事例にみる優秀サイトのポイント
2016.10.17
予約販売で5,000万円以上の売上をあげる方法|コットンTシャツを販売するAblyの事例
「コットンシャツは汚れに弱い」のは定説だ。心当たりのある人もたくさんいるのではないだろうか。コットンシャツにコーヒーをこぼしてしまいシミがついてなかなか消えない。しかし、コットンに代わるようなソフトでそこそこ安価な肌触りの良いシャツはない。さてどうしたものか。
こんな消費者が抱える問題を「シミがつきにくい汚れに強いコットンシャツ」によって解決したのが今回ご紹介するAblyだ。
Ablyは米国シアトルにて2015年に設立された。クラウドファウンディングサイトのKickStarterでプロジェクトを立てており、目標支援金額2万ドル(約210万円)を大きく上回る54万ドル(約5,600万円)の支援金を集めてた。つまりこれは5,000万円以上の予約販売を受けつけていることを意味する(KickStarter上で支援者は支援金の代わりにAblyのコットンシャツを受け取る)。
予約販売という形で売上をあげるのに活用されるクラウドファウンディング
米国においてはマイナーなファッションブランドが新商品のリリースに際してクラウドファウンディングサイトを利用することで一気に認知度を高めた成功例を多く見ることができる。また、予約販売という形で約束された売上をあげるためにも有効な方法として利用されている。
米国の話であって自社とは関係ないと思われる方もいるかもしれないが、日本の企業が米国のクラウドファウンディングサイトを利用して成功している例もある。もし貴社がKickStarterのようなクラウドファウンディングサイトを活用すれば世界中の消費者から認知してもらえる可能性もあるのだ。
ただし、戦略なくしてクラウドファウンディングサイトを利用しても成功はおぼつかない。
当記事ではどのようにクラウドファウンディングサイトを利用すれば成功につながるか、Ablyから参考にできるポイントをご紹介しよう。
Ably誕生のきっかけ
Raj Shah氏とAkhil Shah氏は1975年にメンズスポーツウェアを販売するアパレルメーカーを設立して以来、40年にわたってアパレル業界に関わってきた。2人はシャツを作るために化学繊維ではなく地球にやさしい自然素材の繊維の採用を検討していた。たしかに、化学繊維は自然素材と比べて汚れやシミがつきにくい、すぐに乾くし、濡れても重くならない。しかし、化学繊維のシャツは汗をかくと匂いがきつくなる、それに環境にもよくない点も問題だと考えていた。
そこで2人はコットンのような自然素材の繊維を耐水で汗を吸い込まないように加工できる「Filium」という名の技術を開発した(特許申請中)。この「Filium」技術でコットンシャツを作ることにしたのがAbly誕生のきっかけである。
シミのつかないコットンシャツ
Ablyのコットンシャツの値段は48ドル(約5000円)だ。シャツ以外にも長袖、パーカーを販売している。前述したように「Filium」という技術でコットンを加工することで耐水性でシミのつかない、乾きやすく汗をかいても臭わないシャツとなっている。
Ablyは「シミのつかない」コットンシャツという独自の強みがある。これがクラウドファウンディングで支持された要因だろう。しかし、消費者からするとその強みだけでは商品の利用イメージがわきづらくないだろうか。実際にそのコットンシャツを着ることで自分が得られるベネフィットは一体何なのかと。
ストーリーのある動画の活用が鍵
Ablyは製品の強みをしっかりと伝えるための努力をしてきた。伝えるための1つの手段として動画の活用が鍵となっている。
KickStarterなどのクラウドファウンディングサイトでは動画がプロジェクト紹介ページのトップ部分に配置されており動画の重要性は非常に高いのである。
Ablyの動画は視聴者をひきつけるストーリーのある動画となっている。商品の特徴を次々と紹介するような単調な動画だと視聴者が飽きてスルーされてしまう可能性が高い。そこでスルーされないようにするためにはストーリー性を持たせることが大切だ。
1人の男性が寝ている。起床後、前日リビングに置きっぱなしにしていたシャツを匂いを嗅ぐ。普通のシャツならばアウトだが、Ablyのコットンシャツなら7日間着まわすことができる。
男性はヨガ教室に出かけるために外出する。道中、車が道路わきの水たまりをはねる。
はねた水が男性のシャツにかかる。しかし、Ablyのコットンシャツなら耐水性もあって濡れることはない。
ヨガ教室に参加する。
ヨガ教室で汗をかいたあとに彼女に会う。Ablyのコットンシャツは臭わないので安心。
カフェでデート中、コーヒーをこぼしたがAblyのコットンシャツであればコーヒーを弾いてシミになることもない。
週末の旅行、Ablyのコットンシャツなら7日間着まわすことができるので着替えのシャツは必要なし。
一連のストーリーの後、具体的な技術的機能の説明にはいる。耐水性でシミがつきにくいこと。
ヨガ教室の後、シャツでべっとりと汗をかいた人との比較。Ablyのコットンシャツなら汗をかいてもすぐ乾く。
Ablyのコットンシャツなら7日間着まわすことができるので洗濯する手間も少なくできる。
動画の中で、ほかのシャツと比較してAblyのコットンシャツのどこが優れているのか、またコーヒーをこぼしてもシミにならない、汗をかいた後でも臭いを気にせず彼女とデートができる、週末旅行に行くにしてもAblyのコットンシャツは着まわせるので着替えのシャツをもっていかなくてもよい、などの具体的な利用シーンを紹介してベネフィットを提示している。
このようなストーリーのある動画がAblyのクラウドファウンディングでの成功に寄与したことは間違いないだろう。
まとめ
Ablyは“シミのつかないコットンシャツ”という商品の独自性も強みだが、それだけではない。その強みを最大限に伝えることができるストーリのある動画の活用によって5,000万円以上の予約販売を受け付けることに成功したのだ。