セミナーレポート
2016.10.24
成功アパレルECサイトが導入する最新の取組み・ノウハウを大公開 ~インスタグラム活用、サイズマーケティング、AI(人工知能)、O2O~
2016年10月14日、株式会社ブティックスターをはじめ、株式会社メイキップ、Emotion Intelligence株式会社、コマースリンク株式会社が登壇する4部構成のECセミナーが開催された。
セミナーでは、それぞれのテーマごとに、アパレルECサイトが売上向上のためにすぐに取り組める具体的施策やノウハウを事例交えて解説していた。今回は本セミナーの概要を紹介する。
第一部
【講演テーマ】 アパレルEC×インスタグラム ~インスタグラムの活用方法~
株式会社ブティックスター 代表取締役 高田 博之
Eコマースに限ったことではないが、WEB全体の傾向として流入経路が変化してきている、と高田氏は述べる。従来の主要流入経路は検索エンジンであったが、スマートフォンが普及するにつれて検索エンジンからの流入が減りSNSからが主要流入経路となってきているという。
オンラインメディア向け解析ツール「Parse.ly」が行った解析によると、アメリカにおける流入経路は2015年7月にFacebookがGoogleを完全に上回るようになり、日本でも後追いでFacebookが流入経路として追い上げているという。
Eコマースとしてもこの状況を捉えてうまく活用していく必要があり、アメリカでは、SEOだけではなく、FBO(Face Book Optimization/Facebook最適化)という概念が出てきている、と高田氏は述べている。
また、WEBにおけるもう一つの変化として、情報配信の仕方が挙げられるという。これまでのSNS上でWEBサイトへのリンクを拡散し、WEBサイト上でコンテンツを配信する方法から、WEBサイトは並列した中の一つの情報の出先という位置付けとなり、一つのコンテンツを各媒体に合わせて再編集して送り出していく形へと変化しているというのだ。
いわばECサイトは、メディアモデルからパブリッシャーモデルの分散型メディアへと移行しつつあり、WEBサイトに訪問しなくてもSNS上でコンテンツの配信が完結するようになってきているという。
なぜこのように急激に変化したのかというと、この方法であれば多くのユーザーを獲得でき、多くのリーチを獲得できるから、ということである。
そして、アメリカでは既に、WEBサイトを持たずにSNSだけの展開で収益化している「TASTY」や「DELISH KITCHEN」など料理系のメディアが存在する。国内でも、SNSだけの展開ではないが、「北欧、暮らしの道具店」が分散型メディアでうまく集客できているという。
また海外でSNSを運用して成功している事例は、他にもたくさんある、と高田は述べる。
たとえば、広告をまったく使わずに、創業から8年で売上100億円以上のECサイトへ急成長した「Nasty Gal」が挙げられる、ということだ。この「Nasty Gal」はあらゆるSNSをそれぞれの特性を生かしてフル活用し、Instagramのフォロワー数約1,800万人を記録。1投稿ごとに1万以上の「いいね!」が押され、数百以上のコメントが集まると言われているという。
また、ECサイト開設からわずか1週間で2400足を販売したスニーカー専門ブランド「The Greats Brand」は、ビジネスの立ち上げ段階からSNSを積極的に取り入れることを決め、マーケティングにはまったく費用をかけずに成功した事例となっている、ということである。
成功事例は国内にも存在するという。
たとえば、商品のサンプルをInstagramにアップし、ユーザーの反応を見ながら製品化や値決めをしている「マイクローゼット」である。
“30代のママ”が3万円の資金で創業したECサイトであるが、いまや年商8,000万円まで成長。実店舗を持たず、広告にも費用をかけず、Instagramメインで情報発信を行い、売上を伸ばしているという。
次に高田氏は、アメリカの「FLIGHTMEDIA」というメディアに発表された「フォロワー数を増やすための11の方法」を抜粋して紹介した。
・関連性のあるテーマの他のアカウントの投稿に『いいね!』を押す
20の「いいね!」に対して1人のフォロワーが獲得できるとされているという。
・関連性のあるテーマの他のアカウントの投稿にコメントを残す
「いいね!」よりもさらに効果的だとされている。
・量より質。投稿数を増やすことよりも、完璧な投稿を心がける
1日あたりの投稿数は多くても逆にエンゲージメント率が減っていくという統計があるので、投稿は1日1回までと考えた方がよいとされている。
・フォロー効果の高いハッシュタグを付ける
インフルエンサーが付けていて、なおかつ投稿数が少ないハッシュタグが効果的になるという。
・フィルターを使う
アメリカのInstagramでは「Mayfair」のフィルターの効果が高いとされている。
・ポストするタイミングを図る
木曜か土曜の午後4時~5時の間に投稿するのが効果も高いとされている。ただし、日本でも通用するタイミングなのかは検証していく必要があるという。
・フィード全体のクオリティ、テイストに一貫性をもたせる
とくにホーム画面で世界観を統一させて見せていく必要がある。最近では一つの写真を分割してグリッドで表示することで、フォロワー数を伸ばしているケースも増えているという。
