マーケティング
2016.10.24
【Instagram×EC】 ECサイトにおけるインスタグラムの活用方法
インスタグラムの具体的な活用方法、施策について説明する前に、まずはSNS全般に関する状況について説明する。SNS全体のトレンドを抑えた上で具体的な施策について説明したほうが、より理解が深まるとともに、自社のECサイトではどのような施策をすべきかが把握できると思われるからである。
SNSの現況 ~その1~
流入経路の変化
従来のWEBサイトへの流入経路の多くは検索エンジンからであったが、スマホ化の流れで検索するユーザー、検索頻度が減っているため、SNSのタイムラインからの流入が多くを占めるようになってきている。
SNSからのアクセスがどれくらい増えてきているのかを具体的に示したグラフが下記である。
ユーザー流入元を解析したグラフ
オンラインメディア向け解析ツール「Parse.ly」が約400のオンラインメディアのユーザー流入元を解析
2014年の年末頃に送客数でGoogleと同等のパワーを持ち始め、2015年7月にはFacebookがGoogleを完全に上回る。
このグラフは米国での状況を示したものであるが、日本国内も時間差で同様の状況になりつつあることが見込まれる。
ECサイトの場合だと、SNS経由のユーザーからのコンバージョン率はあまり良くないため、ECサイトの運営者はこの状況をさほど重要視していないかもしれない。しかし、WEB全体としてはSNS経由でのトラフィックが増えている、という状況の変化は確実なので、ECサイトとしてもうまく活用したほうが賢明であろう。
米国では、SEOならぬ、
FBO: Face Book Optimization(Facebook最適化)
という言葉が一般的になりつつあり、FBOによってトラフィックを拡大させているメディアも目立ってきている。
Facebookのアルゴリズムに対応するメディア企業
“Little Things”は立ち上げて2年半余りで月間2億8500ビュー、ユーニークユーザーは5000万も獲得するまでに成長。トラフィックの約80%はFacebookからのものになっている。
SNSの現況 ~その2~
情報配信の仕方の変化
情報配信の仕方が従来の「メディアモデル」から、「パブリッシャーモデル(分散型メディア)」の時代になりつつある、と言われている。従来のメディアモデルは、下記の図のように、SNSでWEBサイトへのリンクを拡散し、WEBサイト上でコンテンツを配信する、という、お馴染みの情報配信の仕方である。それに対して「パブリッシャーモデル(分散型メディア)」では、WEBサイトはその他のSNSと並列の1媒体であり、各媒体の特性に合った形にコンテンツをリパッケージしてコンテンツを配信をしていく。ユーザーは必ずしもWEBサイトに来る必要はなく、SNS上でコンテンツが完結する、という情報配信の仕方である。このような、自社サイトへの集客に重点を置くのではなく、SNSや各サービス上にコンテンツを配信することで、実はより多くのユーザーを獲得できる、というメリットが出てくるのである。
極端な例ではあるが、WEBサイトを持たずにソーシャルメディア上だけにコンテンツを配信し、そのリーチを最大化する分散型メディアが増えている。
日本国内で分散型メディア展開で成功している例を挙げると、「北欧、暮らしの道具店」である。
ネットショップをメディア化することで大成功を収めた代表例として挙げられることの多い北欧暮らしの道具店は、やはりインスタグラムの運用に力を入れている。
Instagramフォロワー:44万人(2016年8月現在)
Facebookファン数:38万人(2016年8月現在)
この「北欧、暮らしの道具店」もコンテンツを各媒体にただリンクを流していくのではなく、各媒体の特性に合った形にリパッケージして配信している訳だが、具体的にどのように配信しているかを説明する。
【WEBサイトの場合】
特集ページの形でハウツーコンテンツを展開
【Instagramの場合】
投稿を2回に分け、サイトに来なくても分かる形で展開
完成イメージと提案
4つに分けた分解写真と実際の作り方。
【Facebook】
動画で配信(Facebookでは動画のエンゲージメント率が高いため)。
北欧、暮らしの道具店では、分散型メディア展開の効果を下記のように発表している。
SNSの現況 ~まとめ~
SNSの運用力が益々問われるようになっている。
