事例にみる優秀サイトのポイント
2016.07.08
【海外最新事例】 EコマースVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)、インスタグラム活用法
ECサイトにおけるVMDの役割
ECサイトのデザインを考える上で、アパレル業界で言う「VMD」の概念が必要になってきている。
VMDとはビジュアル・マーチャンダイジング(Visual Merchandising)、または、ビジュアル・マーチャンダイザー(Visual Merchandiser)の略で、売場全体や商品を魅力的に見せる演出テクニック、その専門家のことである。店舗全体の空間デザインから、服の展示や並べ方まで考え、店舗をビジュアル面でサポートし、ユーザーにとって魅力的で、見やすく・選びやすく・買いやすい売り場をつくりあげる。このテクニックには、空間やファッションコーディネートに対する美的感覚とセンスに加え、買い手の心理に関する知識と理解が求められる。
このテクニックを活用することで、1. ユーザーを惹きつける 2.商品を手に取らせる 3.購入に導く、ことが可能になる訳だが、ECサイトにこのテクニックを応用することでインターフェースデザインのレベルを大きく引き上げることが可能になる。
特にEC業界では、このVMDのポジションの職域のプロフェッショナルが不在であることがほとんどである。WEB業界でVMDのポジションにあたる役柄は「UXデザイナー」であると考えられるが、ECサイトの設計・デザインにおいてこの「UXデザイナー」を起用することは稀である。インタラクティブなデザインに対しての知見やモチベーションがさほどないWEBデザイナーがインターフェースの設計・デザインをすることになることがほとんどであるため、ECサイトのインターフェースデザインは進歩が遅く、斬新で目新しいデザインのものは特に日本では少ない。
かと言って、ECサイトのデザイナーとして、UXデザイナーを起用するのが良いのかと言うとそれも難しいところがある。UXデザイナーにファッションのセンスがあるかと言うと、そうでない人が多いと思われるからである。
ベストなのは、ファッションセンスのあるWEBデザイナーと、UXデザイナーの両人を起用し、コラボレーションさせることである。
インターフェースデザイン レベルアップの必要性
昨今のファッションECの状況において、インターフェースデザインのレベルを引き上げていく重要性が高まっている。何故かと言うと、まず、昨今のデジタル広告の飽和によるCPA(顧客獲得単価)の高騰が挙げられる。特にリスティング広告やリマーケティング広告などの費用対効果が高いと言われてきた獲得重視の広告にも限界があるため、潜在ユーザーをターゲットにした費用対効果が比較的良くないDSP広告やFacebook広告などに集客施策を広げる必要がある。そのため、あなたのブランドのことを初めて知るユーザーに対してより深くブランディングし、購入に至る確率を飛躍的に上げていく必要がある。それには、従来型の画一的なインターフェースデザインでは他のブランドとの違いを明確に打ち出すこともできないし、DSP広告やFacebook広告などからの購入率はせいぜい0.5%くらいが限界であろう。そういった意味でインターフェースデザインのレベルを上げることで少しでも広告の費用対効果を上げる必要性が高まっているのである。
インターフェースデザインのレベルを上げていく必要がある理由のもう一つは、ブランドサイトとECサイトの統合化の流れである。
ECサイトとブランドサイト 統合化の流れ
欧米のデジタルIQは高く、日本の3~5年先を先行していると言われているが、欧米のトップブランドのほとんどでブランドサイトとECサイトは一体型になっている。
ブランドサイトとECサイト 一体型の例(海外)
Acne Studios
REBECCA MINKOFF
Eytys
何故、ブランドサイトとECサイトが一体型になっているかと言うと、
だが今や、ECのシステムのデザインの自由度は高まり、ECシステムにWordPressなどのデザイン自由度が高いCMSを組み合わせることも可能となっている。実際に日本国内でもブランドサイトとECサイトの一体型の制作事例が増えてきている。
ブランドサイトとECサイト 一体型の例(国内)
aquagirl
Banner Barrett
何故、ブランドサイトとECサイトの統合が「インターフェースデザインのレベルを上げていく必要性」につながるのか
話を本題に戻そう。何故、ブランドサイトとECサイトを統合するには「インターフェースデザインのレベルを上げる必要性が生じる」のか。
理由はECサイトがブランディングの役割を持つことになるためである。つまり、ECという売上ミッションを抱えながら、今までブランドサイトが担ってきたブランディングの領域をECサイトが担うことになるのである。そうすると、ECサイトの従来型の画一的なデザインでは、他のブランドとの違いをユーザーに訴求することは難しいし、あなたのブランドならではのユーザー体験を通してブランディングすることはできない。ファッション業界のVMDのテクニックを駆使し、インターフェースデザインのレベルを上げて、ブランディングと売上の両方を達成させていく必要があるのである。
海外ブランドの最新インターフェース事例と解説
以下に海外の優れたインターフェースデザインの事例を紹介する。
【ビジュアル重視のトップページ設計】
大きなビジュアルをダイナミックに使用してユーザーにインパクトを与える設計。最近のECサイトのトレンドであるが、大きなビジュアルをダイナミックに使用してユーザーにインパクトを与える設計が最近の海外ECサイトのトレンドとなっている。
Acne Studios
COACH
【トップページでフルスクリーンの動画を自動再生】
再生ボタンを押さなくても自然な形で動画を画面一杯に流している事例である。
FENDI
【余白を大きく取り、ゆったりした雰囲気を与えるトップページ設計】
REBECCAMINKOFF
【トップページ上ですべてのアクションが完結する設計】
商品詳細の表示やカートに入れるアクションまでトップページ上で展開される。商品の拡大画像さえノーアクションでトップページ上に表示するという、斬新でユーザビリティに優れた設計である。
Eytys
【ランダムでデザイン性のあるカテゴリ一覧ページ】
【画像を大きく縦に並べた商品一覧ページ】
【画面一杯に広がる拡大画像】
Fendi
Acne Studios
Tory Burch
【商品詳細ページでの動画配信】
Tory Burch
【WEAR IT WITH】
コーディネイトにおすすめの商品を表示
REBECCAMINKOFF
【トップページにインスタグラムの投稿画像を表示】
商品詳細ページへのリンクを設置、リアルでタイムリーなコンテンツから購買につなげている。
RALPH LAUREN
【インスタグラムの投稿画像を商品詳細ページに表示】
ユーザーの商品着用投稿画像を掲載。テキストのユーザーレビューよりもリアリティがあり、販売促進になるコンテンツとして展開している。
BAUBLEBAR
まとめ
日本国内のECサイトと比較してもらうと一目瞭然であるが、いかに日本のECサイトが画一的で独自性に乏しいかが分かると思う。雑誌の影響力は益々弱くなっていく一方、ユーザーがあなたのブランドを初めて知るきっかけはネット上ばかりになってくる。ネット上でブランディングしていくにあたり、画一的で独自性に乏しいECサイトでユーザーにブランドのファンになってもらえるであろうか?ファッション業界のVMDのテクニック、考え方を活用し、ブランディング型のECサイトを再構築する必要性が遅かれ早かれ来るであろう。