セミナーレポート
2016.07.08
ファッションブランド「MICOAMERI」の実例大公開!LTV を上げる為のEC接客術
2016年3月10日、ECサイト向けのITソリューションを提供する株式会社Socket、株式会社ラクス、テクマトリックス株式会社の3社合同セミナーに参加した。今回はファッションブランド「MICOAMERI」を企画、運営している五反田電子商事による基調講演の内容をレビューする。顧客とのコンタクトポイントをどのように増やし、LTVを最大化しているかを実例に基づき解説していた。
【講演タイトルと概要】
前年比でEC売上5倍! ファッションブランド「MICOAMERI」の秘密を大公開! LTVを上げるためのEC接客術 “くみっきー”ことモデル舟山久美子がディレクターを務めるEC特化型ファッションブランド「MICOAMERI」が前年比での売上5倍と、厳しい業界環境下で好調に売上を伸ばしている。ファッションECのコンサル事業を行う五反田電子商事が仕掛けた最先端のファッションECのマーケティングとは? 五反田電子商事株式会社 代表取締役 洞田 潤 氏
洞田氏によると、「MICOAMERI」ECビジネスの基本的な戦略は「ユーザー接点の最大化」である。つまり、新規ユーザー、既存ユーザーそれぞれに対して、ありとあらゆるアプローチ手法を駆使し、ユーザーに嫌われないレベルの限界までプッシュアプローチを取っていく、ということである。
具体的なユーザーアプローチ手法としては、下記が挙げられる。
・LINE
・モデルプレスなどのウェブマガジン、キュレーションマガジン
・DSP
・リターゲティング広告
・メールマーケティング
・インフルエンサーマーケティング
やはり、同ブランドのディレクターである“くみっきー”ことモデル舟山久美子によるインフルエンサーマーケティングがブランディング力、拡散力(フォロワー数:178,000人)、訴求力において大きな武器になっている。”タレントプロデュースブランド”のビジネスモデルが「MICOAMERI」ECビジネスの根幹になっていることは確実であるが、その根幹の爆発力を様々なマーケティング手法を用いてドライブさせ、「前年比での売上5倍」もの拡大化に成功させているのである。
インフルエンサーマーケティングに関して言うと、イベント時などには、“くみっきー”以外の多数のインフルエンサーを成果報酬ベースでキャスティングしているという。
洞田氏によると、SNS広告でも運用次第でコンバージョンを効率よく獲得でき、CPAを抑えた拡大ができる、という。ブランド名中心(健在顧客向け)のリスティング広告ではすぐに獲得母数の限界が訪れるため、SNSで獲得を重視した集客運用を実現させることが重要だということである。
そのためには、一定のCVR(コンバージョン率)を維持するためのコミュニケーション設計が必須であり、具体的には下記の2つの企画を徹底的に行っている、と洞田氏は述べている。
■ユーザーターゲットのペルソナ設定
ユーザー自身の本当のニーズをとらえるための手立てが「ペルソナ設定」であるが、ユーザーの考え方や価値観、行動パターンなどを浮き彫りにするため、ユーザーのプロフィールを細かいレベルまで落とし込み、趣味・趣向や行動などを具体的なところまで明確化する。
■カスタマージャーニーマップの策定
スタマージャーニーマップの例
カスタマージャーニーとは、ユーザーがブランドや商品、サービスを認知してから、購入し、さらに購入後のアクション(例えば評価・レビュー・口コミなど)に至るまでの一連の行動を時系列で把握する考え方である。
「MICOAMERI」の場合、新規ユーザー、既存ユーザーごとにこのカスタマージャーニーマップを分けて設計し、ユーザーへのファーストアプローチから接客、追客のステップまでの具体的コミュニケーション施策をいくつものパターンで設計、実施しているという。
集客×接客×追客=LTVの向上 ※LTV=Life Time Value(顧客生涯価値)
接客に関しては、株式会社Socketが提供する自動接客ツール「Flipdesk」、株式会社ラクスが提供する「メールディーラー」「配配メール」などを活用し、CVRとLTVの向上を実現させているという。
・Flipdesk
スマートフォンに特化した販促プラットフォーム。サイトにタグを1行埋め込むだけで、訪問者ごとに最適化されたクーポンやバナー、メッセージなどを自動で配信することができる。
・メールディーラー
複数名でのメール共有・管理・対応を効率的に行えるメールグループウェア。お客様からの問い合わせメールへの対応状況や履歴を一目で確認することができるので、対応の漏れや遅れを未然に防ぐことができる。集計機能も充実しているので業務全体の管理および改善を行うことが可能。
・配配メール
高速メール配信や受信ブロック回避配信などを実装することで着実にメールを送り届けるメール配信システム。単にメール配信するだけでなく、メール開封率・URLクリック数の集計といった高度なマーケティング機能が備わっている。
「MICOAMERI」のビジネスモデルは、ブランドのディレクターに有名タレントを起用することによる拡散力、爆発力をベースに、「ユーザー接点の最大化」として様々なデジタルマーケティング、デジタルツールを緻密なコミュニケーション設計とともに駆使している、ということである。
この事例を元に、ECビジネスにおいて何が重要かを改めて考察すると、デジタルマーケティングのメッソッドが一番の重要事項ではなく、他社にはない価値、真似のできない独自の価値や仕掛けが自社にあるかどうか、が一番の重要事項であり成功の前提要件である、ということである。
つまり、デジタルマーケティング手法を駆使したり、緻密なコミュニケーション設計を考えること自体は学習することで徐々に真似ができることなので、ノウハウの一般化とともに実現できて当たり前の領域になるでろう。そう考えると、ECビジネスの本当の成功要因になり得るのは、他が真似のできない価値、「MICOAMERI」の場合は「“くみっきー”によるブランドプロデュース」ということになる。特にEC発で新規ビジネスを仕掛けていく場合は、こういった高いレベルでの優位性、独自性がないと成功できないと言えるであろう。
高いレベルでの優位性、独自性を見い出すことができないまま、デジタルマーケティングの使い方にばかり時間とコストを費やして売り上げに苦しんでいるECサイトが多く存在する。まずは優位性、独自性の重要性を理解し、それらを見出して初めてEC事業をスタートさせる考え方、スタンスが重要であると思われる。