分散型になっているとは言え、最終的にはユーザーにECサイトにたどり着いてもらう必要はあるため、ECへのユーザー導線も確保していく必要がある。
逆に、SNSの運用がうまくできるとECサイトも爆発的に拡大できる可能性が出てくる。次章ではSNSの運用をうまくやることで爆発的に成功した事例を紹介する。
成功事例 【海外】
広告に頼らず、8年で売上100億円のECサイトへ急成長!!「Nasty Gal」
Instagramフォロワー:約1,800万人
発信頻度:1日2回程度
毎回の投稿に1万以上のいいね、数百コメントが集まる。
「Nasty Gal」は、学校をドロップアウトした落ちこぼれガールが、22歳の時(2006年)に立ち上げたファッションECサイト。インスタグラム、タンブラー、フェイスブック、ユーチューブ、ピンタレスト、ツイッター、ありとあらゆるSNSを駆使して成功した事例である。
当初は、ほんのお小遣い稼ぎのつもりで、マーケットプレイス「eBay」の中で、ヴィンテージファッションのSHOPを開設。
それが大ヒットして、当人も驚くスピードで急成長。立ち上げから8年後には、自前のECサイトで売上100億円以上、従業員数350人以上の巨大ファッションECへと急成長した。
万引きやゴミ漁りをしていた落ちこぼれガールだったという創業者ソフィア・アモルーソは、アメリカで最もHOTな若手女性社長として注目を浴びている。
その様子は、今話題の映画『マイ・インターン』で描かれているストーリーに似ていて、主演のアン・ハサウェイが役作りのために会いに行ったと言われている。
92万人のInstagramファンを獲得して売上が10倍以上増加した「Sabo Skirt」
Instagramフォロワー:約92万人
発信頻度:1日5回程度
毎回の投稿に1万〜2万前後のいいね、数百コメントが集まる
「高級品に見られる流行を手頃な価格で」をコンセプトに、ソーシャルメディア上で徹底したリサーチを行い、自社ブランドで流行の服を作りつづけている。
ファッションが大好きだった2人は、自分たちの好きなファッションや、新しく買ったアパレル製品を紹介するファッションブログ「Sabo Skirt」を2010年に開始。週に1〜2回の頻度で、オリジナルのファッションコーディネート写真を投稿すると、その写真のナチュラルさと、読者とのエンゲージメントを大事にする姿勢が受け、ブログはすぐに話題になった。
人気の高まりとともに、ブログの読者から「あなたたちの着ている服はどこで買えるのか」という質問も頻繁に受けるようになる。
自分たちのファッションセンスに自信を持った2人は、これを機にファッションブランドを立ち上げることを検討。2011年3月にはコウゾウカス氏の家を拠点に、独自ブランドを販売するECサイトを立ち上げた。
ストア開設直後の売上は週に数十着程度と、さほど大きくはなかった。状況が一変したのは、ECストア開始の10ヶ月後にInstagramアカウントを開設してからのことだ。
「Instagramのフォロワー数が急激に伸び始めて、売上も急成長したんです」(カラロウカ氏)
Instagramをはじめたことで、アカウントのフォロワー数は伸びに伸び、約92万人に達する。1日に少なくとも5回程度写真が投稿され、1枚の写真に1万〜2万前後の「いいね」がつくなどの盛り上がりを見せるようになったのだ。
成功事例 【国内】
店舗も持たず、広告もかけずにECだけの販売だけで売上を伸ばしている「マイクローゼット」
ポイントはインスタグラムによる情報発信とユーザーとのコミュニケーション
創業者は30代のママで3万円の資金で始めたECが年商8,000万円まで成長
子供が幼稚園に通い始め、自分のおしゃれにも関心が向けられるママ層がターゲット。
販売1ヶ月前からインスタグラムで商品をアピールし、「いいね」の数で反応を見ながら製品化を判断したり販売価格を決めたりしている。
Instagramノウハウ・具体的施策 ~その1~
フォロワー数を増やすためのノウハウ
米国の情報サイト“フライトメディアブログ”では「インスタグラムのフォロワーを増やすための11の施策」が公開されている。
主だったものを紹介する。
フォロワーを増やす施策① Like it Up
関連性のあるテーマの他のアカウントの投稿にいいねをする。
20のいいねをすることで、一人のフォロワーが増える、という統計が出ている。
