マーケティング

2017.07.13

コーディネートを人任せにする時代は到来するのか? - 国内外のスタイリングサービス事例から展望するアパレルECの将来像

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コーディネートを人任せにする時代は到来するのか? - 国内外のスタイリングサービス事例から展望するアパレルECの将来像

スタイリストと一般消費者とをマッチングさせるサービスがアメリカで成功している。根幹にあるのは、ネットを通じてコーディネート指南するというシンプルなアイデアだが、膨大な商品の渦に巻き込まれ、何を手にするべきかと悩む消費者を“救済する”するだけでなく、新たなビジネスチャンスを作り出すサービスとして、今後のアパレルECの施策を考える上で、大いに参考になる点がありそうだ。

1. 何をどう着るべきか?迷える消費者たち

インターネットや小型デジタルデバイスが普及したことで、消費者はとても処理しきれない量の情報や商品と対峙せざるを得なくなった。それを受けて、もはや何を着るべきかについて考えることをやめ、コーディネートを専門家や人工知能に委ねるという動きが出てきている。アパレルECが展開しているコンシェルジュや人工知能によるレコメンデーション機能がその代表的な例で、国内では同様のアプリやサービスを提供するアパレルECが目立つようになってきてた。

2. アメリカで人気のソーシャルメディアプラットフォーム「wishi」

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Book a Stylist - WISHI

欧米にも同じ状況があるようだ。例えば、ファッション誌やセレブリティを顧客に活躍する有名スタイリストによる手ほどきが受けられるという付加価値の高いサービスで人気を集めているのが、「WISHI」と呼ばれるソーシャルメディアプラットフォーム。

予算やテイストに応じてスタイリストを選べるようになっていて、プロフィールやポートフォリオを見ながら、消費者はスタイリストを指名することができる。一流スタイリストの他、人気ファッションブロガーや専門学校卒の駆け出しスタイリストも登録できるようになっていて、これまでに10万人を超える顧客の獲得に成功している。

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朝、何を着るべきか迷ったらスタイリストに相談する - WISHI

一度のセッションで、スタイリストは消費者の要望に合わせて数ルックを提案。最大で20往復のやりとりを通じて、問題解決に至るという内容だ。

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やりとりを何回か経て好みのルックが完成する - WISHI

料金は、5ドルからとかなりリーズナブル。著名スタイリストを指名した場合でも100ドル程度と、消費者には魅力的な価格設定と言えそうだ。

3. コーディネートを丸ごと、新品で借りられる「メチャカリ」

国内でもスタイリングやコーディネートを提供するサービスがひしめきあっているが、「WISHI」のようにスタイリストと直接やりとりしながらアイテムを選びとっていくというよりも、すでに完成したコーディネートに依拠するというスタイルがどちらかというと好まれているようだ。

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隆盛をきわめるファッションレンタルサービスの例がわかりやすい。これら一連のサービスの多くに共通しているのが、コーディネートありきのレンタルサービスであるという点だ。

例えば、株式会社ストライプインターナショナル(代表取締役社長:石川康晴)が運営する「メチャカリ」では、「まとめてかりる」ボタンをタップすることで、気に入ったコーディネートを丸ごと借りることができる。

ファッションレンタルサービスとしては、どちらかというと後発の部類に入るが、低額の利用料金で、「earth music&ecology」など有名ブランドの洋服が新品で借りられるとあって、若い世代を中心に人気を集めているようだ。「earth music&ecology」など、アパレルメーカーを母体とする強みを生かした注目のサービスだが、レンタルサービスに限らず、アパレルECとスタイリングサービスの今後の動向を占う上で、きわめて興味深いビジネスモデルと言えるだろう。

4. スタイリング・コーディネートサービスとアパレルECのこれから

情報・商品が飽和状態となり、専門的なアドバイザーによる効率的な商品選別や使い方の指南が必要とされている状況は、アパレル業界に限ったことではない。しかし、アパレル商品は、アイテム同士を複雑に組み合わせることが求められ、しかもその営みは毎日繰り返されなくてはならない。その上、それらが記号的な意味を帯びたり、コミュニティを形成する上での重要な鍵となったりしさえする。

ファッションECが取り扱う商品の増加にともない、洋服を自力で選ぶという行為は、もしかすると消費者にとってはいささかハードルが高くなってきているのかもしれない。現代においては、コーディネートやスタイリングは、時間的・経済的にハイコストな営みとみなされつつあり、専門家に委ねられるべきと考える風潮が強まりつつあることが指摘できるだろう。

実際、コンシェルジュサービスや、人工知能によるレコメンデーションなど、コーディネートやスタイリングの領域において、アパレルECが果たす役割は大きくなるばかりだ。商品のデザインや選別と同様、コーディネートやスタイリングもまた、アパレルECが取り扱うべき“商品”であるという認識をいま一度確認しておくことで、今後のビジネスのあり方は大きく変わってくるに違いない。

 

WISHI

https://www.wishi.me/

 

ファッション(洋服)レンタルのメチャカリ

https://mechakari.com/

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