事例にみる優秀サイトのポイント
2018.05.21
後発企業はカテゴリーの法則を活用せよー「丈詰め服」という新カテゴリーで一番手になり急成長「UNTUCKit」
ファッションECは飽和状態だ。大手から中小企業、個人が運営するECサイトまで百花繚乱。
後発企業は顧客にどうやって自社のECサイトを認知してもらえるのかが死活問題だろう。
後発企業にとって有用なマーケティングの法則がある。
その法則とは「カテゴリーの法則」だ。
新たな商品カテゴリーを創り出し、そのカテゴリーで一番手になることを薦める法則だ。なぜなら同じカテゴリーだと一番手は顧客に認知してもらえるものの2番手、3番手への認知はどうしても低くなってしまうからだ。
「カテゴリーの法則」はマーケティングの古典ともいえる本『売れるもマーケ、当たるもマーケ』で取り上げられているマーケティングの一大法則である。
まさにこの「カテゴリーの法則」に忠実になって新たな服の商品カテゴリー「丈詰めシャツ」を創り出し、そのカテゴリーで一番手になって成功を収めたのが「UNTUCKit」だ。
2017年売上は1億ドルと推測されている(2011年設立から数年間はECサイトでの販売で急成長。2015年に実店舗を持ち、現在25店舗)。
「世界で一番丈詰め服の研究をした」ブランド
UNTUCKit創業者Chris Riccobono氏は服を購入したくても服の丈が長いものばかりで、格好悪いと不満を抱いていた。丈の短い服を探してみたのだが、なかなか見つけることができなかった。そこで、丈の短い服を専門で販売するサイトがあればと考え「UNTUCKit」を設立したのだ。
Chris氏の言葉を借りると「世界で一番丈詰め服の研究をした」というくらい満を持して丈詰め服をリリースした。
当初、スポーツラジオと航空機のマガジンに広告を出稿したところ大きな反響があった。しかも、ラジオの広告はビジュアルで表現できないのに関わらず。これは、ほとんどの男性が丈が長いことによっぽど不満を持っていたことを示している。
UNTUCKitの顧客ターゲットは35-65歳とのことだが、20代から80代まで非常に幅広い年齢の顧客に購入されているという。
新カテゴリーを創り出し、そこで一番手になる
丈を詰めた服というのは他ブランドも販売してはいるものの、そのカテゴリーで専門ブランドを創り出したのはUNTUCKitが初。丈詰め服という新カテゴリーで一番手となったUNTUCKitは競合がいない市場で勝ちを収めたのだ。
ただし、カテゴリーの法則は言うは易く行うは難しである。
UNTUCKitがいかにしてカテゴリーの法則を実行しているのか見ていこう。
まず、そもそもブランド名UNTUCKit自体が「丈詰めする」という意味である。
名前を聞いただけで丈詰めされた服が販売されているのが明らか。
新たなカテゴリーを顧客に認知してもらうのにECサイトが重要な役割を果たしている。
ECサイトのフロントページには丈詰めされたぴったりフィットしたシャツを着たモデル写真と従来のシャツと丈詰めされたシャツとの比較イラストを配置している。
個別の商品ページを見ていこう。
88ドルの丈詰めシャツ「CANON WRINKLE RESISTANT」。
服が丈詰めされ、体にフィットしていることが確認しやすいモデル写真が掲載されている。
後ろ姿も同様だ。丈詰めされ、フィットしていることを確認しやすいモデル写真が掲載されている。
ファッションECにとっても有用な「カテゴリーの法則」
UNTUCKitのECサイトは特段、目立った工夫の見られるサイトではない。非常にシンプルなデザインとなっている。
ただし、カテゴリーの法則に忠実になって新たなカテゴリーの服「丈詰め服」としてUNTUCKitの服を訴求することを実行しているだけ。
ただ、これまでなかったカテゴリーだからこそ、一番手になれるし顧客からも認知されやすい。既存のカテゴリーで勝負するよりも、新たなカテゴリーを創り出すことの意義がそこにある。
UNTUCKitの成功事例はファッションECにとっても「カテゴリーの法則」が有効であることを示すお手本のような事例だ。