セミナーレポート

2018.03.12

新しいショップ体験についてのフォーラム「WWD Retail 20/20 Forum」レポート

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撮影:Saito Masayuki for WWD

 

2018年2月28日、東京・丸の内のパレスホテル東京にて、新しいショップ体験・新しいEC体験について講演やディスカッションを行うフォーラム「WWD Retail 20/20 Forum」が開催された。同フォーラムは、ファッション、小売、ビューティー業界のトレンドを伝える米「Women’s Wear Daily(WWD)」が日本の株式会社ルミネと提携して開催したもの。国内外のアパレルメーカーの経営者やECサイトオーナー等、150名以上のエグゼクティブが一堂に会した。

同フォーラムでは、50年以上にわたる日本のファッションリテール業界に関連して、実店舗とECの双方での先進的なストアエクスペリエンスを展開している業界トップの経営者やデザイナーが、そのノウハウを共有する目的で、講演やディスカッションを行った。プログラムはセッション1からセッション4までの4部に分けられ、それぞれのセッションで数名の登壇者が熱意を込めた発言を繰り広げた。

 

セッション1

セッション1では、世界176ヶ国でラグジュアリーウェアをEC展開している「マッチズファッションドットコム」の最高経営責任者であるウルリック・ジェローム氏が登壇。また、1985年にスタートしたシグネチャブランドをアメリカで展開しているトミー・ヒルフィガー氏が、WWDのエディトリアルディレクターであるジェームス・ファロン氏とディスカッションを行った。

ウルリック・ジェローム氏とトミー・ヒルフィガー氏は、ECに関する取り組みについて、それぞれ以下のように言及した。

 

ウルリック・ジェローム氏の話

 

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撮影:Saito Masayuki for WWD

我々が重視しているのは、フィジカルとデジタルのオムニチャネルをECの重要な要素として取り入れる、ということです。

まず、デジタル面のアプローチとしては、顧客からのフィードバックを常に意識し、それを細かく分析した上で、顧客の購買意欲に効果的に点火できるような独自のコンテンツを作成して、オンラインで公開しています。そして、それを日々更新し続けることを重視しています。常に新しいブランドやデザイナーのプロダクトを、独自のノウハウでキュレートしたコンテンツをオンラインで提供し、盛り込むようにすることで、先進的なブランドを知りたいという顧客のニーズに応えています。さらに、SNSやオウンドメディアなど、世界に向けて発信できる数多くのデジタル技術やプラットフォームを駆使することで、ホットなコンテンツを幅広く提供し、グローバルな集客を図っています。

また、フィジカル面のアプローチとしては、ヨガやアートなど他ジャンルのアクティビティとコラボレートし、ロンドンに構えているマッチズの実店舗やニューヨークなどに準備したイベントスペースなどで、顧客・プレスを巻き込む形で様々なイベントを開催しています。それらのイベントをSNSなどでライブ配信することで、4800万人のグローバルなユーザにリーチできたこともありました。さらに、顧客が実際に購入したものを自分なりにコーディネートしたスタイリングを撮影して投稿してもらうことで、マッチズが展開している商品をグローバルに拡散するインフルエンサーになってもらう、というサービスも展開しています。

さらに、最近では、フィジカルとデジタルを融合したテクノロジーとして、ユーザが思わずSNSなどでシェアしたくなるようなコーディネートやスタイリングが、15分ごとに自動でアップデートされるようなアプリを開発しました。これにより、デジタル技術がユーザのリアルな購買アクションに繋がるように配慮しています。

我々が取り扱っている商品は、ECの専門家が徹底的に顧客のニーズを研究した上で、バイヤー1人1人がそれを理解して買い付けてきた、オリジナルでラグジュアリーなものばかりです。そういった商品を、デジタル技術を駆使して、インスピレーション豊かに世界に向けて発信し続けることこそ、EC分野で我々が最も大切にしていることです。そのために、スタッフ全員の能力を高める施策も行っています。

 

トミー・ヒルフィガー氏の話

 

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撮影:Saito Masayuki for WWD

我々がECに関して積極的に取り組んでいるのは、従来型のファッションショーを再評価する、現代的なアプローチです。具体的には、ファッションショーで発表したルックをその場で注文できるサービスである、「See now, Buy now.」を導入しました。ファッションは動きの早いものなので、発表から納期まで半年ほどの時間差がある従来型のファッションショー形態では、顧客の手に届くまでに、商品の鮮度が落ちている可能性がありました。それを解消するために、ファッションショーをオンラインでライブ配信し、ワンクリックで欲しい商品を購入できるシステムを採用しました。この現代的な手法は、全世界で最大62億のインプレッションにまで達しています。

また、ファッションショーとライブイベントなどをミックスしたイベントを開催し、そこに有名なスポーツ選手やフォロワー数の多いインフルエンサーを招いて、本人やフォロワーにSNS発信をしてもらうなどの施策も講じています。このようにデジタルパートナーと連動する形でオンラインでの購買を増やしているのです。

 

セッション2

セッション2では、100以上のビューティーブランドをセレクトしてEC展開している「メッカブランズ」の共同最高経営責任者および創業者であるジョー・ホーガン氏と、2005年にスタートしたレディースブランド「レベッカミンコフ」の最高経営責任者および共同創業者であるユリ・ミンコフ氏が登壇した。

ユリ・ミンコフ氏は、自社のECに関する取り組みについて以下のように言及した。

 

