マーケティング

2017.12.04

「#ootd」を自分らしくカスタマイズ:新たなレコメンデーションサービスが提供するファッションの楽しみ方

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#CBK scnnrのマスコットキャラクター『ファッションおじさん』- #CBK scnnr

コーデを発端とする買い物のスタイルが流行

InstagramなどのSNSやWEARに代表されるファッションコーデアプリの人気にともない、洋服を購入する上でコーデを取っ掛かりとする傾向がますます一般的になってきている。コーデの特集ページを取り入れているアパレルECも以前より目立つようになってきた。

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提案する着回しコーデでの使用アイテムをそのまま購入できる便利なページ - KOBE LETTUCE

気に入ったコーデを丸ごと購入するスタイル(いわゆる「マネキン買い」)が流行しているが、特定のコーデが万人に似合うとは限らない。そうした類の買い物の仕方では失敗のリスクも少なくないせいか、最近では、SNS上のインフルエンサーがまとう「#ootd(outfit of the day)」をそのまま真似(完コピ)するのではなく、自分に似合うようコーデを構成し直すような傾向があるようだ。秀逸なコーデに使用されているアイテムそのものへの需要もさることながら、アイテムの上手な組み合わせ方や今っぽいシルエット、トレンドの取り入れ方など、着こなし術への需要が高まってきている。

レコメンデーションサービスによってコーデを自分らしくカスタマイズ

WEARやiQONなど、人気ファッションコーデアプリでは、アパレルECと連携してコーデに使われているのと「同じアイテム」を販売することに主眼がおかれてきたが、コーデに使用されているものと「似たアイテム」を提案するレコメンデーションサービスが、ここへきていよいよ注目を集めてきている。

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女性向けファッションアプリ - #CBK magazine

株式会社ニューロープが開発したファッションAI「#CBK scnnr(カブキスキャナー)」は、そんなレコメンデーションサービスの一つだ。同社では、「人と会うのが楽しくなる、あなたらしくいられるファッションで毎日を彩る」というコンセプトのもと、女性向けファッションアプリ『#CBK magazine(カブキマガジン)』をこれまで3年以上に渡って展開。特定アイテムの販売を目的とせず、あくまでトレンドや着こなしについて紹介するコンテンツづくりを目指してきた。

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画像引用元 - #CBK scnnr

「#CBK scnnr」はアプリの運用によって蓄積したおよそ100万にも及ぶデータをベースに構築されたもので、スナップ画像を解析し、コーデに含まれる複数のアイテムを即座に認識。アイテムごとにタグを生成して関連商品を表示したり、別のコーデを提案したりするというものだ。

新たなレコメンデーションサービスのありよう

従来は、提案される商品が多ければ多いほど、消費者が混乱してしまい、かえってコンバージョン率が低下するリスクがあると考えられてきた。そのため、提案数を少なめに抑えるのが一般的だった。例えば、同様のサービスを提供している株式会社VASILYによる「SNAP by iQON」では、類似商品のレコメンデーションは3つが基本となっている。

他方、『#CBK magazine』は、提案されるアイテム数やバリエーションの豊富さの面で、他のレコメンデーションサービスと大きく異なっている。「類似商品」として紹介されるアイテム数は膨大で、一見するとあまり似ていないと思える商品も含まれるが、いずれもカラーや素材感、シルエットなど、何らかの要素に共通点が見出される。これは、特定の商品を探しているわけではなく、インフルエンサーによる「#ootd」を自分仕様にカスタマイズしたいと考える消費者にとって、むしろ都合がいい。「感覚的に」似ていると思えるものが提案されるようにアルゴリズムが設計されていると言い換えていいかもしれない。

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着用アイテムの類似品などが紹介されるスナップページ - #CBK

例えば「白のタートルネック」としてピックアップされるアイテムは、シルエットはもちろん、カラーさえさまざま。コーデ画像の商品とは全く異なるという言い方もできるが、あえて白いタートルネック以外の多様なアイテムをサジェストすることで、「白いトップスは少し苦手」「白いトップスは欲しいけど、タートルネックは好みじゃない」と考える消費者までもを上手に拾い上げることができるというわけだ。従来のレコメンデーションでは起こりにくい、偶発的な出会いが起きやすい仕組みと言えるだろう。

最後に

アパレルECはここ10年ほどで飛躍的に発達し、驚くほど便利にそして手軽なものとなった。AIの活用も進み、近い将来、コーデはAIに任せるものという日がくるかもしれない。しかし、仮にそれが実現した場合、あらゆる「無駄」が省略されることによって、ファッションの楽しみの大部分が失われてしまうことにもなりかねない。ファッションを取り巻く状況が便利になるのは大歓迎だが、ファッションの楽しみ方を拡張することもまた、アパレルECにとって大きな目標となってしかるべきだ。アイテムをすすめることだけでなく、消費者の想像力に訴えかけるような施策こそが求められている。

#CBK magazine

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