事例にみる優秀サイトのポイント

2016.09.20

たった3単語のキャッチコピーで消費者の心をわしづかみ!ファッションブランドCuyanaに学ぶブランディングに活きるキャッチコピー

立ち上げたばかりのファッションECがまず直面する課題はブランディングだろう。もともと有名なブランドのECであれば問題はない。しかし、知名度が低いブランドのECは単なる価格競争に巻き込まれてしまえばもう終わりだ。しかし、ECにおけるブランディングは一体どうすればうまくいくのか。

その1つの鍵は「キャッチコピー」であろう。

このキャッチコピーでブランディングを成功させた事例を紹介する。事例のCuyanaは世界各国の良質な服をECサイトで販売するブランドだ。2013年に米国で設立され、これまでに170万ドル(約1億7000万円)の資金調達に成功しており、現在の従業員の数は40人を超える。知名度0からここまで成長したのだ。

 

cuyana01

Cuyanaは “Fewer, better things” 「より手の込んだ、より上質なもの」というキャッチコピーを掲げている。Cuyanaはこのキャッチコピー通り、少量生産の良質な服を販売している。当記事ではCuyanaが創業したきっかけとキャッチコピー考案の過程を紹介する。

 

 

創業のきっかけ

 

cuyana02

創業者のKarla Gallardo氏は南米のエクアドル出身。米国の名門ブラウン大学で数学を学び、スタンフォード大学ではMBAを修了した。その後は投資銀行のゴールドマンサックスやアップルのオンラインストアの戦略アナリストとして働いてきた。

幼少期を経済的に豊かな国ではないエクアドルで過ごしたGallardo氏。彼女の両親が物を買うときには必要なもの、長く利用するもの、すごく気に入ったものだけを買っている姿を目にしてきた。

Gallardo氏は服を買ってはすぐに捨てる、服に愛着をもたない米国の大量生産、大量消費の「ファストファッション」に対して違和感をずっと抱いていた。

そこでディズニーなどの有名企業でWebサイト上での顧客対応の改善を専門に仕事をしてきたShilpa Shah氏を誘いファストファッションとは異なる少量生産で良質な服を販売するブランドの設立をすることにしたのだった。

 

 

世界中の良質な衣服を販売

Cuyanaのサイトではアルゼンチン、トルコ、ペルー、イタリア、エクアドルなどの世界各地の生産者から仕入れた服やバッグを販売している。創業者の2人が2年かけて世界中を旅して仕入れ先を探したそうだ。同様の質の商品は高級ブランドでは2~3倍の値段になるが、中間業者を通さないために手ごろな値段となっている。商品の中からいくつかピックアップして紹介したいと思う。

 

アルゼンチンから仕入れている本革の上質なトートバッグ値段185ドル(約1万9000円)

cuyana03

 

 

ペルーから仕入れているアルパカの毛を原料とする上質なカーディガン値段295ドル(約3万円)

cuyana05cuyana06

 

 

イタリアから仕入れている本革の上質なサドルバッグ値段295ドル(約3万円)

cuyana04

 

Cuyanaのサイトは文章や製造工程を紹介するストーリーテリング(物語を語る、背景を語る)にあまり力を入れていないように見える。現在、一般的な企業はコンテンツマーケティングの流行と共に他社のファッションECにはこのストーリーテリングに力を入れている。

創業者のGallardo氏が言うにはCuyanaはストーリーテリングをしていないわけではないという。文章に頼るのではなく、シンプルで統一感のある商品写真、最低限の文章によってこそCuyanaのキャッチコピー “Fewer, better things” を伝えることができる、というのだ。口先ではなく、姿勢で語る、ということだろう。

 

cuyana07

このキャッチコピー “Fewer, better things” はCuyanaを印象付けるブランディングに欠かせないものだ。次章ではCuyanaのキャッチコピー考案の過程を知ることでその極意を探る。

 

 

消費者の価値観を代弁するキャッチコピー

Cuyanaの創業者Gallardo氏とShah 氏がキャッチコピーの考案に費やした時間はどのくらいか予想していただきたい。たったの3単語だけなので1日、長くても1週間かと予想する人が大半だろう。実際はなんと、18か月もの時間を費やしたとのことだ。

その前には”one country at a time”(一度に一つの国で)というキャッチコピーを考案していたそうだ。Cuyanaの服は1か国で1つの服の生産を完結させているという意味だ。そのキャッチコピーは結局は長きにわたっては採用されなかった。なぜなら顧客の心に響かなかったからだ。

「キャッチコピー”Fewer, better things” 「より手の込んだ、より上質なもの」 は私たちのブランドにとって重要な役割を持っています」とGallardo氏は語る。「Cuyanaは商品が持つ意味や商品の背景に対して意識的なミレニアム世代(80年代から2000年初頭生まれの世代)をターゲットにしています。ルーツに立ち返って少量生産で良質な服を販売するCuyanaの姿勢は顧客の共感を呼んでいるのです。」

Cuyanaが “Fewer, better things”でFashion(ファッション)を使わずにThings(もの)と表現したのにも理由がある。「より手の込んだ、より上質なファッション」ではなく「より手の込んだ、より上質なもの」としたのは単なるファッションという枠におさまらない、ブランドが持つ哲学を顧客に伝えたかったからだそうだ。

Cuyanaは極限まで無駄を省いた短いキャッチコピーで、ターゲットの消費者が志向している価値観を代弁しているともいえる。このキャッチコピーが消費者の共感を得てブランディングに成功しているのだ。

 

 

まとめ

Cuyanaのキャッチコピー “Fewer, better things”「より手の込んだ、より上質なもの」はこだわりを持つミレニアム世代の消費者の心をつかむことに成功した。そしてそのキャッチコピーはCuyanaのブランドイメージを形作るブランディングにも貢献している。

しかし、気を付けたいのがキャッチコピーだけではブランディングにつながらないことだ。口先だけでなく、実際にCuyanaの事業内容、商品そのものが”Fewer, better things”「より手の込んだ、より上質なもの」を目指したものであるから成功しているのだ。中身が伴ってこそのキャッチコピーであることを忘れないでおきたい。

ブランディング関連記事

ブランディング媒体としてのECサイト
ECブランディング手法
ファッション雑誌衰退時代のデジタルブランディング

TOPへ戻る