フォロワーを増やす施策② Comment Like You Mean It
関連性のあるテーマの他のアカウントの投稿にコメントを残す。
アカウント側にとってみると、いいねよりもコメントのほうが目立つので、このコメントはどんな人がコメントしているのだろう、と気になるためコメントした人のプロフィールを見に行く、という流れを作れる。
フォロワーを増やす施策③ Post for Perfection
量より質。投稿数を増やすことよりも、完璧な投稿を心がける。
1日の投稿数が
・0.5回~1回未満の場合のエンゲージメント率:7.3%
・1回~2回の場合のエンゲージメント率:5%
・3回以上:2.4%
1日の投稿数は多くても1回と考えた方がよいでしょう。(Iconosquare調査)
フォロワーを増やす施策④ Become a #Pro
フォロー効果の高いハッシュタグを付ける。
アメリカのソーシャルメディア支援企業「Post Planner」はブログで、「新しいフォロワーを獲得するための25のハッシュタグ」をまとめている。
1. #love
2. #instagood
3. #me
4. #tbt
5. #cute
6. #follow
7. #followme
8. #photooftheday
9. #happy
10. #tagforlikes
11. #beautiful
12. #girl
13. #like
14. #selfie
15. #picoftheday
16. #summer
17. #fun
18. #smile
19. #friends
20. #like4like
21. #instadaily
22. #fashion
23. #igers
24. #instalike
25. #food
フォロワーを増やす施策⑤ Use Filters
効果の高いフィルターを使う。
Top 10 Instagram Filters:
1.Mayfair
2.Valencia
3.X-ProⅡ
4.Amaro
5.Earlybird
6.Rise
7.Hefe
8.Hudson
9.Lo-fi
10.Brannan
フォロワーを増やす施策⑥ Post at the Right Time
木曜か土曜の午後4時~5時の間に投稿する。
※下記は“フライトメディアブログ”以外からのノウハウ
フォロワーを増やす施策⑦
フィード全体のクオリティ、テイストに一貫性をもたせる。
特に、ホーム画面はアカウントのいわば”顔”。ホーム画面にどのように表示されるかにも気を付けてコンテンツを投稿すべき。Instagramユーザーは、好みの写真を見つけると投稿者のホーム画面を開き、雰囲気を見てアカウントをフォローするか否かを決める傾向がある。そのため、ホーム画面に表示される最初の9枚の投稿でブランドの世界観を演出し、 ターゲット層の心をつかむことが重要。
下記のように、1枚の写真をグリッドに分割し、全部が繋がった1枚の画像として見せるのも効果的。
フォロワーを増やす施策⑧
ユーザー参加型 投稿キャンペーン
一般的なやり方ではあるが、内容によってかなり成否が分かれる施策。
富士フイルム 『アスタリフト』の事例が優秀で成果を上げている。
【事例】
富士フイルム 『アスタリフト』
どのような工夫がされているかを解説する。
■投稿時につけるハッシュタグ2つ
「#アスタリフトホワイト」=商品名
「#幸せの赤と白」=ブランドカラー
⇒キャンペーン経由ではなくInstagram上で投稿を見たユーザーにも、製品名と合わせてブランドカラーやブランドコンセプトが伝わるように工夫されている。
■投稿画像のテーマ:赤や白をテーマに、「あなたが幸せを感じるお気に入りの写真」を投稿
身の回りにあるものや過去の写真でも参加をすることができるため、商品を持っていないユーザーの積極的な参加を引き出せる。
■投稿画像をECサイト内のキャンペーンページに掲載
投稿のテーマに色を指定しているため、統一感があり、UGC(ユーザーの投稿)を活用したブランディングサイトが出来上がっている。
Instagramノウハウ・具体的施策 ~その2~
ECの売上に直結させるノウハウ
ECの売上に直結させるノウハウ①
ECの商品詳細ページにユーザーの投稿画像を掲載。ユーザーボイスとして活用。ユーザーレビューというのは購入の決め手になりやすい、ことが一般的によく知られている。このユーザーレビューをよくあるテキストでのレビューではなくて、画像でのレビューとして活用する、というやり方である。
