マーケティング

2017.11.27

紙からWEBへ:様変わりするファッション雑誌とアパレルECのこれから

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画像引用元:HOLICS

「dマガジン」の成功と電子雑誌の台頭

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画像引用元:dマガジン

出版界では紙がWEBに取って代わるだろうと言われて久しいが、実は最近まで、電子雑誌は思いのほか売れない時期が続いていた。2014年度の雑誌全体の市場規模が8,520億円であったのに対し、電子雑誌の市場規模はわずか1%程度の145億円。スマートフォンやタブレット型端末の普及も追い風とはならなかった。

そうした状況に一石を投じたのが、2014年にサービスを開始したNTTドコモが提供する「dマガジン」だ。月額400円で200誌にも及ぶ電子雑誌が読み放題になるというサブスクリプション型のサービスで、2016年の3月には契約者数が300万件を突破した。おそらくはこの「dマガジン」の成功により、ファッション雑誌の中には、紙雑誌の販売部数より電子版のユニークユーザー数の方が多いものも出てきているようだ。

大手出版社によるWEBメディアの取り組み

いわゆる「紙をWEBに移植する」動きとは別に、これまで紙媒体でファッション雑誌を展開してきた出版社は、電子雑誌とは別のところでもWEBコンテンツの充実を図っているようだ。例えば、「with」や「ViVi」など人気ファッション誌を抱える講談社では、2017年6月に雑誌コンテンツをデジタル端末向けに再編したコンピレーションメディア「HOLICS」を開設。

小学館も、DeNAと共同出資会社を設立し、かつて人気を博したキュレーションメディア「MERY」の提供を新たな体制のもとで11月21日に開始することをこのほど発表した。講談社同様、コンテンツの質を重視し、メディアとしての価値の向上を目指す試みとして注目を集めている。

小学館では、さらに女性メディア局の体制を刷新。「CanCam」や「Oggi」など各媒体の紙とWEBの編集部を統合し、それぞれを「CanCam」ブランド室、「Oggi」ブランド室という具合に独立部署とした。「ブランド室」というネーミングには、これまで蓄積した膨大なコンテンツと高い編集機能などのノウハウを、紙とWEBとをシームレスにつなぐことはもちろん、動画サービスやSNSなど、多様な媒体で「ブランド」展開していこうとする強い意思のあらわれを見て取ることができる。

テイストやスタイルの垣根を超えた新しいメディアの可能性

紙雑誌では、取り扱うファッションブランドに呼応する形で明確なターゲット層が想定され、年齢層や収入、テイストなどを考慮した紙面づくりをするのが一般的であった。いわばどの雑誌の読者になるかによって選ぶ服が決まったと言っていいだろう。

ところが最近では、年齢層や収入に関係なく同じブランドや価格帯の服が選ばれるという傾向がみられるようになってきた。例えば、ユニクロのカシミヤセーターの購買層はとても幅広い。使い捨て可能なデイリーユースのための生活用品として使われる場合もあれば、ここぞという時に出番が来る、とっておきデート服として使われる場合もあるだろう。

決済方法が多様化し、ショッピングのスタイルが変化したことで、とりわけ若い世代にとって以前は手を出しにくかったブランドやアイテムが購買対象になった。クレジットカードも事前登録も不要でECで買い物の代金を翌月にまとめて支払うことができるPaidy、商品代金の支払い期限までに2ヶ月の猶予があるZOZOTOWNの「ツケ払い」などがその例だ。また、フリマアプリが普及したことで高級ブランドの洋服が身近になってきている。

こうして特定のブランドやアイテムと年齢や収入との間に必然的な関係が見いだされなくなるにつれ、これまで雑誌が行ってきたような消費者のカテゴライズは、必ずしも適切とは言えなくなってきている面がある。

そうした状況を反映してか、先に挙げた「HOLICS」では、「ViVi」や「with」「VOCE」といった、ターゲットもテイストも異なる雑誌に掲載されたコーデ画像やアイテムが同一記事内で取り扱われる。例えば、「ロング丈コート」「盛り袖トップス」などアイテム主導で組まれる企画や特集の内容は、コンサバやストリートなど、かつて重要とされたテイストやスタイルはもちろん、商品の価格帯にも縛られない。

アメリカを代表するアパレルコンサルタント企業の一つ、ドネガー・グループ(The Doneger Group)が2017年8月に本国の男性350人を対象に行った調査によると、「特定のブランドの商品であることが高い対価を払う理由になるか」という問いに対し、わずか18%が「はい」と答えたという。こうした「ブランド」離れは若い世代ほど顕著で、特定のテイストやスタイルにこだわらずファッションを楽しむミレニアル世代の傾向を反映していると言えるだろう。

おわりに

「HOLICS」が興味深いもう一つの理由は、商品クレジットもなく、特例を除いて、メディアからECへのリンクが貼られていないという点だ。アパレル通販というとかつてはカタログ販売が一般的だった。これまでのアパレルECでは、そうしたカタログ販売を電子的に最適化することが目指されてきたように思う。紙がWEBに取って代わろうとする過程において、出版メディアはブランドと消費者との間の媒介者としての役割を大きく様変わりさせようとしている。従来のような広告メディアとは異なる、メディアそのものの「ブランド力」を重視した今後の動きからは目が離せない。

他方で、アパレルECがメディア化する動きも顕著だ。今後、出版メディアとのクロスオーバーが進んでいくのか、それとも新たな展開が生まれるのか。アパレルECもまた、転換期を迎えているのかもしれない。

 

dマガジン

https://magazine.dmkt-sp.jp/

HOLICS

https://holics.jp

The Doneger Group

https://www.doneger.com/public/Homepage.html?ver=1510745183068

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