セミナーレポート

2017.04.17

Fashion Tech Night “Conference” ファッションテック最新トレンド 〜ファッションはテクノロジーでどこまで進化するか? ファッションテックの今と未来〜

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日時:2017/03/28(火) 19:00 〜 23:00(18:30受付開始)
会場:Tokyo FASHION-technology LAB 校舎
住所:東京都渋谷区神宮前3-27-20
主催:FASHION EC Lab/CREDENCE

2017年3月28日、ファッション×テクノロジー業界の現状と未来について考える「Fashion Tech Night “Conference”」が、東京原宿にある日本初のファッションテックの学校「Tokyo Fashion-technology Lab.」において開催された。これまでに2度にわたって開催されてきた「Fashion Tech Night」に、あえて“Conference”が付されていることからも想像できる通り、今回は、よりファッション×テックの「未来」に議論の的を絞った内容。

登壇者はバラエティに富んだスピーカー勢。NUMEROなどの雑誌メディアを中心にディレクターとして主に活躍する株式会社gumi-gumi代表の軍地 彩弓(ぐんじ さゆみ)氏、ベンチャー企業のマーケティング支援などを展開するスパノバ株式会社代表取締役の栗島 祐介(くりしま ゆうすけ)氏のほか、USAGI ONLINE代表の塩澤氏、株式会社ブティックスターの代表取締役である高田氏、日本初のファッションテックの学校「Tokyo Fashion-technology Lab.」代表の市川氏によって、ファッション×テクノロジーで挑戦する企業の戦略やECの流行、そして教育や海外事例など、盛りだくさんのコンテンツでトークイベントが展開された。

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1.『ファッション業界の今後とFashionTechの展望』
株式会社gumi-gumi 軍地 彩弓 氏
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最初の登壇者となった軍地氏は、アパレル業界が抱える課題として「売上の低迷」「店舗過剰」「若手の人材不足」に言及。アパレル業界全体の売り上げが大幅に減少している以上、従来の多店舗型の供給システムではオーバーストアの状態に陥るのは当然の流れだ。軍地氏が指摘する、買い控え傾向が強まり、安価な輸入品へと消費者の関心が向かい、国内のモノづくり環境が崩壊寸前であることの背景には、店舗に出かけて衣料品を購入するというライフスタイルそのものが大きく変容してきていることがあると見るべきだろう。

そうした、いわば生産から販売に至るシステムの問題とは別に、アパレル業界が抱える課題として、若手の人材、とりわけデザイナーが育つ環境の欠如について指摘された点が実に興味深い。アパレルブランド運営の一環として、デザイナーやプロダクトマネージャーといった従来からの主要職種はもちろん、このところブランドにおいてますます重要な存在となりつつある、VMD(ヴィジュアル・マーチャンダイザー)などの専門職に携わる人材を含め、業界全体が支援していく必要があるだろう。

つまり、“厳冬期”を迎えたアパレル業界にとって喫緊の課題は、緊縮政策をとって保守的な生産体制を維持する、いわば“備蓄”ではない。VR技術を利用したマーケティングや3Dプリンタなど、新たな技術の担い手となる若き人材を育成し、ファッション×テクノロジーの未来の種の芽吹きを促すことを示唆するプレゼンテーションだったと言える。

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2.『~国内外の「Fashion×Tech」スタートアップ~ 今後の展開とEコマースの新しいビジネスについて』
スパノバ株式会社 栗島 祐介 氏
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栗島氏は、スタートアップを支援する立場から、未来のトレンドをつくるファッション×テクノロジーのポイントとして「パーソナライズ(Personalize)」「サブスクライブ(Subscribe)」「エクスペリエンス( Experience)」という3つのキーワードを指摘。アパレル業界の動向として、BtoC、BtoBのいずれのビジネス形態においても、より細やかなニーズに対応できる、カスタマイズ可能なサービスへの指向性が高まっていると言う。一見、退行的にも見えかねない流れだが、現実はそうではない。例えばかつてのカスタムオーダーのような生産システムと比べて、格段にプロセスが効率化されており、大きなビジネスに発展する可能性を秘めている分野なのだ。