ユリ・ミンコフ氏の話

 

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撮影:Saito Masayuki for WWD

レベッカミンコフでは、1000万人のフォロワーがいるブロガーやインフルエンサーを集めて、ニューヨークでイベントを開催しました。これは、半年前にランウェイショーをするというような、その場では購入できない催しより、よりリテールに繋がりやすいイベントを模索した上で取り入れた施策です。また、ロサンゼルスでも2500万人のフォロワーにリーチできるインフルエンサーを巻き込んだランウェイショーとポップアップショップのイベントを開催しました。

このように、ネットのインフルエンサーを巻き込む形で、リアルとソーシャルでの繋がりを作り、コーディネイトなどをネット上にシェアしてもらうことで、オンラインストアと実店舗の双方で売り上げを向上させることができました。

さらに、こうした相乗効果をより促進するため、FacebookやInstagramなどの既に確立した環境にプラスして、オンラインでモデルやインフルエンサーが集まるコミュニティを自ら作り出すという試みにも挑戦しています。

 

セッション3

 

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撮影:Saito Masayuki for WWD

セッション3では、WWDのエグゼクティブエディターであるジェニー・B・ファイン氏をチェアパーソンとして、株式会社ルミネ取締役会長である新井良亮氏、株式会社マッシュホールディングス代表取締役社長である近藤広幸氏、株式会社ジュン代表取締役社長である佐々木進氏が日本のファッション小売について意見を述べた。

まず、新井良亮氏は、日本のファッションリテールが多様・多重化している中で、未来に向けた価値の創造のために経営者が積極的に構造改革をすべきことや、そのために経営者が自らの哲学をもって情熱的に挑むべきことを述べた。また、近藤広幸氏は、よりマニアックで先鋭的なものを発見して顧客に提供することを重視し、そのために人材を過度に登用せず、機動的な経営を実現するために「世界一小さい会社」を目指していると述べた。そして、佐々木進氏は、創立60年を迎えた歴史のある自社の状況に鑑み、新たに「VISION FFF(Fashion, Food, Fitness)」をテーマに顧客に新しい発見を提供する取り組みをしており、その取り組みに共感する専門性を高めたクリエイティブな人材を登用すべきだと考えていると述べた。

 

セッション3ではほかに、ホットなオリジナルブランドである「アクセルアリガト」の最高経営責任者および共同創業者であるアルビン・ジョハンソン氏が登壇し、自身のブランドのSNS施策やブランドポリシーについて言及した。

 

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撮影:Saito Masayuki for WWD

また、「リテールネクスト」の最高経営責任者および共同創業者であるアレクセイ・アグラチェフ氏と、「ベータ(b8ta)」の最高経営責任者および共同創業者であるヴェブー・ノービー氏がディスカッションを行い、両社が共同展開する「小売会場自体を提供することで収益を挙げる」という新しいビジネスモデルの紹介と解説を行った。

 

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撮影:Saito Masayuki for WWD

 

セッション4

セッション4では、WWDのスタイルディレクターであるアレックス・バディア氏をチェアパーソンとして、2012年に自身のブランドをスタートしたジョン・エリオット氏が、ブランド運営について意見を述べた。ECとの関連では、ジョン・エリオットのオンラインサイトでの購買を促進するために、Instagramを中心としたフォロワー重視のネット展開をしていることが明かされた。

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撮影:Saito Masayuki for WWD

 

また、マッキンゼー・アンド・カンパニーのエキスパート・アソシエイト・パートナーである山川奈織美氏は、アパレル業界における都市戦略について講演した。その中で、レディースアパレル市場の中心は世界経済の流れを汲んで、東洋中心に移り変わってきており、特に2025年に向けては新興国などの中級都市の重要性が増してきている、といった趣旨のデータが紹介された。

 

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撮影:Saito Masayuki for WWD

 

さらに、パーソナライズされたデザインのレディースバッグを展開するブランド「モンパース」の最高経営責任者および共同創業者であるラナ・ホプキンス氏が登壇し、自身のブランドの斬新なシステムの紹介や、ブランディングにおけるパートナー選択およびコラボレート方法などについて言及した。

 

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撮影:Saito Masayuki for WWD

 

<フォーラム登壇者一覧>

・新井良亮氏 取締役会長 株式会社ルミネ
・アレクセイ・アグラチェフ氏 最高経営責任者および共同創業者 リテールネクスト
・ジョン・エリオット氏 デザイナー ジョン・エリオット
・近藤宏幸氏 代表取締役社長 株式会社マッシュホールディングス
・佐々木進氏 代表取締役社長  株式会社ジュン
・ウルリック・ジェローム氏 最高経営責任者 マッチズファッションドットコム
・アルビン・ジョハンソン氏 最高経営責任者および共同創業者 アクセルアリガト
・ヴィブー・ノービー氏 最高経営責任者および共同創業者 b8ta
・トミー・ヒルフィガー氏 プリンシパルデザイナー トミー・ヒルフィガー
・ジョー・ホーガン氏 創業者 メッカブランズ
・ラナ・ホプキンス氏 創業者および最高経営責任者 モンパース
・ユリ・ミンコフ氏 最高経営責任者および共同創業者 レベッカミンコフ有限責任会社
・山川奈織美氏 エキスパートアソシエイトパートナー マッキンゼー・アンド・カンパニー

 

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