アパレルECにおいてはSNSの活用、とくにInstagramを活用することが成功事例となる、と高田氏は最後に締めくくった。
インスタグラム活用方法関連記事
・【Instagram×EC】 Eコマースにおけるインスタグラムの活用方法
第二部
【講演テーマ】 サイズ不安・不満を解消!サイズレコメンドエンジンunisize
株式会社メイキップ 代表取締役社長 柄本 真吾 氏
日本におけるインターネット利用者は1億人を超えるにも関わらず、アパレル製品に関するECサイトの利用者はその中のたったの9%だ、と柄本氏は述べる。
現在、15兆円にも上るアパレル市場のうち、EC市場その9%である1.3兆円だという。しかし2020年には、そのEC化率が15%にまで伸びて2.3兆円の市場になるともいわれている、ということである。
ただ、アパレルECサイトの利用に対する不安も多く、利用へと踏み出せないという人はまだ多い、と柄本氏は述べる。
アパレルECに対する不安を具体的に調べてみると、約86%がネットショッピングで服を買うことにリスクを感じているという(出典:消費者の個人属性が服のネットショッピングとリスク削減行動に及ぼす影響の考察)。
その内訳をみると、「購入前に実物の商品を確認できないこと」という理由が約70%も占めているのである。
また、1年の間にアパレルECにおける失敗体験をもつユーザーは約6割も存在しており、その内訳は47.7%がサイズに対する悩み、続いて41.5%が生地感に対する悩みとなっているという。
その結果、返品率がなかなか減らないという問題も生じているのである。常に20%以上をキープし続ける返品率があり、少なく見積もって市場1兆円で換算しても2,000億円の損失が発生している、というのだ。
その問題に対して、ECサイト側としても解決策を模索している、と柄本氏は述べている。
よく見られるケースとしては、アイテムの寸法を記載して利用者にサイズの判断を仰ぐ対応である。ただそれでは、サイズ名称は各社バラバラ(フリー、S/M/L、1号、2号など)、部位の名称も各社バラバラ(バスト、身幅、胸囲)のため、ユーザーが判断するには難易度が高すぎる状況だという。
なお、ECサイトでは各社各様の対応をしており、「ZOZOTOWN」では過去の購入履歴とサイズを比較できる機能を搭載。会員に対して、以前購入したアイテムのサイズ、寸法を提示しているということだ。「オンワード」「アダストリア」でも同様の対応の導入が見られるという。
また、「nano・universe」では、それよりも一歩踏み込んでおり、購入しようとしているアイテムに対して、以前購入したアイテムのサイズとの比較を細かくグラフィックで表示するといった対応をしているという。
そのほか「VIRTUSIZE」では、保有している洋服とECサイト上の洋服とをグラフィックで比較。身丈、身幅、ゆき丈など複数の部位を採寸し入力するといった対応を図っている、と柄本氏は述べている。この方法は、「ディノス」や「ユナイテッドアローズ」にて導入されているという。
それだけでなく、ECサイト上のサイズフィッティング・サービスも登場してきており、専用のレギンスを着用すると、自動で体のサイズを採寸し自分にぴったりのジーンズを探すことが可能なサービスを「LIKEAGLOVE」が採用しているという。また、「FlickFit」では、専用売場のスポットで足の形をスキャンしECサイトで自分のサイズを登録すると、自分の足に合った靴が推奨されるという対応をしている、と柄本氏は述べる。
ひるがえって、株式会社メイキップが開発したサービス「unisize」では、アンケートに答えることで最短1分で採寸が完了しゲージで視覚的に表示するサービスを開発。「夢展望」や「オットージャパン」が導入しているという。
「unisize」のサービスの特徴は下記のとおりということだ。
・簡単なアンケート
メジャーや特別なスポットへの訪問は不要。気に入っているブランドやサイズと身体情報(身長、体重、年齢、体の特徴)といった簡単なアンケートに回答するだけでレコメンドしてくれるという。
・高いネットワーク効果
基本的に会員登録をせずに利用でき、同一アイテムであれば別の商品でも追加登録の必要はないという。さらに、「unisize」の導入サイトであれば、他サイトを跨いでサイズをレコメンドできるということだ。
・ソフトウェアテスト企業と連携して、モニターによるサイズ精度調査を定期実施
「推奨サイズが合っている。他のサイズと比較しても身幅、袖丈共にぴったり」という着用コメントをもらっているという。
なお、「unisize」を導入することにより、「夢展望」では購入率が2.5倍、平均購入単価が1.3倍向上し、返品率も25%下げることができたという。
「人類の身体情報をインデックス化し『サイズのない世界』を実現する」というサービスビジョンを持ち、「unisizeがサイズマーケットのインフラになる」ことを目標に展開しているという株式会社メイキップ。
現在、「unisize」は10社がサービスを導入済みであるが、年内には大手アパレルブランドを中心に20~30社が導入予定であり、2017年度中には100社弱に導入される、と柄本氏は最後に述べている。
第三部
【講演テーマ】 「こないだちょっと気になったあの商品、どれだっけ?」
Emotion Intelligence株式会社 セールスグループ 石山 裕都 氏
ユーザーの潜在的な興味商品を人工知能が掘り起こす!