また、ファッションレンタルサービスに代表されるサブスクリプションサービスもまた大きな潮流を形成している。“所有”から“共有”へと向かう、そうした消費者のファッションに関する意識転換への適応は、既存のアパレルECにとって急務と言えそうだ。軽やかで小回りのきくサービスを求める消費者に対して、将来的に“衣料品を販売する”という行為がどこまで柔軟な形を持ち得るのか、興味は尽きない。様々なビジネスチャンスがある領域と言えるだろう。

もう一つ、「エクスペリエンス」というキーワードによって栗島氏が重視するのは“ショッピング体験”だ。例えば、チャットコマースやオウンドメディアなどを通じた、新たなショッピングのあり方を提供するサービスへの需要が今後増えていくことが予想される。リアル店舗・ECのいずれにしても、商品そのものだけではなく、消費者の“経験”にフォーカスした画期的な施策の実現が待たれる。このあたりの指摘は、先の軍地氏の指摘と微妙にオーバラップしていて非常に興味深い。

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3.『EコマースにおけるVMD開発 ~デジタルIQ最高レベルの「Acne Studios」, 「FENDI」, 「Tory burch」, 「Burberry」, etc..のEC最新事例~』
株式会社ブティックスター 高田 博之氏
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株式会社ブティックスターの代表を務める高田氏は、海外の成功事例を取り上げながら、今後のアパレルEC戦略におけるポイントとして、「ブランドサイトとECの統合」「VMDの重要性」の2点を指摘。

欧米同様、国内のアパレルECサイトもまたブランドサイトとの統合を進めるべき点を指摘。消費者にとっての利便性が向上されて購入ロスが減少するだけでなく、コンテンツを利用したマーケティングのメリットが最大限に活用することができると言う。

アパレル業界に限らず、国内のECでは、先に触れた「ヴィジュアル・マーチャンダイザー」や「UXデザイナー」といった専門的な知識を有するポジションが欠如している。そのため、欧米では盛んに実施されている「視覚を通じて消費者の購買意欲に訴えかけるマーケティング手法」(高田氏)がほとんどとられていないと言う。アパレルECにとって、VMDをふまえた設計が急務であると言う氏の指摘は、業界全体で人材を育成していくべきとする軍地氏の主張と期せずして呼応している。

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4.『国内ECの取り組み紹介:“USAGI ONLINE”のサイト戦略について』
株式会社ウサギオンライン 塩澤 亮氏
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オンラインモールを運営する株式会社ウサギオンラインの代表を務める塩澤氏は、自社の取り組みについて紹介。動画プラットフォームや、メッセンジャーアプリの公式アカウントを利用したオリジナル性の高いサービスが好評を博していると言う。ファッションにとどまらず、ライフスタイル全般を取り扱う充実したコンテンツ・マーケティングで、オンラインストアの利用者数を伸ばし続けているようだ。

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5.『FashionTech×教育:〜ファッション革命〜日本初のファッション&テックの専門スクール“TFL”の紹介』
株式会社TFL 市川 雄司氏
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2017年4月に原宿に開校する「Tokyo Fashion-technology Lab(TFL)」の代表を務める市川氏も登壇した。アパレル業界が転換期を迎えている今こそ、最新テクノロジーを活用できる専門的な知識を備えた人材育成が急務であると指摘する。TFLでは、月に一回程度、定期的にイベントを開催していく予定だと言う。アパレル業界と連動した今後の展開に注目したい。

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6.パネルディスカッション『ファッションはテクノロジーでどこまで進化するか? ファッションテックの今と未来』
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イベントの最後には、参加者を交えたトークセッションが行われた。現場の意見や課題についての活発な議論が交わされ、ファッション×テックへの関心の大きさを窺い知る結果となった。

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