マーケティング
2018.03.13
「おまかせ定期便」と「ZOZO販売員」 ー スタートトゥデイの新戦略がECに与える影響について
引用元:スタートトゥデイ
スタートトゥデイが「おまかせ定期便」と「ZOZO販売員」サービスの開始を発表した。サービスの概要について紹介し、ファッションレンタルサービスの現状についても触れながら、アパレルECにおけるスタイリスト提案型サービスの今後について考える。
ZOZOTOWNが「おまかせ定期便」サービスを開始
引用元:スタートトゥデイ
スタートトゥデイは2018年2月15日、自社が運営するZOZOTOWNにおいて、新サービス「おまかせ定期便」を開始すると発表した。アンケートへの回答にもとづいて、経験豊富な自社スタッフがコーディネートをスタイリングし、新品の洋服を定期的に届けるというものだ。
アンケートの内容は、好みのテイストや優先的に取り入れたいアイテムのほか、好みでない柄や色、隠したいと思う身体のパーツ、予算感などさまざま。さらに、独自のアルゴリズムを使って注文履歴などを解析し、顧客に最適な商品の選定を目指す。ZOZOSUITを利用している場合は、体型計測データも加味されるという。
定期的に届く商品は、5~10点。そのうち欲しい商品だけ購入することができ、いらないものは無料で返品可能だ。費用は購入する商品の代金と発送の際の送料のみで、コーディネートのスタイリングには費用がかからない。商品が届く頻度は、1ヶ月ごと、2ヶ月ごと、3ヶ月ごとから選ぶことができる。
「ZOZO販売員」の募集を開始
引用元:スタートトゥデイ
同日、合わせて発表されたのが「ZOZO販売員」の募集開始だ。「おまかせ定期便」の利用者のために、ZOZOTOWNで取り扱う膨大な商品のなかからコーディネートのアイデアを提供する在宅ワーカーを募るもので、管理画面から商品を選択し、着こなしポイントなどをまとめたレター作成の仕事を依頼する。コーディネートを1つ作成するごとに600円が支給され、売上に貢献したと認められた場合には成果報酬もあるという。
23日には、同様の業務を東京のオフィスで担当する販売員の募集(100名)も開始している。すでに話題を集めている「おまかせ定期便」だか、かなりの需要を見込んでいることがわかる。
ファッションレンタルサービスとスタイリスト提案型サービスの現状
顧客のためにスタイリングし、コーディネートの提案をすることで「服を選ぶのが面倒」「服を選ぶ時間がない」「似合う服がわからない」といった悩みに答えようとするサービスとしては、「AirCloset」や「SUSTINA」をはじめとするファッションレンタルサービスがよく知られている。サブスクリプション型のビジネスモデルであるという点で「おまかせ定期便」とは異なるが、2014年ごろから目立ち始め、「シェア」「エコ」といった時代を象徴するキーワードとの親和性も高く、かなり普及してきている印象がある。
ところが、実際のところ、ファッションレンタルサービスは必ずしも定着しているとは言えない現状があるようだ。リサーチ事業などを展開するテスティーが、20代男女1,189名を対象にアンケート調査を実施したところ、ファッションレンタルサービスについて、男性は52.1%、女性では72.4%が「知っている」と答えている一方、サービスを利用したことがあると回答したのは、男性4.3%、女性3.3%と1割にも満たない。
ファッションレンタルという場合、若い世代でさえ結婚式など非日常的なシーンを連想する傾向があるようで、毎日のファッションをレンタルするという考えはほとんど定着していないことが明らかになった形だ。
とはいえ、ファッションレンタルサービスを利用したことがない人でも、スタイリスト提案型のサービスには興味があるというデータもある。ジャストシステムが20歳から49歳の女性565名を対象に実施した調査によると、サービスを利用したことのある人の割合は5.8%と、やはりレンタルサービスへの抵抗感があらわれているものの、利用したことがない人のうち、5人に1人はサービスに興味があり、そのおよそ半数が、自分で好みのものを選ぶよりスタイリストが提案してくれるサービスを使ってみたいと回答している。
ファッションレンタルサービスそのものの人気は限定的と言えそうだが、ファッションレンタルサービスが積極的に取り入れてきたスタイリスト提案型サービスには、多くの利用者の関心が集まっていることがわかる。「おまかせ定期便」の登場によって、アパレルECにおいて、スタイリストやスタイリングの存在が今後ますます注目を集めることになりそうだ。
最後に
リアル店舗においてスタッフが膨大なデータを管理し、来客時にすぐさまデータを活用した対応をするのは難しい。スタイリストの知識や注文履歴、体型計測データまで加味し、顧客に対して最適な服が提案できるのはECならではだ。スタートトゥデイの新戦略をきっかけに、ECが今まで以上に存在感を強めることになるかもしれない。