【保存版カリキュラム】ECノウハウ

2018.02.13

アパレルECと物流のこれから ー 売る側・買う側にとってメリットのあるビジネスモデルを目指して

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「ZOZOTOWN」や「SHOPLIST.com by CROOZ」など大手アパレルECが物流センターの拡張を発表。他方、ヤマトホールディングスは、ECで注文したアパレル商品を消費者が受け取り試着を行える「Fittingステーション」の試験運用を開始した。物流業者の負担が社会問題となる中、これからのアパレルと物流の関係について考える。

物流の拡張を進めている大手アパレルEC各社

このところ、アパレルECの物流拠点拡張のニュースが目立ってきている。2017年12月20日、株式会社スタートトゥデイ(代表取締役社長・前澤友作)は茨城県つくば市に位置する大型物流施設「ZOZOBASE」を2019年の秋までに拡張することを発表。総延床面積はおよそ14万㎡で、現在習志野市に置いている最大拠点に次ぐ規模の拠点となる予定だ。同社は年間商品取扱高として5,000億円、営業利益として500億円を中長期目標として設定しており、将来の大幅な販売規模拡大を見込んで物流強化を図っている。

また、同年10月30日には、ファストファッション通販『SHOPLIST.com by CROOZ』を擁するクルーズ株式会社(代表取締役社長・小渕宏二)もまた、神奈川県相模原市に新物流施設を構築することを発表している。延床面積は4万5,348㎡で、こちらは2018年12月の稼働を目指す。商品の取扱量の増加に対応するためのもので、新たな物流拠点の誕生によって、「スピード便(13時までの注文で最短翌日で商品を届けるサービス)」の在庫保管数が現在のおよそ3倍となり、配送日数が大幅に短縮される見込みだという。

靴やファッションアイテムの通販を手がける株式会社ロコンド(代表取締役社長・田中裕輔)も、2016年に千葉県八千代市への物流倉庫の移転と機能拡張を発表している。同年2月期の売上高が35%増の100億円に増加したことを受けてのことで、倉庫スペースを従来の2倍のおよそ3万6,000㎡とする。

アパレルECの急成長にともなう物流課題の深刻化

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大手アパレルEC各社の成長は、こうした物流戦略によって支えられていると言っても過言ではないわけだが、商品の配送量増大によって人手不足が生じ、従来の宅配サービスが限界をむかえつつあるのも事実だ。例えば、ヤマト運輸株式会社など関連企業を束ねるヤマト・ホールディングス株式会社(代表取締役会長・木川眞)は、2017年に入り40%を超える大幅な減益を発表。配送量の急増に対応すべく一部の業務を外注し、結果的にコストが増加したことが主な原因だという。大口の顧客との値上げ交渉を進めるほか、サービス内容の見直しを図るなどの対策をとっているが、国交省も長時間労働の是正や処遇の改善などの対策を表明するなど、宅配ドライバーの過重労働が社会問題となってきている。

アパレルECは「自宅配送」でなくてはならないのか?

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そうした中、ヤマト・ホールディングスが試験運用を発表したのが「Fittingステーション」だ。アパレルECで注文した商品の受け取りだけでなく、試着を行うことができる拠点で、サイズが合わない商品や、イメージが違った商品はその場で返品することが可能だ。配送コストや宅配ドライバーの過重労働削減に貢献するサービスとして期待を集めており、2018年度内の実用化を目指すという。現時点では、ディノス・セシールや三陽商会といった大手アパレルメーカーが参加している。

現在、アパレルECでは、購入された商品を自宅まで配送するのが一般的となっている。ところが、株式会社リクルート住まいカンパニー(代表取締役社長・淺野健)が実施したアンケートによると、宅配便の受け取りについて、実に4割近くもの人が「自宅以外で受け取りたいと思う」と回答している。受け取りたい場所としては、「コンビニ」が最も多く82.2%、続いて「駅」が31.9%となっている。消費者は必ずしも商品を自宅まで配送して欲しいとは思っていないことから、アパレルECは配送に関して「自宅配送」という常識を疑ってみる時期に差し掛かっているのかもしれない。

売る側、買う側の両方にとってメリットのあるサービスを目指して

取引量が増加することはアパレルECにとって歓迎すべきことだ。しかし、結果的に物流が疲弊し、また返品が増加するといったマイナスの効果が生じるような事態を、消費者を含め当事者は誰も求めてはいない。目指されなければならないのは、物流業者とアパレルEC、そして消費者と、三者にとって利益のあるサービスだ。物流業者の負担が削減できて、リアル店舗を持つことなく試着サービスを提供できて、しかも返品コストがかからない「Fittingステーション」のようなサービスは、中小のアパレルECが将来的に検討する価値のある有望なビジネスモデルと言えるだろう。

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