扱う商品は非常に実用性が高く、安定した売り上げを期待できるラインナップであることも、EC強化にはプラスに働いている。
流行に左右されない「作業服」
今でこそファッショントレンドになっている作業服だが、ミリタリーやヘビーデューティ関連のアイテムはトレンドの中でも廃れにくい。
仮にワークマンブームが下火になったとしても、実用性を求めてワークマンの商品を購入したいが、近くに店舗がないという潜在顧客は日本中にいることが考えられる。長期的に見れば、ワークマンのオンライン強化は日本のEC市場において大きな存在感を発揮するきっかけにもなりそうだ。
買い足し、買い直し需要も大きい
また、ワークマンの作業服はその耐久性に定評があるものの、何度も現場仕事で使い込んでいると、流石に傷みや破れも出てくるものだ。
そのため、ワークマンのウェアには買い足しや買い直しの需要も存在しており、一度その使い勝手に惚れこめば、リピーターがしっかりとついてくれる仕組みが完成されている。
EC強化によってワークマンのアイテムを手に取る入り口が広がれば、高い確率でリピーターになり得る顧客の獲得を狙うことが十分できるだろう。