マーケティング

2018.05.18

VR/ARとアパレルECの今 ー Psychic VR LabとchlomaがMコマースサービスを公開

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画像引用元:Psychic VR Lab

VR(Virtual Riality 仮想現実)プラットフォームの製作を手がけるスタートアップ、Psychic VR Labは、ファッションブランドchlomaとともに、仮想空間と現実空間とをオーバラップさせたMコマースサービスを公開した。その内容について概説しながら、VRとアパレルECの現状について考える。

 

Psychic VR Labがchlomaとともに新サービスを公開

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画像引用元:chloma

VRのためのプラットフォームとしてSTYLYを提供している株式会社Psychic VR Lab(代表取締役 山口征浩)は、ファッションレーベルchloma(クロマ)とともに、「chloma × STYLY HMD collection」をMicrosoftストアにて公開した。ヘッドアップディスプレイを用いて洋服の特徴や詳細について詳しく見たり、そのまま購入したりできるというもので、VRと現実空間とをオーバーラップさせるのが特徴であることから、Psychic VR LabではこうしたサービスのことをMコマース(Mixed Reality Commerce)と呼び、普及を目指している。

 

最新技術が可能にする「Mixed Reality コマース」

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画像引用元:マイクロソフト

Mixed Realityとは、米マイクロソフト(CEO Satya Nadella)が提唱する概念で、「複合現実感」などと訳される。同社が提供する開発エンジン「Unity」を活用することで、現実世界をデジタル情報によって拡張したり、仮想的に構築された世界への没入体験を可能にしたりするだけでなく、現実世界にホログラムを融合させることができる。ARとMixed Realityの最大の違いは、現実世界と仮想的な世界とが融合できているかどうか。ARにおいては、デジタルイメージは空中に浮いているにすぎないが、Mixed Realityでは、現実世界の空間や物体を認識した上でデジタルイメージが配置されたり、動いたりするというわけだ。

「chloma × STYLY HMD collection」もこの技術をベースにしている。やはりマイクロソフトが開発したヘッドアップディスプレイ、Hololensを使うことで、商品をあらゆる角度から見ることができる。

このHololensは、単なるヘッドマウントディスプレイではなく、自己完結型ホログラフィックコンピュータとして位置づけられていて、商品の移動や縮尺変更など、自由な操作が可能。また、特定の3Dモデルを何人かで共有することもできるし、視界が完全に覆われていないため、装着したままそばにいる人と通常通りコミュニケーションをとることができるということもあり、さまざまな分野で活用の動きが広がっている。

「chloma × STYLY HMD collection」では、倉庫をリノベートしたような、ブランドコンセプトを体現した前衛的な現実空間に3Dモデルを実寸表示で合成。リアルな空間を構築することに成功していて、実際にショップに足を運んだような感覚に近い。商品の閲覧だけでなく、購入までのプロセスをワンストップで行うことができるのが特徴だ。従来のECにおけるワンクリックショッピングでは伝わりにくいブランドの世界観を楽しみながら、臨場感のあるショッピングを体験できることから、将来的なECのあり方を方向付けていると言えるだろう。

 

ブランドの世界観を軽視する傾向にあるアパレルEC

アパレルECでは、これまでにもブランドの世界観をインターネットを介して発信するさまざまな方法が試されてきた。結果的に、ウェブマガジンなどによるコンテンツマーケティングが特定の価値観を提案することに関して相応の成果をあげ、顧客のライフスタイルに影響を与えるまでになっている。

とはいえ、いまだにECにおいてはアクセス総数やコンバージョンなどの数字が最重要視される傾向が強い。ブランド世界観が与える売上以外のベネフィットを可視化するのは難しく、売上高以外にマーケティングの成功を正当に評価する方法がない。コンテンツマーケティングひとつを取り上げても、ブランドのアウェアネスを高めたり、ロイヤルカスタマーを増やしたりするものとしてよりも、国内ではとくにSEO上の効果やコンバージョンが強調されるきらいがある。ブランドの世界観を伝えるのに効果的な施策であっても、費用対効果を把握・測定しづらいものは切り捨てられてしまうというわけだ。しかし、中長期的に顧客との親密な関係を築いていくには、簡単に数値化できる成果にばかり目を向けているわけにはいかない。

 

最後に

アパレルECにおいてVR/ARの導入は始まったばかりだ。プラットフォームの規格は統一されていないし、VRコンテンツを作ることができる人が少なく、コンテンツが不足している。デバイスが大きすぎて気軽には身につけられないなど、ハードウエアの面でも克服すべき課題も多い。これらの技術がブランドの世界観を伝えるのに有効と判断されるようになれば、数字や効率を優先するアパレルECのあり方にも影響を与えるはずだ。

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