セミナーレポート
2018.03.26
ラグジュアリーブランドのオンラインショッピングサイト「マッチズファッションドットコム」のEC戦略 ~最高経営責任者ウルリック・ジェローム氏インタビュー~
2018年2月28日、東京・丸の内のパレスホテル東京にて、新しいショップ体験・EC体験についてのノウハウを共有するイベント「WWD Retail 20/20 Forum」が開催された。そのイベントにて、世界176ヶ国でラグジュアリーウェアをEC展開する「マッチズファッションドットコム」の最高経営責任者であるウルリック・ジェローム氏が登壇、自社の戦略的なEC対策について講演を行った。
当FASHON EC Lab は、ウルリック・ジェローム氏への単独インタビューに成功。「マッチズファッションドットコム」のEC戦略について、より詳細に解説してもらった。
Matchesfashion.com (マッチズファッション・ドット・コム)
「マッチズファッションドットコム」のECサイト立ち上げ時に特に苦労した点は何か。また、その苦労をどのような手法で解決したか。
まず、ECサイト立ち上げ時に最も重要であったのは、リアルの店舗からスタートした自分たちが、ECサイトに軸足を移し、新しいビジネスモデルで成功するのだ、というモチベーションを高め、絶対的なやる気を起こすことでした。必ず成功させるのだ、という熱意気持ちは非常に大切です。
その上で、ECサイトを運用していく上での技術開発が重要でした。必要な技術やプラットフォームを準備するために、正しい技術者や人材を登用しました。そして、ECサイトに集客するためのマーケティングエキスパートの採用も重要です。アフィリエイトの導入やGoogle検索の対策に適した人材を探しました。
また、顧客満足のためには、素早いデリバリーサービスを構築することも大切でした。そのために配送業者と協力体制を築き上げるのにも苦心しました。それらの苦労が実り、今ではイギリス国内では最短90分、アジアなどの国外にも2日以内にデリバリーできるようになっています。
さらに、スタイリストを雇うことによるカスタマーケアにも注力しました。これらの人材を教育・育成するのにも多大なる時間が掛かりましたが、そのおかげで、今では顧客に新鮮な体験を提供するコンテンツを作りだすために70人体制のコンテンツチームを抱えるに至っています。また、バイヤーにも顧客のフィードバックやデータを共有し、常に新しいブランドを知りたいという欲求を満たすような、コンテンツと連携したバイイングを実現しています。
我々がECサイト運営で心掛けていることは、常にリスクを恐れずに、新しいことものに挑戦するという努力を続ける、ということです。
ユーザーが「マッチズファッションドットコム」で欲しい商品を見つけた時に、価格が安い、もしくはポイントなどの特典が多いなどの優位性を有する他のECサイトで同じ商品を買われてしまう課題があると思うが、どのような対策を取っているか。
日本においては、ファッションECサイトというと、ZOZOTOWNに代表されるような価格重視のサービスが中心的な役割を果たしていると、我々は認識しています。
一方で、我々「マッチズファッションドットコム」はまだ広く知られていなく、流通が限れた新進気鋭のブランドやデザイナーの商品をプロパー価格で展開することに主眼を置いています。新しいブランドを常に発掘し、そのブランドのバックストーリーを重視する形で紹介するのが「マッチズファッションドットコム」の手法です。つまり、EC展開の方法そのものがそもそも他のサービスと一線を画します。そういった手法を日本の顧客も好んでいると確信していますし、そうした手法は他のECサイトとは異なる、「マッチズファッションドットコム」独自の優位性です。
流通が限れている新しいブランドの発掘に注力し、そのブランドを発展させながら顧客に新しい購買体験を提供する、ということ自体が、他のECサイトへの対抗策になっています。
「マッチズファッションドットコム」日本市場進出の契機と、今後の展望は。
現在、日本の顧客も存在しますが、実は日本向けにECサイトをローカライズはしていません。特にマーケティングなども行っていませんし、そもそも日本語のサイトすら準備していません。しかし、それでも、日本のユーザーからの売上は全体の売上のの10%を占めています。
先ほど申し上げた通り、日本には我々と競合するファッションECサイトは存在しないと認識しています。それはつまり、日本向けにECサイトをローカライズする必要性が存在しないということをも意味します。新しいブランドをセレクトして発掘し、ビジュアルを意識したECサイトを構築すれば、日本でも顧客を獲得できると考えているのです。
もちろん、ゆくゆくは日本市場でも本国での運用と同様、フィジカル面を意識したコラボレート企画なども計画しています。具体的な時期や内容は明かせませんが、12ヶ月~18ヶ月以内にコラボレート企画をスタートする予定です。
日本市場は重要だと認識していますので、将来的にはECサイトの内容やコラボレート企画などを、ストラテジックにローカライズすることも念頭に置いています。日本のブランドとコラボレートすることも興味深いですね。