AI搭載お買い物リスト自動作成機能 『インタレストウィジェット』最新事例
WEB上の無意識の動きを機械学習でリアルタイムに解析し、価値あるデータへと変換・サービス化するテクノロジーベンチャーであるEmotion Intelligence株式会社は、人工知能(AI)を活用してサービスを展開しているという。
サイトを訪問したユーザーのマウスやスクロールの動きから、ページや商品への興味、コンバージョンまでの近さを解析する機械学習システムのデータを解析できる人口知能「Emotion I/O」を活用してリリースされた「ZenClerk」では、アイテムの購入を迷っているユーザーの購買意欲の高まりを察知しクーポンで「最後の一押し」をするというサービスを展開しているということだ。
さらに、「Emotion I/O」をもとに開発し2016年8月にリリースしたのが、商品に対する興味をデータベースにサービス化したものが自動買い物リスト作成機能「Interest Widget」である、と石山氏は述べている。
「Interest Widget」とは、「ユーザーが特定のアイテムに対してどのくらい興味を持っているのか」という部分に焦点を当てたサービスである。サイト内を回遊していくなかで各アイテムに対して興味があったかどうかを解析し、興味がありそうなものだけをリストアップし提示していくという機能を持っているという。
「Interest Widget」では、一定数の興味ある商品がストックされるとヒントビューが表示されるという。そしてページを遷移すると、興味レベルが高い順でリスト表示。必要のないアイテムはユーザーの任意で削除することもできるのである。
この「Interest Widget」を活用することで、ネット上で買い物をするとき、以前閲覧をして良かったと思った商品にたどり着けなくなったり、忘れてしまったり、といったことがなくなる、と石山氏は述べる。
ECサイトを見ているユーザー側には下記のような問題が生じているが、ユーザーがこのような思いをせずに気持ちの良い買物をしてもらおうと開発されたサービスであるという。
・気になっていたアイテムを間隔を空けて見ようとすると最初から探さないといけない
・「閲覧履歴」は、一度閲覧しただけで興味がないアイテムで一杯になっている
・スマートフォンではページバック自体が面倒だ
・お気に入り登録をしようと考えても会員登録をしないと使えず、その手続きに手間がかかる
「Interest Widget」は、マウスやスクロールの動き、画像の切替えなどの動きを検知し、潜在的な興味をそのままストックして自動でリストを作成していくというのだ。
そこで「Interest Widget」を導入することで、ECサイト運営側には以下のようなメリットが生じるということである。
・ユーザーの潜在的な興味を提案することでユーザーの購買意欲を刺激し、売上を向上させる
前回のサイト訪問時のデータを引き継げるので、パーソナライズされた売り場にできる
非会員ユーザーでも「お気に入り」のように使うことができるため新規ユーザーの獲得を増やせる
「Interest Widget」を導入するには、2種類のタグをサイトに設定するだけ。初期導入費用は20万円であり、その後は、PVをベースとした月額固定費となっているという。たとえば、月間サイトPV数80万のサイトは月額15万7,500円とのことである。
なお、「Interest Widget」には今後も様々な機能を追加していく予定である、と石山氏は述べている。たとえば、価格の変動なども表示される機能や、「いいね!」ボタンを押したアイテムだけを集めた「お買い物リスト」が表示される機能も開発しているという。
第四部
【講演テーマ】 monococoで実現する消費者志向のO2O
コマースリンク株式会社 代表取締役社長 永山 淑子 氏
コマースリンクの永山氏は、冒頭で小売の形式の変遷を説明している。
日本における小売の形式は、19世紀末から20世紀初めまでの「座売り」から、デパートに代表されるような「展示(陳列)販売」が現在の小売業まで続き、21世紀になってからは「EC」の時代が到来している、と永山氏は述べる。
「展示(陳列)販売」の時代、商品情報は店舗が消費者より圧倒的に保有しているが、消費者は商品を比較検討することはできる。ただ、顧客情報は一見の顧客も多いため店舗側が把握しきれているとはいえないという。
そのため、店舗・消費者の双方が十分な情報を持っているとはいえないのである。
それがインターネットの普及により出現した「EC」の時代では、消費者は商品情報を簡単に得ることができるようになり、比較検討がしやすくなっているという。また店舗は、ネット上での購買履歴や行動履歴などにより顧客の情報を把握しやすくなったのである。
