マーケティング
2018.10.23
サービスを比較してわかるファッションレンタルECの仕組みと違い
アパレル関連のインターネットサービスの中で、いま注目を集めているのがファッションレンタルサービスだ。
ファッションレンタルサービスはその名の通り、サービス内で提供されているアパレルを自由にレンタルすることができるというもので、ファストファッションのような手軽さでラグジュアリーを体感できるとして日本でも徐々に浸透が始まっている。
また、展開しているサービスの中には単なるレンタルにとどまらず、買取という形でレンタル用の品を購入できるものも増えてきている。
ただのレンタルサービスではなく、体験型のECとしての様相も帯びつつあるというわけだ。
今回はそんな進化し続けるファッションレンタルサービスの仕組みや課題、そしてECとしての可能性について考えてみたい。
カギは定額で着放題のレンタルシステムにあり
多くのファッションレンタルサービスは、月額料金を徴収することで、ユーザーに無償でアパレルを貸し出すという仕組みを採用している。主要サービスを比較すると、月々の料金は約¥5000~¥7000が主流で、一度にレンタルできる品数は3点前後が平均だ。
参考:https://ecclab.empowershop.co.jp/archives/3651
また、ファッションレンタル サービスのメインターゲットとなる女性が月々に洋服へかける費用も7000円弱に収まっている。
参考:https://money-is-important.com/2443
無理のないサブスクリプション料金を支払うだけで好きな服を着られるだけでなく、飽きたら返却し、家のスペースも財布事情も圧迫せずにオシャレを楽しめるのがこのサービスのメリットだ。
スマートフォンから気軽に登録し、オンラインショッピングのように服を選び、注文することができるファッションレンタル サービス。
消費に消極的な現代の若者にとって、事実上の「着放題」システムは魅力的なサービスであることに違いないだろう。
CtoCサービスの役割も
また、レンタルとして提供される品物は第三者によって使用されていることが前提となる。そこに注目し、サービスによってはCtoCの仲介を提供しているものもある。
例えば高級ブランドのバッグなどを提供するLaxus(ラクサス)は、ユーザーが自宅で保管しているブランドバッグをラクサスに提供することで収入を得られる「Laxus X」を開始した。
売却ではなく、あくまでもレンタルサービスに私物を提供するという形でラクサスが仲介し、その報酬を物品提供者が受け取るという仕組みだ。
また、SUSTINA(サスティナ)もユーザーから提供された商品をレンタルサービスとして展開しているため、事実上のCtoCサービスとも言えるだろう。
参考:http://sustina.co/intro/?guest
このようなシェアリングサービスの展開は、ファッションレンタル界隈では目立った動きはないものの、今後アパレル専用CtoCサービスとして大きく成長していく可能性もあるだろう。
新しいECとしてのファッションレンタルサービス
インターネットを介してアパレルを貸し出す環境が整うとEコマースにも良い影響を与えることが考えられる。
他社EC・小売店との提携も
ファッションレンタルサービスを展開する上で、やはり欠かせないのがレンタル商品の調達だ。
現在はファッションレンタルサービスの中では最大手となる「Air Closet(エアークローゼット)」に吸収された「Lucie(リシェ)」は、他のECサイトや販売店と提携した店舗型レンタルサービスを提供しており、テストマーケティングの現場としても大きな役割を占めていた。
Air Closetも試着ECとして、新たに「pickss」というサービスを展開している。これはAir Closetが展開するレンタルサービスと同様に毎回スタイリストがアイテムをピックアップし、自宅で試着できるという仕組みを整えたものだ。
購入すればサービス利用料である2800円のスタイリング料金が無料となり、購入点数に応じて割引が適用される。アイテムはユナイテッドアローズなどと提携して用意されるので、その品質にも期待ができる。
中古品は貸し出しで、新品は試着ECでという選択肢を提供するのがAir Closetの魅力となっている。
ファッションレンタルサービスが抱える課題
一方、ファッションレンタルサービスは新陳代謝の激しい業界であるとも言える。一年以内に様々なサービスが現れては消え、安定して成長しているものは限られていると言えそうだ。
安定した市場が確保できていないのには、ターゲットとなる20代の若者の中で認知度と比較して利用率が芳しくない点が大きな理由の一つだろう。
調査によると、男性は5割、女性は7割という認知度があるにもかかわらず、実際の利用者はその1割に満たないという。
参考:https://ecnomikata.com/column/17318/
また、機会があれば利用してみたいと考える人も1割程度に収まっており、アパレルをレンタルするという概念が今だに浸透していないことが原因となっているようだ。
とはいえ、日常使いでのファッションレンタルが浸透していないだけであり、ドレスや袴、振袖など、女性の場合は日本でもアパレルをレンタルするという選択肢は決してないわけではない。
また、多くの人が恐れるレンタル品を汚してしまったら、という懸念にも充実のサポートが用意されていることがほとんどであるため、その点もサービスへの理解が深まると解消されていくことになるだろう。
ファッションレンタルサービスは今の日本で安定した地盤が整っているとは言い難いが、そのポテンシャルは高いものがあると言える。
レンタルサービスを基軸としたその他サービスやECの展開も散見され、応用の効くサービスである事も実証されつつあると言えそうだ。