マーケティング

2018.03.05

ファストファッションの時代に誕生した新たなアパレル業界の潮流

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ファストファッションが全盛を極める中、時代の逆を行く服作りが注目を集めている。素材や製造過程を見直そうとするブランドをいくつが取り上げながら、新たなアパレル業界の流れに注目する。

素材や製造過程を見直そうとするアパレル業界の新たな動き

ユニクロを運営するファーストリテイリング(代表取締役会長兼社長:柳井正)が2017年10月12日に発表したところによると、2017年の8月の売上高は前年に比べて4.2%増え、1兆8,619億円。営業利益も1,764億円と38.6%増、純利益は1,192億円で2.5倍となった。いずれも過去最高を記録しているという。

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引用元:10YC

 

世界的にファストファッションが売上を伸ばし続けているなか、アパレル業界では素材や製造過程を見直そうとする新たな動きも出てきているようだ。例えば、2017年12月には、「10年着続けられる服」をキーワードとする新たなブランド「テンワイシー(10YC)」がデビューした。サステナビリティやストーリー性などを重んじ、商品の原価率(50%近い)を公開しているほか、素材はもちろん製造過程にもこだわった商品作りが話題を呼んでいる。

原価率といえば、セレクトショップ「STUDIOUS」を手がけるTOKYO BASE(代表取締役 CEO:谷正人)も、2017年6月にプライベートブランドとして「UNITED TOKYO」を発表。原価率を50%以上としていて、縫製も世界的なトップブランドに素材提供する工場で行うなど、素材・生産過程にこだわった製造背景を大きなセールスポイントとしている。

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引用元:necessary and sufficient

 

大手アパレルECサイトもこうした潮流に敏感だ。MAGASEEK(代表取締役:井上直也)は、2017年12月、プライベートブランド「necessary and sufficient」を発表。「Less Is More」をコンセプトとし、速乾性やUVカット、抗菌防臭に優れた新素材を採用したベーシックなデザインのカジュアルアイテムを展開している。「necessary and sufficient」の公式サイトではごく簡単ではあるものの、製造原価について表示している。テンワイシーやUNITED TOKYOと同じく、透明性をアピールしようという試みだ。

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引用元:EVERLANE

 

原価率を公開すること自体は、米EVERLANE(CEO:Michael Preysman)によってすでにアパレル業界ではおなじみの手法。材料原価や輸送、縫製にかかる料金などを自社サイトで公開することで、中間コストを極力減らしていること、高い技術のもとで生産された質の高い商品であることをアピールできるのがメリットだ。

アパレル業界の沈滞が続き、業界全体で製造原価率が大幅に下げられる傾向があると言われるなか、消費者がアパレル商品の価格設定に不信感を持っていることも事実だ。ブランド単位で原価率を公開しようとする動きが顕著になってきたのは自然な流れと言えるかもしれない。

素材と製造過程へのこだわりだけでは不十分

実際のところ、ファストファッションは必ずしも原価率が低いわけではないが、生産過程の透明性はフェアなトレードを連想させ、安価な商品を大量に生産するビジネスモデルを否定するものでもある。原価率を公開することは、ファストファッションとの違いを主張する格好の材料となっているとも言えるだろう。

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引用元:気仙沼ニッティング

 

そうしたファストファッションの流行に逆らうアパレル業界の動きとして最も顕著なものの一つが、「1着15万円のオーダーメイド・セーター」ではないだろうか。ほぼ日(代表取締役 社長:糸井重里)が2012年にプロジェクトとして立ち上げたのち、気仙沼ニッティング(代表取締役:御手洗瑞子)が独立して手がけているもので、最高品質の毛糸の製作、人気編み物作家によるデザイン、そして高い技術を持った編み手による15万円のオーダーメイドのカーディガンが完売したというニュースは衝撃的だった。

素材と着心地を重視するアパレル商品をECで取り扱うことの課題

とはいえ、素材や製造過程もさることながら、気仙沼ニッティングの成功は、TEDxTokyoでのスピーチや、徹底したストーリー性など、ほぼ日ならではの周到なマーケティングがあってのものであることを忘れてはならない。質の高い商品を求める消費者は実際に増えているのかもしれないが、素材の良さや製造過程へのこだわりだけでブランドが戦えないことは明らかだ。

テンワイシーにしても、UNITED TOKYOにしても、素材や着心地の良さを謳っておきながら、試着なしにECで商品を売ってしまうことにもやはり矛盾を感じずにはいられない。UIや返品・試着サービスを含む現在のアパレルECのシステムでは、素材や生地感、着心地を重視するアイテムよりも、失敗のリスクを気にせず気軽に購入できるファストファッションの販売により適していると言わざるを得ない。「長く着られる本当に良いモノ」が登場し、短いトレンドサイクルの中で大量生産される時代が幕を降ろすには、現状とは異なるECのあり方やビジネスモデルが必要になるだろう。

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