マーケティング
2018.05.18
人工知能が最良のカスタマージャーニーを提案 – Adobe Senseiの新機能「Perfect Path」
画像引用元:Adobe
先日開催されたAdobe Summit 2018において、Adobeは開発中の新技術を発表した。Adobeが提供する人工知能「Adobe Sensei」の新機能として実験が進められている「Perfect Path」を取り上げ、その概要やアパレルECへのインパクトについて解説する。
ますます進化を遂げるAdobe Sensei
2018年の27日から29日までの3日間に渡り、米Adobe社によるマーケティングイベント「Adobe Summit 2018」がアメリカのラスベガスで開催された。Adobe Summitとは、Adobe社が主催している、マーケティングとビジネスの未来にフォーカスしたを業界最大規模のイベントで、WebマーケッターなどAdobe社の製品を使っている企業や関連企業などが世界各国から参加。今年も13,000人を超える参加者が集まった。毎年、数百のセッションが行われ、各界の著名人が登壇するキーノートのほか、プロのミュージシャンによるコンサートなども開催され、かなりの盛り上がりを見せる。ちなみに今年のキーノートには、ヴァージン・グループの創設者であるリチャード・ブランソン氏らが登場。Beckがパフォーマンスを披露した。
Adobe Summitでは日程の2日目に「スニークス」と呼ばれる開発中の新技術の内覧会のようなセッションが行われるのが慣例となっている。著名人をホストとして招いて、楽しい雰囲気で行われるのが習わしだ。今回は『サタデー・ナイト・ライブ』などで知られる女優のレスリー・ジョーンズ女史がホストを務めた。
スニークスで目立ったのがAdobe Senseiによるクリエイティブなマーケティングテクノロジーだ。Adobe Senseiとは、人工知能やディープラーニングを応用したインテリジェンスのこと。作業の効率化や高度なデータ分析によって未来のデジタルマーケティングをサポートするAdobe社製品の中核ともいえる存在だ。
最良のカスタマージャーニーを作成してくれる「Perfect Path」
今回の「スニークス」で発表されたAdobe Senseiが可能にする新たなデジタルマーケティングのなかで、アパレルEC運営の観点でとりわけ興味深かったのが「Perfect Path」だ。これは、顧客ごとにパーソナライズされたカスタマージャーニー、すなわちユーザーが商品やサービスを知り、最終的に購買するまでの、カスタマーの「行動」、「思考」、「感情」などのプロセスをAdobe Senseiが自動的にデザインするというもの。セッションでは、ECサイトを訪問した顧客のユーザー属性に応じて、カスタマージャーニーが作成されて行く様子のデモンストレーションが行われた。
あらゆる可能性が図に表される「体験グラフ(Experience Graph)」では、顧客の属性がツリー状に管理される。例えば、「地方在住」「都市在住」「郊外在住」などから特定のものを選び、さらに「学生」「知的専門職に就く青年層」などのサブセグメントを選択していくという具合。すると、最適なカスタマージャーニーとともに、好まれ安い商品や、効果が期待できるキャンペーンなどが提案される。顧客の属性ごとに、どのタイミングでクーポンやリマインドメールを送ればいいか、またどんな商品をどのデバイスに向けてレコメンドすればいいかを教えてくれるというわけだ。あとは、Adobe Senseiが作成したワークフローをもとに、具体的な施策を打ち出していけばいいということになる。
「Perfect Path」の実用化は早くて数年後
アパレルEC界隈でも人工知能に関する話題は尽きない。AIやディープラーニングを実装しているアパレルECは少なくないはずだが、コーディネートの提案や商品のレコメンドに活用されているという例が中心。しかも精度は必ずしも高いとはいえず、例えば売上にどれほど貢献しているのかという話はあまり聞こえてこないように思う。
その点において、想定されるコンバージョン率まで教えてくれるというから、「Perfect Path」ができることはアパレルECにとってずっと実践的だ。「スニークス」で紹介される新技術は、どれも開発中のもので、進捗率は6割程度。立ち消えになってしまう可能性もないとはいえないが、数年後には実用化される見込みだ。
最後に
「Perfect Path」が実用化されれば、現在Webマーケターが行なっている業務の多くを機械まかせにできるようになる。効率よく商品を売るための施策を人間がいっさい考えなくてよくなる時代の到来も、もしかしたらそう遠い将来ではないかもしれない。アパレルECを「服を売るための努力が徒労に終わること」から解放するデジタルテクノロジーの未来に大いに期待したい。