参考記事(繊研新聞 2016年2月24日発行号)
“購入した客が商品を身に着けた写真をハッシュタグと共に投稿すると、百貨店のサイトにそれが掲載されて、オンラインカタログのようになる。客は大量のサンプル写真を見て購入を検討できるため、購入率が上がっているというわけだ。”
ECの売上に直結させるノウハウ②
コンラッドホテルの事例
コンラッドホテルはインスタグラム上で世界各国のホテルだったり、風景の画像をアップしています。ユーザーが気に入った写真があれば、その画像からホテルの予約ページに移動できる、という施策内容。
どのようにやっているかというと、「ライク2バイ」というツールを使用し、アカウントのプロフィール画面からライク2バイのサイトにリンクを設置している。ユーザーがリンクをたどってライク2バイのサイトに行くと、インスタグラムと同じ画像が並んでいて、インスタグラムで気に入った画像をクリックすると予約画面に遷移する、というやり方である。
ECの売上に直結させるノウハウ③
ユーザーにプッシュしたい商品の投稿から、ECの商品詳細ページにユーザーを誘導
やり方を解説すると、まず、事前準備として、プッシュしたい商品のアカウントをインスタグラムで作成する(上記画面の中央)。そのアカウントのプロフィール画面にその商品の魅力を伝える画像を並べる。
事前準備が終わったら、次に、通常の公式アカウントから、そのプッシュした商品の投稿をする。当然その投稿からはECサイトに直接リンクを張れないため、サイトへのリンクではなく、事前準備で作った商品のアカウントへのリンクを設置する。そうすると、そのアカウントのプロフィール画面には商品詳細ページへのリンクが設置されているため、そこからユーザーをECの商品詳細ページに誘導できる、という内容である。
ECの売上に直結させるノウハウ④
ユニクロ銀座店の例
一般ユーザーのコーディネートを紹介することで共感を獲得。ファンによる投稿のモチベーションに。ユーザーとの「コミュニケーション」が生まれやすい状況を作る。
元々はよくあるインスタグラムのアカウントのように、店舗や商品の紹介をするコンテンツ内容が中心であったところ、それをユーザーのコーディネイト紹介に変更。そうしたところ、1日あたりのフォロワー数が100人から、1日1,000人に増えるようになったという。かつ、紹介した商品が店頭やECで売れるようになった、という内容である。
どのような工夫がされているかを解説する。
工夫. 1
投稿に商品名、品番、価格をしっかり入れているのだが、投稿自体がユーザーのコーディネイト紹介がベースなので、販促情報を入れても宣伝ぽくならない。
工夫. 2
投稿者の元々の投稿コメントを転載することで、これがユーザーレビューとして機能させている。
工夫. 3
ユーザーの投稿モチベーションを上げる工夫として、この投稿の中で投稿者のインスタグラムアカウントを宣伝してあげているのである。つまり、ユニクロ銀座店は17万人のフォロワーがいるので、その17万人の前で自分のコーディネイトが紹介され、なおかつ、自分のアカウントにもリンクが張られる、という大きなメリットを与えているのである。それにyほって投稿者のモチベーションが上がる、という仕掛けになっている。
これだけ盛り上がる要素が投稿内に詰まっているため、コメントの下部のほうでは、色々なユーザーとのコミュニケーションが活性化しているのである。
ECの売上に直結させるノウハウ⑤
ユーザーの投稿画像をWEBサイト上に表示させる。
SLYの特設ページにはユーザが「#slyjeans」をつけて投稿した写真が流れている。特にインセンティブを与えるものではないが、コアなファンにとって、自分の写真がブランドのオフィシャルコンテンツとして使われるというだけで、非常にロイヤリティの高い施策になっているのである。また、Instagram内に「#slyjeans」という世界が創られるという点でブランディングにもつながっている。
下記は、SOCIAL CATALOGというツールを使い、単にユーザーの投稿画像をサイト上に表示させるだけでなく、各画像から商品詳細ページに誘導してEC売上に直接結びつけている例である。
※SOCIAL CATALOG:ユーザーの投稿画像をサイト上に表示させ、各画像から商品詳細ページにリンクを設定できるクラウドサービス。