いわば、「EC」の時代では店舗・消費者ともに商品情報・顧客情報を持てるようになったといえる、と永山氏は述べている。
そして今後は、「展示(陳列)販売」と「EC」がキレイに融合した「オムニチャネル」の時代がやってくるだろう、と永山氏は予想する。
ただ、「EC」が主流となっても店頭で買い物をする理由には、下記のような要素が存在するという。
・店舗ではアイテムを実際に手に取って見ることができるし試着もできる
・「他にもいいアイテムがあるかも?」という期待感がある
・その場ですぐに入手でき家に帰ってすぐにフィッティングできる
そこで、これからは店舗とECとの関係も変化していかざる負えないという。その理由としては、インターネット上での情報開示が質・量ともに増えるため、店舗にない商品についてはスタッフがネットショップを案内するという補完関係になるのである、ということだ。
しかも今や、顧客が新商品・新サービスの情報を認知するメディアの1位はスマートフォンとなっているのである。2015年5月のアサツーディ・ケイによる調査によれば、情報の入手先を90%(複数回答可)が「スマートフォン」と回答しているという。
いつでもどこでもインターネットにつながるデバイスをみんなが手に入れたことで、消費者は「何かを知りたい」「何かを買いたい」「どこかへ行きたい」と思ったその瞬間にスマートフォンを使って情報収集をするようになった、と永山氏は述べる。そのためスマートフォンで調べることを前提として、実店舗でもすぐに見せられるものがないといけないという。
そのためには、実店舗での販売を支援する下記のようなデジタルテクノロジーが必要になる、と永山氏は述べている。
・店舗の認知を広げる
新規顧客に対して、スマホサイト、スマホアプリ、ネット広告、SNS広告(Instagram、twitter、ブログ、LINEなど) が重要となるという。
・来店を促す情報を届ける
既存顧客に対しては、メルマガ、アプリメッセージを活用した「私だけ」に向けた特別感があるメッセージを送ることが重要。新規顧客に対しては、「お店(商品)」まで迷わずに行けるように誘導するためのページ作りが重要となるという。
・店内での購買を促す
「あなたのためだけの」「欲しいタイミング」で適切なメッセージを送ることが大事。そのためには、「お客様はどんな人?」「どの商品に興味をもっている?」「どんな行動をとっている?」「どんな情報を送ればお店に行きたくなるか?」を考える必要があるという。
上記の中でとくに永山氏が強調したのは、ファッション系の店舗は飲食店などに比べて「店舗案内」が弱いということ。ECサイトや商品が掲載されているページから実店舗への案内導線がわかりにくいのである。
この問題を解消するためには下記のような対策が必要となるという。
1.ユーザーが興味をもった商品やコーディネートから店舗の場所が簡単に探せるようにする
2.GoogleMapが解釈しやすい表記にする
Google Mapを正しく呼び出すためには、都道府県から記載して番地表記をし、町名と番地の間、番地とビル名の間、ビル名とフロアの間に半角スペースを入れる。
3.正しく地図上に表すためにgeoデータを設定する
正確な店舗MAPの表示には位置を表すgeoデータ(詳細な緯度・経度)を使うと精度が高い地図で案内ができるという。
このような思いを込めてコマースリンク株式会社が開発したツールが「monococo」ということだ。
2015年11月19日にアプリをリリースし、2016年10月5日にはWEB版をリリースした「monococo」は、商品情報や店舗情報、店頭在庫情報、コーディネート情報など、WEB上で横断的に収集して表示できるようにしたサービスである。
「monococo」を活用することにより、ネット上に散らばったコンテンツをいちいちまとめることなく再利用できるということである。将来的には提供サービスにより課金する予定ではあるが、現在の出店料は無料だという。
なお、「monococo」を使うことによるユーザー側のメリットは下記となる。
・欲しい商品を取り扱っている店舗がわかる
・在庫がある店舗がわかる
・複数のブランドの商品やコーディネートをまとめてみることができる
・店頭でもネットでも買える
また、「monococo」を使うことによる店舗側としてのメリットは、下記の項目が挙げられるという。
・手間をかけずに安価にオムニチャネルサービスを構築することができる
・自社独自のオムニチャネル施策と併用できる
・新規顧客を獲得できる
・オンライン/オフラインでのユーザーの行動を知ることができる
「monococo」を活用すれば、「店舗の認知を広げる」ことと「来店を促す情報を届ける」ことをカバーでき、「店内での購買を促す」こともサポートできるというメリットがある、と永山氏は述べている。